異聞、妖術合戦 その3
夏美は何も答えない。
「ちょっと調べることができたから。後はよろしくね」
2人を残して出て行ってしまった。
(ニセB)「あー、ちょっと夏美。どこ行くのよ!」
(ニセ美穂)「これどうするのよ。このままほっとくの?」
あっけにとられていたが、夏美が見えなくなると、
ニセ美穂は「チェ、夏美は人形にできなかったか」
ブルーも碧に戻り「やっぱり手ごわそうだな。何か感づいているようにも思えたが」
男も奥から出てきた。
(傀儡鬼)「大丈夫だ、異空間の中に閉じ込めているから、建物の外には出られない」
ニセモノの美穂とブルーも頷いている。
「そうですね。夏美も必ず蝋人形にしてやる」
今、ベネチアンマスクはニセモノたちを本物と認識している。
逆に蝋人形にされた本物の彼女たちは、ニセモノと認識されている。
『本物と認識された者』が変身でき『ニセモノと認識された者』は変身できなかったわけ。
もし蝋人形にされた本物の美穂と碧が体を壊されてしまったら、元に復元されることはない。
死ぬというよりも、消えてしまうことになるだろう。
傀儡鬼は、蝋人形のブルーの胸をコツコツとたたきながら、
(傀儡鬼)「この2体だけでも、今日中に壊しておこう。閉館してからだ」
3人は出て行った。
そして深夜の博物館・・・のゴミ捨て場。
粗大ゴミ用の大きなコンテナ容器の中に2体の蝋人形が立てかけられている。
イエローは両足を開いて手を前に突き出した電撃のポーズ。
ブルーは両手を振った、水玉の術を使う時のポーズ。
颯爽とした姿。涼し気な目をしたニコやかな表情。
(傀儡鬼)「蝋人形になっても、お前たちはカッコいいよな。でもこれまでだ。
よし。2度と生き返れないように、完全に壊してしまえ」
ニセモノ2人はうなずくと、ニセイエローが電撃を放った。
『バッコン』という音がして、ブルーは爆発して吹き飛んだ。
さらに、イエローの方に向かって、もう一発電撃を放つ。
イエローの蝋人形もバラバラに砕け飛んだ。
マスクも吹っ飛び、コロコロとヒビの入った美穂の頭が転がってきた。
ニセブルーは「目障りだよ」と言って、足で踏み割ってしまった。
蝋人形、いや、本物の美穂と碧は『豪快に』と、言っていいくらいに砕けて飛散してしまった。
傀儡鬼は笑いながら「掃除をしておけ」と、一言。
あたり一面に飛び散っている粉々の破片を、ご丁寧にホウキとチリトリで集めてゴミ箱へ・・・
片付けはおしまいだ。
2人は完全なゴミとなってしまった。
傀儡鬼はニセに向かって、
(傀儡鬼)「これでもう、お前たちが本物のイエローとブルーだ。
あとはグリーンを片付けるだけなんだが・・・」
しかし彼は首をかしげている。
グリーンはどこに隠れているのか、ずっと探しているが見つからない。
(ニセB)「どうやって逃げたんでしょうね」
(傀儡鬼)「結界を張っているから逃げられるわけないのだがな。いや、まだ建物内にいるはずだ」
傀儡鬼でも、どうして彼女が見つからないのかわからなかった。
3人は館内に戻っていった。
美穂と碧は死んでしまった・・・と、思われたが・・・
この一部始終を茂みの中から見ていた者がいた。
なんと、グリーンと、美穂と、碧だ。
傀儡鬼たちが完全に見えなくなると出てきた。
(美穂)「危なかったよ。本当に死んでいたところだった」
これはどういうことでしょうか?
時間をさかのぼって、ここは閉館後の真っ暗になっていた休憩室内。
観葉植物が隅っこにポツンとあり、そこに隠すように置いてあったカードが光りだした。
「フゥ」と、息をついたグリーンが立っていた。
カード内移動の術。外部と結界内を通過できる移動路を確保していたのだ。
彼女はすぐに展示室に向かい、イエローとブルーを触ってみるが、
(G)「あーあ、完全に蝋人形になっちゃってるね」
2人を抱きかかえると、再び休憩室まで戻る。
(G)「ったく、もう!重たいな」
すぐにカードを光らせて、3人はその中に消えていった。
出てきた場所は・・・
来る時にカードを撒いていた茂みのところであった。
2人を茂みに立てかけると、夏美は呪文を唱えながら呪術を解く聖水をかけた。
蝋人形は煙を上げだして人間に戻った。
(G)「しっかりしてよ。大丈夫?」
(美穂)「あっっぅ。あ、グリーン。あたしたちは・・・」
「蝋人形にされていたんだよ」と、経緯を話す。
(碧)「そうだったの。ありがとう、助かった」
(G)「とりあえずよかった。生き返って」
しかしベネチアンマスクを取り戻して、あの人形たちを倒さなくてはならない。
夏美は人形を2つとり出した。
(夏美)「あの蝋人形は呪具だよ。それに操っている相手は人形使いの妖怪だよ」
夏美はすでに呪文を唱え始めている。
(碧)「あ、あのぉ・・・なにをするの、あ!」
呪文を唱え終わると、なんと、小さな人形が美穂と碧になった。
「うえー」と、2人は悲鳴を上げた。
正確には、ビキニアーマー姿で、マスクだけしていない美穂と碧。
(G)「この人形たちもね、あんたたちと何から何まで同一だよ」
夏美のは人形写しの術。
美穂と碧は唖然としてみている。声が出ない。
やっと・・・「夏美って、こんなことができるんだ」
彼女が悪人だったら、体を簡単にとられてしまっていただろう。
グリーンは人形たちに先ほどのポーズをとらせて、
蝋人形にされた時に美穂と碧がつけていたレプリカのベネチアンマスクをつけさせた。
そして別の呪文を唱えると・・・
あら不思議!2人は蝋人形になってしまった。
換り人形の術。傀儡鬼が蝋人形を人間に変えたときの術の逆をやったわけだ。
「ちょっと待ってて」と、グリーンは蝋人形2体を持って消える。
しばらくして戻ってくると「さっきのところに置いてきた」
というわけである。
傀儡鬼が壊したのは、グリーンが人形で作った美穂と碧のレプリカ、さらにそれを蝋人形に変えたものであった。
彼の失敗は、閉館など待たずに、あの時あの場で、さっさと2人を破壊しておくべきだったことである。
そうすれば、何の抵抗もできない2人の命は終わっていたから。
再び茂みの中の会話。
(碧)「なんで、蝋人形にされたあたしたちが本物だとわかったのよ」
「それはねえ・・・」飴だという。
(夏美)「あの飴は『マーキング』みたいなものだよ。
変身していた2人は飴を舐めた気配がなかったね。
反対に蝋人形のあんたたちからはあきらかに舐めた形跡があったからさ。
舐めていた方が本物よ。人形を操る妖術使いを相手にする時の定石だよ」
夏美は続けて「それにさ、気配がなさすぎたんだよね」
物には物の霊気が多少はあるものだが、あの蝋人形には全くなかったといっている。
(夏美)「不自然過ぎたんだよ」
なにかの術で気配をわざと消して隠していた。
(夏美)「その時点で、もうすでに何か仕掛けられていると思ったの」
イエローとブルーと謎の男、3対1。
おまけにまだ他に罠があるかもしれない。
さすがの夏美でも、あの場面で戦うのは不利だと思った。
そこで、気づかぬふりをして一旦引いたわけ。
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