ホン物ニセ物 その4
総会開始時刻の少し前。
広大な草ぼうぼうの土地に、廃工場がポツンと取り残されたように建っている。
空き地なんか、すぐにマンションやらビルやらの建築物で埋まってしまうであろうに。
それを、わざわざこんな様で放置しているということは、何をか言わんやである。
3人は草むらの中から、古ぼけてツタが生い茂っている工場をじっと見ている。
(G)「怪しいね。いかにもって感じだね」
(B)「あ、ちょっと。いるよぉ、いるいる」
あちらこちらに見張りが隠れるている。
時々、場違いな自動車が停まっては、身なりのいい者が工場の中に入っていく。
エラく、ちぐはぐな光景だ。
身なりのいい紳士淑女が、立入禁止の廃工場に入っていくわけがない。
イエローとブルーはわからなかったが、あきらかに妖気を放っている者もいる。
総会かどうかはわからないが、なにかあるのは事実らしい。
(Y)「ねぇ、やっぱり情報は本物じゃない」
(G)「そのようだね」
(B)「どうする。やっちゃうか」
小細工しても仕方がない。総会開始の頃合いを見計らって真正面から突入だ。
「うん」「そうしよう」と、イエローとグリーンがうなずく。
今回は警察との打ち合わせも万全だ。
警察側も遠巻きに散らばるように待機している。
彼女たちの連絡があり次第、いつでも突撃OKだ。
そして『頃合いは良し』と見たブルーは、スマホをとると、
(B)「こちら湯村です。今から私たちが強襲します。あなたたちは10分後に突入して。
え、そう、10分後ヨ。それじゃよろしく」
後方との連絡も済んだ。警官隊はきっちり時間通りに踏み込んでくるだろう。
グリーンが「そぉれ!」と合図をすると、草がざわつきだした。
(手下)「お、なんだ。うわぁ!」
見張りの男たちに伸びだした草が絡みついている。
(Y)「お先に行くよ!」
まず、イエローが建物の中にスッと消えた。
続いてブルーとグリーンが草から飛び出し走り出した。
今回は雑魚には用がない。
(B)「邪魔よ。どいて」
手下を突き飛ばして建物に向かって行く。
入口に立っていた見張りや、中からワラワラと出てきた男たちが向かってくる。
入口のところで、まず乱闘が始まった。
その隙にイエローは建物の奥まで入ったが、通路が壁でふさがれている。
(Y)「あれれ?」
隠し扉だ。手間取っていると手下2人が飛びついてきた。
「先には通さん」「死ねぇ」
(Y)「ああ、
鬱陶しいな」
イエローは、2人を手刀で倒した。簡単に倒した。一瞬で倒した。
(Y)「何だよ。口ほどにもないね」
すぐにブルーたちが追いついて来る。
(G)「なによ、行き止まり?」
(Y)「そうなんだよ。ブルーお願い」
(B)「任せて。あいよっと!」
彼女が構えると指先から水が噴き出し、やがてバキバキと扉がへこみだした。
(B)「これぐらいで十分でしょ」
ブルーは足でけ破る。
その間にも手下たちが次から次へとかかってくるが、イエローとグリーンは、光の
礫や草の塊で難なく打ち倒していく。
(Y)「グリーン、妖気とか感じない?」
グリーンは全神経を集中させて、様子をさぐってみる。
(G)「別に大丈夫そうだよ。今のところはね」
妖気の
類は一切ないと彼女は言う。
ついに地下階の行き止まりまで来た。
扉を押し開けて中に入ると、プラネタリウムのようなスペースになっている。
窓すらない、
頗る殺風景な室内である。
しかし中央に誰か3人ほどが立って、こちらを見ている。
「誰かいる。あ!」
ベネチアンマスクをしてコスチュームをつけた、スーパーガールが・・・
呆気にとられたが、攻撃してくる気配はない。
3人はうなずくと、すぐに応戦できる態勢をとりつつ、用心深くゆっくり近づいて行った。
(Y)「あれぇ、これって・・・」
マネキンであった。
(B)「マ、マネキンが置いてあるの! なんでぇ?」
ブルーは拍子抜けしてしまった。立ち止まって考え込んでいる。
非常に罠臭くはあるのだが、グリーンはつかつかと、
躊躇なく近寄っていく。
(G)「平気だよ。これは間違いなく本物のマネキンだね」
グリーンは下から仰ぎ見るようにしている。
触ってみたが、普通にマネキンの感触だ。
イエローが思い切って、ベネチアンマスクを外してみた。
マスクは簡単に外れた。
(Y)「何だこのマスク。オモチャじゃないの」
(G)「マネキンの顔も美穂じゃないね」
下の顔は全然似てない。
ブルーもグリーンもマスクを外してみるが、3つとも全部同じ顔である。
デパートに並んでいるのと同じような大量生産品のマネキンのようだ。
(Y)「この間みたいにさ・・・」
呪文を唱えると人形が本物そっくりになって動き出すとか?
(G)「いやそれはなさそうだよ」
グリーンがいろいろと撫ぜ回し調べてみるが、
(G)「何の術もかかってないね。どうみてもただのマネキンだよ」
怪しい気配は微塵もない。
3人は首をかしげて考え込んでしまった。
こんなところにマネキンを置いておくとは、どういう了見か?
何か意味があるのだろうか?
でもゆっくりとしてはいられない。
新手の手下たちが扉を押し開けて飛び込んできた。再び打ち合いが始まった。
碧は3人を相手に、夏美は2人を相手に、
ナイフを振り回す者、拳銃を撃ってくるもの、先ほどよりも必死なのがわかる。
でも残念ながら・・・襲い掛かってはくるが、その度に、うまくあしらわれていく。
グリーンの回し蹴りが決まる。
ブルーのストレートパンチが決まる。
そしてイエローのハイキックが決まる。
舞でも舞うかのようにヒラリヒラリと、流れるように優雅に。
手下たちはなすすべもなくやっつけられていく。
(Y)「もう終わりかな」
まるで練習台のようであった。
勝負にならずに、
頭らしい男が、
「おい、一旦引くぞ!」
男たちは何とか起き上ると、痛めた体をかばいつつ、這う這うの体で逃げていく。
(B)「あ、待て」
扉に向かって突進していく男たちを追いかけようとしたら、後ろから高いトーンの声がかかる。
(サイレン)「ちょっとどこに行く! あんたたちの最終的な相手はあたしだよん」
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