異聞、妖術合戦 その5
組み付いたまま、転がるように廊下に飛び出したイエローとニセ美穂。
(Y)「離せ!」
(ニセ)「離すか!」
と、組んずほぐれつを繰り返していたが、
イエローがニセ美穂の腹を蹴っ飛ばし、ようやく振りほどいた。
しかしニセの美穂も、ただでは起きない!
転がりながらもなにやら呪文を唱え続けている。
イエローは電磁ムチを振って、ニセモノを捕まえようとするが、
空間がユラユラとゆがんだように見えだして・・・
(Y)「あれ、え、何をする気だ?」
いつの間にか、イエローのまわりに5人の美穂が立っている。
(Y)「いっー、これは!」
傀儡鬼が持っている影分身の術。傀儡鬼ならこの手の技は得意中の得意である。
ニセ美穂は傀儡鬼から術を授かってきたようであるな。
いきなり、しかも一斉に殴りかかってきた。
5体1で殴り合いをしていたが、やはりスーパーガールの方が強かった。
本物は、いやニセモノの美穂は・・・その隙に逃げていき、向こうの部屋に飛び込んでしまった。
(Y)「あ、待て!」
これは勇み足であった。注意を怠ってしまった。
イエローが部屋に入った途端、彼女が一番注意していた事、電気を消されてしまった。
(Y)「しまった!」
真っ暗闇の中、動けなくなったイエローは、
ボディブローをもろに食らい、仰向きに倒されてしまった。
ニセ美穂は馬乗りになり「死ねぇ」と殴りつける。
イエローは一方的に殴られているが、しかしこんなのでは致命傷にはならないだろう。
(ニセ)「これでは埒(らち)が開かないか」
ニセは立ち上り、暗闇の中で何か始めている。
突然、電気がついた。
(Y)「うぅ・・・」
イエローはヨロヨロと立ち上がった。
(Y)「よくもやってくれたわね」
ニセ美穂は腕組みをして立っている。
ニヤニヤと笑いながら「さあ、電撃でも光線でも撃ってこいよ」
言われるまでもない。イエローは電撃の構えになった。
ニセは腕組みを解いて身構えている。どうにもいやな感じだ。
(Y)「何を考えてるのよ」
(ニセ)「さあてね」
ニセは平然とした様子で、イエローをさらにけしかける。
(ニセ)「全力で撃ってこい。どうした?、あぁ」
ニセ美穂は口の中でブツブツ唱えだした。
ここは一気にやるしかない場面だが・・・挑発に乗らずにもう少し冷静に考えるべきであった!
怒りと勢いにまかせて攻撃を仕掛けてしまった。
全力を出して、熱光線を放った。そして、命中した・・・のだが・・・
命中する瞬間に、ニセ美穂は輝き出し、体が鏡のように変化した。
そしてイエローの放った光線を反射してきた。
(Y)「え!うわぁぁぁーーーー」
そのまますべてがはね返ってきて彼女に命中した。
共鳴のような現象を起こして、イエローは熱光線の放出を途中で止めることができない。
(Y)「ギャアアアーーー!」
電撃のポーズのまま、存分に自分の放った光線を浴びてしまい・・・
(ニセ)「これも傀儡鬼様が特別に授けてくれた呪具だよ。
体を鏡のように変えて、光線をそっくり反射できるようにしたのさ」
イエローはその声が聞こえているのだろうか。
『ズバーン!』と、雷が落ちたような音がして、壁の端まで吹き飛んで動けなくなっている。
自爆したようなものだ。体のあちこちが焦げて煙が上がっている。
変身も解けて美穂に戻ってしまった。ベネチアンマスクも落ちている。
(ニセ)「死んだかな?」
いや、まだ死んだわけではない。
ニセが近づいて足で仰向けに転がすと、バタンと手足を投げ出し大の字に広がってしまった。
(ニセ)「それそれ。どうした」
顔を踏みつけても、踏みつけられるままだ。
目もうつろに見開いたままで、焦点も定まっていない。
かすかにブツブツと、なにかつぶやいているが・・・
(ニセ)「それじゃ、ベネチアンマスクは返してもらおうか」
ニセが手を伸ばしかけたとたん、
(ニセ)「??? う、う・・・うわぁ」
体中から、体の中から草が生えだした。
細い茎はたちまち太くなっていって、
(ニセ)「こ、これはぁ!」
バーンといいう音とともに、ニセ美穂の体が砕け散ってしまった。
バラバラになった蝋人形の破片が転がっている。
美穂はしばらくしてヨロヨロと起き出した。
(美穂)「あんたと同じだよ。これは、グリーン先生が授けてくれた植物の術なんだよ」
取っ組み合っていた時に、ニセ美穂の体に破壊樹の種を植えこんでおいたのだ。
呪術を唱えると発芽して、ニセ美穂、蝋人形の体を食い破って出てきたのだ。
(美穂)「か、勝ったみたいだな、あたし・・・」
美穂と碧は戻ってきたが、夏美と傀儡鬼はまだ話をしている。
(夏美)「よかった、無事だったのね」
(傀儡鬼)「どうやら、私の蝋人形たちは倒されたようですな」
驚いた風はない。「やっぱりな」と、いう顔をしている。
美穂と碧は、夏美に向かって「さあ、そいつも早く」
(夏美)「いや、待ってよ」
(傀儡鬼)「夏美さんも、この蝋人形のグリーンと戦ってみたいそうですよ」
「はあ?!」
美穂と碧は何をバカなことをと驚くが・・・本気らしい。
ニセのイエローとブルーも強敵だったのに、わざわざそんなことを考えるなんて。
(美穂)「こいつは半端じゃないよ。あんただって負けるかもしれないよ。負けたらどうするのよ」
夏美はクスクス笑いながら「誰が負けるって?」
(美穂)「何を言っているの・・・あ!」
ゾッとするような目つきで2人を見ている。
(夏美)「その時はぁ、ニセのグリーンをスーパーガールに加えればいいじゃないか。フフフ」
顔が別人のようになっている。目は緑色に光り、目じりが吊り上がっている。
髪の毛も銀色に変わってしまっている。
体中からすさまじい妖気を噴きだし部屋中に放っている。
しかし輝くばかり、信じられないような美しさでもある。
美穂と碧は息をのんだ。夏美はまるで妖怪にでも取りつかれたようで・・・
(碧)「あ、あんた本物の夏美なの?まさか蝋人形では・・・」
ヒヒヒと笑いながら「あたしは本物だよ」
(夏美)「持っている妖力を全開にしたんだよ。これからニセモノと勝負するんだ」
ニセモノに体をとられたのではないらしい。
(夏美)「あたしね、今最高に興奮してるんだよ。わかるでしょ」
傀儡鬼に「少し待ってて」と言って「美穂、碧、ちょっと外へ」
2人を促して部屋の外に出て行った。
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