妄想別館 弐号棟


ホン物ニセ物 その3


ちまたでは、悪人と妖怪の交易・交流が広がってきている。
悪人の闇組織と妖怪たちの商売も盛んだ。
そんなご時世、人間の悪人たちと邪悪な妖怪を交えた、記念すべき第一回の大総会が開催される運びとなった。

ここはある廃工場の地下室。
ボロボロで今にも崩れ落ちそうな有様だが、実はここ、悪人総会の会場となっている。
いや実際は違うが、スーパーガールをおびき寄せるために『ここが会場』との情報を流しているのだ。
中では、怪し気な3人が密談をしている。男が2人に女が1人。人間が1人と妖怪が2人。
この連中は選ばれし、総会の幹事当番である。
なんとしても大総会を無事に成功させなければならないのだ。
だがしかし、スーパーガールがやってくる。必ず邪魔をしにやってくる。
「どうせ来るのがわかっているのなら、こちらから迎え撃って倒してしまえ!」
というわけである。今、その策を検討中。

「この前の作戦、結構いい線いってたんだがなぁ」
とボヤいているのは、傀儡鬼くぐつきだ。
呪術人形を使って、彼女たちのニセモノになりすましてと。
「お前さんは、いつもいつも読みが甘いんだよ」
痛烈に言い切っている女は、サイレンと呼ばれている女妖怪。
(サイレン)「夏美がいるんじゃダメだったろうさ」
目の前に妖術のかかったマネキンを置いておけば、何かあると勘ぐられるに決まっている。
(サイレン)「そんなのわかりきったことだろうに」
(傀儡鬼)「そうなんだよな。あいつさえいなければ、美穂や碧は、案外簡単に倒せるかもしれないのにな」
部屋にはもう1人、腕組みをして座っている男がいる。
田中と呼ばれている、爆弾づくりの専門家である。
黙って2人の話を聞いていたが、うんざりしたように、
(田中)「で、どうするんだい。いい作戦を思いついたって?」
(サイレン)「そうそうそうだった。それじゃ計画を説明するとしよう。ちゃんと座れよ」
もったいつけるように言う。
(サイレン)「田中。例の物はどうなっている」
(田中)「とっくの昔に用意できているよ。でもどうするんだ、こんなもの」
部屋の隅に大きな何かが置いてあり、シートが掛けられている。
シートを取り外すと、中から現われたのは!
(傀儡鬼)「ふーん、スーパーガールのマネキンか。でもこれは正真正銘のマネキンだよな」
(田中)「ああ、そうだよ」
ベネチアンマスクやコスチュームは付けているが、先日、傀儡鬼が用意した蝋人形には程遠い。
当然のことながら、魔力のたぐいは、なにもかかっていない。
(田中)「で、この人形をどうするんだよ」
(サイレン)「まあ待ちな、順を追って説明するから。今回は人形作戦で行く」
スーパーガールをマネキンにして、代わりにニセのスーパーガールを作るという。
傀儡鬼はあきれて、
(傀儡鬼)「おいおいおい、さっき言ったばかりだろうよ。あいつら同じ手は食わないだろ」
(サイレン)「まあ普通はそうだろうな。へへへ、マネキンに気をとられてさ。そこを逆手にとった作戦なんだよ」
彼女が奥から何か持ってきた。
(サイレン)「これを使うのさ」
サイレンが持っているのは『板』である。
『A3くらいの大きさのホワイトボード』のようなものであった。
傀儡鬼と田中は、「え?」と、声を上げて目を丸くした。
あきらかに期待が外れた時の顔だ。
(傀儡鬼)「なんだそれは。ホワイトボードじゃないかよ」
(サイレン)「何を言っている。全然違うよ。『交換の板』と言うんだよ」
傀儡鬼が舌打ちをして「やっぱりダメだ」と、つぶやいた。
田中も、手荒くコーヒーカップを持ち上げて、ガブッと飲む。
声には出さぬが、明らかに落胆の態だ。
(サイレン)「なんだよ、あんたたち。最後まで話も聞かないで」
(傀儡鬼)「だってよ」
名前からして、いかにも使えなさそうな感じ。
田中も投げやりなセリフを放つ。
(田中)「聞くも何も、そのホワイトボードから火でも出るのかい?」
サイレンはドラコメソッド商会、つまりツバーンから拝借してきたと言っている。
妖魔界の珍品だという。数百年に一品、出るか出ないかの代物だそうだ。
(傀儡鬼)「フーン、とてもそんな風には見えんがな」
(田中)「やっぱり、信じられないよなぁ」
2人とも、まだ疑っている。サイレンは気を悪くしたようだ。
(サイレン)「ああ、もういいから。計画はこうだよ。悪人総会に乗じて、スーパーガールをおびきだしてだな・・・」

その数日後、碧のところに、怪しい情報が入ってきた。
来たる某月某日土曜日の19時から、大掛かりな悪人たちの総会及び取引があるという。
幹部クラスの参加者が50名を下らないらしい。
「へえ、結構な人数だな」
場所は▢〇地区にある廃工場。
実は、別の情報筋からも同じような内容の情報が来ている。
単なるガセネタではないようだが・・・いかに?
彼女は少し思案すると、美穂と夏美に連絡を取った。
そしてスーパーガールになり、警視庁の担当部署に赴いて事情を説明してきた。
一網打尽が理想だが、そうはいくまい。
実際のところ、手下はどうでもよい。
とにかくかしら級を一人でも多く捕まえることが重要である。
警官隊が先に突入すると、やつらは蜘蛛の子を散らすように逃げてしまうだろう。
だから最初に彼女たちが、首領級の逃げ道を塞いで、そのすぐ後に警官隊が突入する手はずになった。




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