ホン物ニセ物 その6
ホワイトボードには、次のように書かれていた。
本物のスーパーガールイエロー、ブルー、グリーン を それぞれ完全なマネキン人形 に 交換
置いてあるマネキン人形 を 本物のイエロー、ブルー、グリーンとまったく同一 に 変換
この交換の板、正式な名称は『呪術の交換ボード』という。
物と物を入れ替えてしまう恐ろしい呪術具であったのだ。
どんなものでもだ。
呪術によって、本物のスーパーガールと本物のマネキンを『交換』したのだ。
サイレンと戦っていた、スーパーガールたちはマネキンになってしまい、
後方に置いてあったマネキンはスーパーガールになった、というわけ。
交換、まちがいなく交換だ。
今回は、マネキン人形ではなくて、呪術板の方に妖力があったわけである。
本物だった3人は、傀儡気たちに啖呵を切っていた格好のまま人形にされてしまった。
非常にあっけなく!
マネキンが立っている。スーパーガールのマネキンが!
呪術にかかった彼女たちは、もはやスーパーガールの恰好をした単なるマネキンだ。
ブルーを真ん中に、右にグリーン、左にイエロー。
彼女たちは何が起こったのか、まったくわからないうちに交換されてしまったのだろう。
イエローは腰に手を当てた姿で、サイレンたちを警戒して睨みつけるような顔で。
ブルーは技を出そうと構えているが、何か思案していたような顔つきだ。
グリーンは足を開いて気取ったポーズをとり、少しにこやかで余裕のある顔である。
(傀儡鬼)「ああん・・・本当かな・・・?」
彼は一応用心深く近づいていく。
彼女たちの前まで来ると、3人、いや3体を順番にジロジロと見ている。
前から後ろから、右から左から、立ったりしゃがんだり、近づいて覗き込んだりと。
(傀儡鬼)「はあぁ、こいつはおどろいたな」
今まで散々手こずってきたのに、こんなに簡単に人形になってしまうとは。
妖気の気配はまったく感じられない。
彼女たちは完全に『普通』のありふれたマネキンになってしまった。
傀儡期の作った蝋人形だって、極々わずかな気配があって、それを夏美に感づかれたのだ。
それが、このマネキンときたら・・・
彼は、まだ半信半疑だが、現実は現実である。信じないわけにはいかないだろう
(傀儡鬼)「これなら『こいつらは昔からマネキンだった』って言っても、通じそうだな」
ブルーマネキンを覗き込みながら、
(傀儡鬼)「今までよくも邪魔をしてくれたもんだな。でもこうなってしまっては・・・」
傀儡鬼は吸っていた葉巻を、ブルーマネキンの頬に押し当てる。
葉巻はシュッという音を立てて消えた。
焼けた跡が少しついたがそれだけだ。
横に集まってきた部下たちが、物欲しそうな顔をしている。
(傀儡鬼)「ん?なんだよ」
(手下)「こいつらは完全なマネキンになったんですかい?」
(傀儡鬼)「そうらしいな。そっくり交換らしいからな」
(手下)「それじゃあ、まったく抵抗できないわけですね」
(傀儡鬼)「それはそうだろ。動けないんだから」
(手下)「あの、そのぉ・・・」
(傀儡鬼)「なんだよ?」
(手下)「仕返しがしたいんですが」
(傀儡鬼)「あん、仕返し?」
(手下)「本物がマネキンになったんなら、あれもついているはずですよね。どうなっているか見てみたいんですが」
傀儡期は手下の言いたいことが分かったようで笑いだした。
(傀儡鬼)「おお、そうか。そういうことか。好きにしていいぞ。でも時間がないから急げよ」
イエローに殴られていた部下は大喜びである。
(手下)「へへへ、お前さんの大事な所を見せてもらうぜ」
しゃがみこんで、イエローのボトムの前をなぜている。
(手下)「簡単に見られるのかな?」
ジッパーを下ろし、ベルトのバックルを外すと、ボトムは勝手にズリ落ちた。
彼女の下腹部、一番大事な所が丸見えになった。
「オオーッ」と、歓声が上る。
テカテカの光沢になってはいるが、モッコリした土手に太めの一本線が入っていた。
されるがまま、形の良い尻を触られ、線をなぞられていたが・・・
(手下)「こっちの2人も見てみようぜ」
ブルーとグリーンももちろん餌食である。
笑って見ていた傀儡鬼が、ハッと気がついて声を上げた。
(傀儡鬼)「そうだ、ベネチアンマスクはどうなっている!」
このマスクは強力な力を持っている。
今までどんな妖術でも、このマスクだけは操作したり変化させたりすることができなかった。
サイレンが流し目で笑いながら「自分の目で確認してごらん」と、言ってくる。
相当自信があるのだろう。
(傀儡鬼)「あ、ああ、そうだな。そうする」
板をバカにしていた手前、傀儡鬼はしずしずとイエローに近づいて、マスクを外してみる。
簡単に外れた。
マネキンの顔は美穂そっくりであった。
(傀儡鬼)「本人がマネキンになったんだものな」
彼にとっては、それはもうどうでもよい。マスクが本物か偽物かどうかが大事。
マスクを手に取って、こすったりすかしたりしてみるが・・・
(傀儡鬼)「おおこれは! いや本当に・・・」
本物の彼女、いや、今はマネキンになってしまった青柳美穂がつけているのは、
(傀儡鬼)「プラスチック製になっているじゃないか!?」
そう、本物のベネチアンマスクは完全にオモチャになってしまった。
見ていたサイレンは、人間になったマネキンたち、イエロー、ブルー、グリーンを呼んで、
(サイレン)「そら、変身を解除してごらん。本物のマスクなら簡単にできるだろう」
促された彼女たちが「変身解除」と唱えると、たちまち、美穂、碧、夏美に戻った。
(傀儡鬼)「おい、そっちのマスクも見せてくれ」
彼はベンチアンマスクを手に取り、じっくりと見てみるが、こっちはまちがいなく本物だ。いや、本物になっている。
傀儡鬼は躍り上がって大喜びだ。
(傀儡鬼)「いや本物だ、本物だあ。いやいや信じられん! でもやっぱり本物だよな」
(サイレン)「当たり前の話だろ。強力な妖力なんだからさ」
交換の板の妖力の方がベネチアンマスクの能力よりも強かったということだろう。
ブルーとグリーンのマスクも確認していたサイレンが、満足そうに、
(サイレン)「あとは、このマネキンを片付けてしまえば完璧さ」
傀儡鬼は笑いが止まらない。
今までさんざん手こずったグリーンに近づき、
(傀儡鬼)「どうやら、今回は俺たちの勝ちのようだな。ほらどうした夏美。何とか言ってみな。ハハハ」
グリーンの胸をドンとつくと、マネキンは仰向けにガシャと倒れた。
(サイレン)「さすがのお前も、マネキンになっちまえば何もできないか」
倒されたマネキンは、グラグラと揺れている。
サイレンはその様子を見て「ヤレヤレ」と苦笑い。
イエローとブルーのマネキンの目の前で、本物のマスクをプラプラさせながら、
(サイレン)「本物のマスクと新生スーパーガールたちは、今後、あたしたちが有効に使ってあげるからね。
あんたたちは、もう用は済んだの。ここで消えてもらうよ」
マネキンにされベネチアンマスクまで取られてしまった3人、もはや何もできずにされるがままだ。
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