妄想別館 弐号棟


ホン物ニセ物 その5


後ろの方に、いつの間にかスラリとした女が立っている。
(G)「あ!なあに、あんたは?」
異様な妖気を放っていて、気をしっかり持ってないと吸い込まれてしまいそうだ。
「ん?」
手に何か持っている。しかし別段、妖気を放っているわけではない。
「大したものではないな」と、グリーンは思ってしまった。
もちろんイエローとブルーも「なんだ、あのホワイトボードは」と思ったくらいで、気にも留めなかった。
(サイレン)「初めましてスーパーガール。私はサイレンと言います」
彼女たち、この女を黒幕の1人と見た。
(B)「悪人たちの総会があるんでしょ。どうなったの?」
(サイレン)「残念ながら、総会はお流れよ。全員裏口から逃げてもらったわ」
(G)「何ですってぇ!」
(サイレン)「ホホホ、ウソヨ。ウソウソ。総会は、あなたたちを倒した後、こことは別の場所で執(と)り行うの。
その方が安心して議事が進められるでしょ」
彼女の目がキラリんと光る。
(Y)「何を言ってんのよ!そこに案内しなさい」
(サイレン)「ホホホ、イヤに決まっているでしょ」
総会の話はどうやら本当のようだ。でもやっぱり罠でもあったようだ。  
腕を組んで考えていたグリーンが叫ぶ。
(G)「でもさあ、なんでそんな大掛かりなマネをするのかなあ」
総会の会場に、わざわざスーパーガールを呼び寄せるなんて。
さらにあとから警察も続々と押し寄せてくることになっている。
そんな危なっかしいことをしても、デメリットしかないのではないかな。

「それはだなあ、お前たちをこの場所で倒して、総会に華を添えるためだよ」
葉巻をくゆらせながら傀儡気が現われた。
(B)「あ、傀儡鬼」
(傀儡鬼)「久しぶりだな、スーパーガール」
(Y)「フッ、また、マネキンに術をかけて、あたしたちのニセモノを作ろうっていうの?」
(傀儡鬼)「いやいや、一度失敗した手は使わないし、そもそも通じないだろう」
(G)「よくわかっているね」
(B)「それとも、あたしたちから無理やりマスクをはぎ取ってみる?」
(サイレン)「まさかあ。そんな乱暴なことしないわ」
理の当然のことながら・・・
ニセマネキンを本物にするためには、まずベネチアンマスクを手に入れなければならない。
でもそれは無理だ。目の前の彼女たちが、すでに装着しているのだから。
マスクさえ渡さなければ、マネキンはスーパーガールにはなれない。
その点はまちがいなく大丈夫だ。
加えて、ここにあるのは妖術のかかっていない普通のマネキンである。
妖術もかかっていない物が人間になるわけがない。
それにしても、スーパーガール3人を目の前にして、ずいぶんと余裕のある言動を続けている。
クスクス笑いながら、時折オーバーなゼスチャーを交えて話をしたり、葉巻をくゆらせたりと。
(傀儡鬼)「まあ聞けや。今回は、もう少し工夫をしようと思ってな」
(B)「いったい何を企んでいるのよ?」
(傀儡鬼)「そう急かすなよ。もうちょっとしたら、わかるって」
彼はそう言うが、時間もスーパーガールたちに味方するだろう。
あと数分もすれば、警官隊が突入してくる。

状況は彼女たちに有利のはず。
それまでに首領級は捕まえておきたいところだ。せめてこの2人はぜひとも。
(B)「逃げられないわよ」
(サイレン)「そうかしら」
3人は遠巻きに、サイレンと傀儡鬼を取り囲むようにした。
フフフと、女は楽しそうに何かの呪文を唱えだした。
再び、グリーンは後ろのマネキンを警戒する。
イエローも気になるようで、後を振り返っている。
(Y)「グリーン、あのマネキンって大丈夫?何か変化はない?」
(G)「いやさっきと同じ。何の気配も感じないよ」
ここに至っても、イエローブルーはもちろん、グリーンでさえもマネキンの置いてある意味がわからない。
(G)「わからないな。どうしようっていうのかな」
本当にただの飾り物なのだろうか。このマネキンたちは・・・
イエローとグリーンの会話を聞いていたサイレンがニヤリとして、
(サイレン)「心配しなくても、あれは正真正銘、本物のマネキンよ」
(Y)「何を企んでいるのよ」   
(サイレン)「さあ、どうでしょうねぇ」
しかし「ん?」突然、変な気配に気がついた。
グリーンが「あっ、あれに気をつけて!」と、叫んだ。
(Y)「え?どうした」
(G)「女が手に持っている物。どうも変だよ」
今まで何も感じなかった板から、いきなり妖気が噴き出し始めた、
グリーンはもう一度叫ぶ。
(G)「あの女が持っている物、危険!」
阿吽(あうん)の呼吸で、グリーンが言い終わるよりも早く、イエローのビーム鞭(ウイップ)が、ホワイトボードに向かってうなった。
(傀儡鬼)「おっと!」
もとより悪人2人にも油断はない。
ムチが彼らに命中するより一瞬早くフッと消えてしまった。
ビームウイップは空を切った。空振りだ。
(Y)「あっ、どこに行った」
(サイレン)「こっちこっち」
声の方を振り返ると、イエローたちを飛び越して、マネキンの前に立っている。
サイレンは板を前に突き出した。彼女たちに見せつけるようにする。
(G)「なにやってんだろ。いったい何のつもりだ?」
(B)「グリーン、あれ何なの。ホワイトボードのようだけど?」
(G)「わからないな。あたしにも」
(Y)「とにかく気をつけて。なにか仕掛けてくるよ」
サイレンのおかしな行動に、攻撃を躊躇(ちゅうちょ)している3人であった。
(サイレン)「そう、ホワイトボードよ。ここになんて書いてあるかわかるかなぁ?」
サイレンはからかうようにケラケラ笑いだす。
確かに何か書いてある。
そして3人は、それを読もうとしたが・・・できなかった。
『ヒョォォォー』と、うす気味の悪い風が吹き抜けていった・・・ように感じた。
でもそれだけ。会話が途切れて部屋の中は静かになった。
そしてなんと、今の今までサイレンと傀儡鬼に向かい合って話していた3人はマネキンになっていた。
同時に彼らの後ろに立っていたマネキンがノソノソと動き出している。
スーパーガールになったマネキンたちは、手や体をさすりながら「やっと自由になった」と言っている。
人間がマネキンになり、マネキンが人間になった?!
サイレンはニセブルーをあごでしゃくって、
(サイレン)「予定が少し狂った。警官たちの突入を10分遅らせろ」
ニセブルーはうなずいた。スマホを手にとると、
(B)「あ、湯村です。今、地下階にいるけど、少々トラブルがあって、突入を10分遅らせて、いい10分後ヨ。
え、大丈夫心配しないで。それじゃお願いね」




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