異聞、妖術合戦 その2
ちょっと一休み。休憩所でお茶をすることにした。
3人、いや、美穂と碧は話に興じているが、夏美はずっと黙っている。
何をか考え込んでいる様子。
美穂が「ちょっとお手洗いに」と言って席を立った。
後に残った碧と夏美だが、
(碧)「どうしちゃったのよ?さっきからずっと黙ってて!」
ようやくボソボソと、
(夏美)「あのさ、さっきの・・・」
3体の蝋人形だけが、他のとはまったく別物だったと言っている。
(碧)「別物?妖気でも感じたの?」
(夏美)「いいえ。霊視もしてみたけどさ、なんにも感じなかったよ」
(碧)「それじゃなんなのよ」
(夏美)「なんていうかな。おかしいことは何もないのよ。でもそれが逆におかしい感じがするのよね」
碧は夏美の言っている意味がよくわからず「???」である。
(夏美:それに、あたしたちは、さっきから異空間に閉じ込められていて、
もう建物の外には出られなくなっているよ)
でも、このことは黙っていた。
美穂は休憩所に戻ろうとしていたところを係員の男に呼び止められた。
(係員)「あのぉ、先ほど蝋人形のところにいらした方ですよね」
(美穂)「え、はい。なにか?」
(係員)「忘れ物をなさいませんでしたか?」
(美穂)「え、忘れ物・・・ですか?」
(係員)「ちょっと見ていただけますか」
「あ、はい」と、係員の後について行った。
スーパーガールイエローの蝋人形はマスクが外されていた。
当たり前のことであるが、マスクをとった蝋人形の顔は美穂そっくりであった。
(美穂:あたしにそっくりって・・・やっぱり気持ちが悪いな)
マスクは男が持っていて、
(係員)「このベネチアンマスクはあなたのではありませんか」
(美穂)「え、あたしのって?」
彼女は渡されたマスクを手に取ってみる。もちろんこれはレプリカである。
(美穂)「いいえ、違いますが。あたしのじゃありませんよ」
男はタイミングを逃さずに、彼女に聞こえないほどの声で呪文を唱えると・・・
いきなり蝋人形が動き出し、美穂に襲い掛かかった。
そして、強引に彼女のバックをつかみ取ってしまった。
美穂は突き飛ばされたが、転瞬、ファイテングポーズをとって次の攻撃に備える。
(美穂:ろ、蝋人形が動いている!どうなってるの?夢を見ているのかな)
仰天しながら「なんなのあんたは?」と、叫び声をあげた。
驚くことは、まだ続く。その蝋人形が『変身』と叫んだのだ。
蝋人形の手にあるバックにはベネチアンマスクがもちろん入っている。
あたりが光った。当然、美穂がスーパーガールイエローになるはずである。
しかし・・・
蝋人形のイエローが・・・テカテカが消えて本物のイエローになった!
本物の美穂は変身できなかった。
美穂は唖然として「え、え、な、なんであたしが変身しないの?」
係員の男が「ククク」と笑いながら出てきた。
もちろん彼は傀儡鬼であった。
彼の前にはイエローと美穂が立っている。
しつこく書けば、イエローは蝋人形が変身した者、美穂は変身できないが本物。
(傀儡鬼)「よく聞け美穂、この蝋人形はな・・・」
この蝋人形は、美穂と全く同じ、体形、性格、能力、記憶はもちろん、なにからなにまで、本人と全く同一の複製体なのだ。
ただ一つ、傀儡鬼に忠実で絶対服従なことだけが違うのみ。
(美穂)「こ、これはいったい、どういうこと」
(傀儡鬼)「こういうことさ」
傀儡鬼が再び何か唱えると、
「え、あぁぁーーー!」
美穂はイエローの蝋人形が立っていたところ、空いている場所に吸い込まれて・・・
傀儡鬼が「フフフ」と笑いながら、動かなくなった蝋人形を手でスーッとなぜると、
不思議なことに美穂の服はイエローのコスチュームに変わった。
落ちている黄色のマスクを拾い美穂の顔にかけて、
(傀儡鬼)「これでお前は立派なスーパーガールイエローの蝋人形だ」
男の前に立っていたイエローは「変身解除」と言って、美穂に戻った。
そして「それではあたしはこれで」、と行ってしまった。
ニセ美穂は「お待たせ」と戻ってくると、碧に向かって、
(美穂)「あんたさっきあの蝋人形になにかやらなかった?」
(碧)「え、え、何か言ってた?」
碧は覚えがある。真理子の蝋人形のマスクを外して、顔を見ていたのだ。
(美穂)「少し騒いでたよ。ベネチアンマスクがどうのこうのと」
夏美が「あたしが、術でベネチアンマスクをとったことかな」
(美穂)「ううん、夏美じゃない。碧の方だったみたい」
碧は立入禁止内に入って、勝手にマスクを外してしまったのだ。
(碧)「まずいな。なにか問題があったかな。ちょっと行ってくるね」
ニセモノの美穂はうまく碧を誘い出した。
傀儡鬼の計画では、まず美穂と碧に罠を仕掛けて、2人をニセにとりかえる。
それから一番手ごわそうな夏美に備えるつもりだ。
順番的にもそれが妥当だろう。
妖怪ハンターである夏美は誘い出しにくい。
逆封じの術でも使われたら面倒だ。
さて、椅子に座ったニセ美穂からは、妖気のような気配はまったく出ていない。
さすがの夏美も本物そっくりの美穂には気がつかないのだろうか。
夏美はクリームソーダをストローで飲みながら、上目遣いで見ている。
再び黙ってしまった。
(美穂)「どうしたのよ、ずっと黙ったままで」
(夏美)「いや、別になんでもないよ・・・」
美穂を見ながら、ストローでグラスをかき回している。
突然「キャアー」と悲鳴が聞こえた。
2人は立ち上がり、声のした方に向かって行った。
この時夏美は、そばにあった観葉植物の下に、護符のカードを1枚隠していった。
ニセ美穂に気がつかれないようにそっと。
駆け付けた美穂と夏美の前には、ブルーと碧が立っていた。
(夏美)「ど、どういうこと。これはいったい?」
ブルーが叫んだ!
(B)「蝋人形が、あたしに変身したんだよ」
夏美は碧の方を見てみるが、
(碧)「違う!こいつが、蝋人形が動き出して、あたしのバックを奪って変身と叫んだら、叫んだら・・・」
(美穂)「叫んだら、どうしたのよ」
(碧)「ブルーに変身したのよ。あたしは変身しなかったの」
美穂が「変じゃない!本物、本人が変身できないって、おかしいじゃないのよ」
夏美は「え・・・」と、言ったきり無言だ。
(夏美:碧からもブルーからも怪しい気配は何も感じないな)
両方とも本物のように思える。
美穂が碧に向かって「変身できない方がニセモノでしょ。やっぱりあんたがニセモノね」
(碧)「ちがーう!信じてよー」
碧は手を振り上げて超能力を使おうとしたが、ブルーも手を挙げてそれを抑え込んだ。
「あ!」碧はブルーに超能力を封じられた。
どちらも同一人。もちろん能力も同じである。
美穂がイエローに変身した。
(Y)「さあ、ニセモノ覚悟しなさい」
ブルーとイエローに迫られて、碧は後ずさる。
(碧)「信じて。あたしが本物なんだよー」
夏美は黙って見ている。じっと何か考えている。
この時、柱の陰で例の男、傀儡鬼がすでに呪文を唱え始めていた。
(碧)「イエロー、夏美、本当にあたしが本物・・・あーーー!」
碧はブルーの抜けている場所に吸い込まれて、蝋人形になってしまった。
(B)「やっと元の蝋人形に戻ったな。夏美がやったの、ありがとう」
(夏美)「いやあたしはなにも・・・」
ブルーは落ちているマスクを拾い、蝋人形にかけた。
同時に『ボワァン』と、碧が着ていた服がブルーのコスチュームに変わる。
蝋人形は水の術を操っているポーズの恰好のまま、もうピクリとも動かない。
ヤレヤレと、2人は変身を解除した。
(美穂)「どうするのこれ」
(碧)「やっぱり妖怪か何かの仕業じゃないの。そうでしょ夏美」
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