ホン物ニセ物 その7
その時である!
扉が『バターン』と、開いて、大勢がゾロゾロと入ってきた。
「何事だ!」
サイレンたちは一瞬身構えたが、
「なんだぁ・・・」
悪人総会の出席者たちであった。
控室のモニターを見ていて、ここの状況を知ったのだろう。
(サイレン)「ちょっと、会場はここじゃないよ」
「わかってるって。スーパーガールたちを倒したんだろ。ちょっと挨拶だよ」
すごく殺気立っているのがわかる。でも心なしか嬉しそうである。
マネキンになったスーパーガールたちにズカズカと近寄って取り囲む。
あざけり笑う者、小突く者、
罵っている者、いろいろと思うところがあるのだろう。
誰も彼もが、彼女たちに恨みつらみがある。
田中も部下数人とともに入ってきた。
(田中)「おい、そろそろ爆弾をセットするぞ。なんだ、なにやってるんだよ」
(傀儡鬼)「ああ、それがな・・・」
怪人たちは、蹴ったり、殴ったりと、どんどんエスカレートしていく。
サイレンは焦り気味である。あまり悠長にしてはいられないのだ。
手下どもが手伝って大声で叫ぶ!
(部下たち)「さあ、皆さんは秘密通路を通って特別棟に行ってください!
総会をすぐに開催します。
スーパーガールの公開処刑はそこで見られますから!」
手下たちの声はドーム内の怒声にかき消されてしまった。
ところで前に述べた通り、総会の会場は最初からここではなかった。別棟の大講堂が用意されていたのだ。
この廃工場はスーパーガールたちをおびき寄せて処刑場として使用するためのものであった。
彼女たちをバラバラにして、それを警察が片付ける様の映像中継を、総会中に流そうという魂胆だったのだ。
特別工事を施した防爆ルームをわざわざ作ったのもそのためである。
面倒くさい、なんと手の込んだ余興なのであろう。
でもしかし・・・
『記念すべき第一回の大総会を、そうやって盛り上げる計画だった』
と、後にサイレンは述懐している。
そして彼女の思惑通り、いやそれ以上になった。
悪人たちのボルテージはどんどん上がっていく。
ドームの中は今や異常な興奮に包まれて、最高に盛り上がっているのである。
(サイレン)「この部屋は、スーパーガールともども爆破するんだ。さあ早く隣の会場へ移動してくれよ」
『爆破』と、いう言葉を聞くと「オー」と拍手が起きる。
「俺たちを逮捕できなくて残念だったな」
「粉々に砕け散ってしまえ」
悪態をつきながら、ようやくゾロゾロと出て行く中、ハプニングが起きた。
妖怪の1人が、突然喚きだしたのだ。
「絶対に許せん!」
「あん?何事だ?」
室内は静まり、全員がその声の方を注視する。
狼男のような妖怪が牙をむきだしながら、グリーンのマネキンを指さして、
「俺の相棒はこいつに殺されたんだぞ!」
そこにいる誰もが、すぐに状況を理解した。
積もり積もった恨みが爆発したのであろうということを。
サイレンたちも、彼の気持ちはわかる。しかし・・・時間がないんだよな。
(狼男)「どうせ、こいつらは爆弾で吹き飛ばすんだよな」
(傀儡鬼)「あ、ああ、そうだけど・・・」
(狼男)「だったらいいよな」
アッと言う間もなく、爪の生えた拳で『グワッ』と!
グリーンの首を切り落とし、蹴り飛ばしてしまった。
首は向こうの方まで飛んでいって、壁にぶつかって転がっている。
おもちゃのマスクは簡単にはずれ、首は所存無げに壁の方を見ている。
サイレン、傀儡鬼、田中と、3人は呆気にとられて見ていたが、
(サイレン)「ちょっと、勝手な事しないでちょうだい」
(狼男)「なんだよ!」
(傀儡鬼)「困るんだよ。余計な事されちゃ」
作戦計画はまだ続いているんだと言う。
しかし1人がやると、堰を切ったような状態になった。
ヒョロリとした痩男がブルーのブラをはずして、何か始めた。
(サイレン)「そこの男、何やってんのさ!」
(痩男)「あたしさ、こういう強くてチイパイの女性、実は大好き」
普段はコテンパンにやられるのが関の山なくせに、こういう機会では元気だ。
(痩男)「特殊レジンで固めて、記念のイヤリングをつくっちゃおう」
傀儡鬼はあわててブラを戻すが、ブルーの胸の突端部分が2個ともなくなっていた。
(傀儡鬼)「余計な事をするのはやめろ!もうすぐ警察が来るんだぞ」
後の作戦に支障が出るかもしれない。
「あたしもほしい」と言いだしたのは、髪の長い女妖怪だ。
たしか異次空間を自在に操れる妖怪だったはず。
(髪女)「この女に恨みがあってね」
イエローの前に立って何かやりはじめた。
(傀儡鬼)「ちょっと、ちょっと待ってくれ」
あわてて止めようとした傀儡気はギョッとした。
(傀儡鬼)「あんたそれ何?」
女妖怪が手に持ってるのは、
(髪女)「え、この女の心臓よ。もらってもいいでしょ」
どうやったかしらないが、まちがいなく彼女の体から抜き取ったようだ。
憎きイエローの心臓をコレクションにすると言っている。
『恨み骨髄に徹す』とは、よく言ったものだ。
目を血走しらせた数人が、「こうしてやる」と叫んでいる。
(サイレン:今度はなんだよ)
グリーンは首がなくなっても立っているが、彼女の体に鉄筆のような爪でガリガリと、何か書き始めた。
(サイレン)「何してるの!」
「この女に呪いの言葉を送ってやる」
足を開いて構えていたグリーンの体中に、いや、マスクやコスチュームまで引きはがして、彼女の体を刻み付けるように呪術の文言が・・・
ようやく全員、悪い意味で未練の残っている連中を部屋から追い出した頃に、
「正面ゲートに警官隊が突入してきました」という報告があった。
(傀儡鬼)「やれやれ、なんとか間に合ったな」
サイレンがニセスーパーガールに指示を出す。
(サイレン)「お前たちうまくやるんだよ」
彼女たちもすでに、この後の
手筈がわかっているようだ。
(サイレン)「一段落したらアジトに集合するように」
3人はうなずき、再び変身してドーム部屋の外に出て行った。
(サイレン)「さあ仕上げだ。手伝っておくれ」
彼女たちと部下は、3人、いや3体のマネキンをくっつけるように置き直した。
グリーンの首を拾ってきて胴体の上にソッと載せた。
ブルーの胴体、なぜかちょん切れているが、これも上半身を下半身の上に載せた。
一か所に集め終えると、田中は持ってきた箱をイエローマネキンの首にかけた。
(傀儡鬼)「それが爆弾か?」
(田中)「そうだよ。強力なやつだぜぃ。これでこいつらも木っ端みじんだ」
セットし終わると、イエローの頬をペタペタとたたいて、
(傀儡鬼)「それじゃあな。スーパーガールども。永久におさらばだ」
サイレンと田中を促すと秘密の隠し扉から消え去った。
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