妄想別館 弐号棟


異聞、妖術合戦 その6


3人はすぐに戻ってきた。
傀儡鬼は夏美がニセグリーンと戦うというのを聞いて半信半疑だったが、
(傀儡鬼:何を話してきたんやら。でもどうやら戦うのは本気らしいな)
夏美は、緑色のベネチアンマスクを2つ持っていた。
1つは本物で、もう一つはレプリカであろう、
(夏美)「ほら。呪術のこもったベネチアンマスクのレプリカを貸してやる」
効力は1時間。それぐらいあれば決着はつくだろう。
(夏美)「それでいいね」
(傀儡鬼)「ああ、結構だ」
(碧)「本当にベネチアンマスクの能力まで術で作れるの?」
(夏美)「まあね。そうじゃなきゃ、つまらないでしょ」
(美穂)「それよりも本当に、本当に戦うの?」
(碧)「そうだよ。バカなマネはよしなよ」
夏美はギロリと2人を睨んだ。
美穂と碧は殺されるのではないかと縮みあがった。
(夏美)「いいから。あんたたちは黙って見てなさいよ」
傀儡鬼も笑いだした。彼にとっても2人の戦いに損はない。
夏美はグリーンに変身した。
(G)「あんたたちも変身しなよ」
うなずくとイエローとブルーになった。
(G)「ブルー、頑丈なバリアを張っておきなね。いいね、わかったね」
どんな流れ弾が飛んでくるかわからない。
(B)「わ、わかったわ」
傀儡鬼も数歩下がってバリアを張っている。
グリーンはそれを見ると傀儡鬼を促した。
彼も、うなづいて呪文を唱えだした。
すぐに蝋人形が動き出し「やっとあたしも出番が来たね」
(G)「ほうらよ」
グリーンが呪術のベネチアンマスクを投げると、
「お、サンキュー」といって受け取り、変身した。
(G)「さあ、これでやっと勝負を・・・」
言い終わる前に、いきなりニセが蔓(つる)をムチのように伸ばして振ってきた。
むろんグリーンはあらかじめ予測していた。
瞬時に盾が張られ、バチーンと音がしてムチをはじき飛ばした。
(B)「うわあっ!」
はじけ飛んだムチは、さらにブルーのバリアに当たって食い込んでいる。
バリアの一部が砕けて吹き飛び、水しぶきをあげている。
バリアがなければイエローとブルーに当たっていただろう。
(B)「あっぶない・・・!」
(G)「それは毒が塗ってあったよ。もっと下がって」

ガチバトルの様相はエスカレートしていって、あたりに殺気が膨らんでいく。
グリーンは呪文を唱えながら窓から飛び出した。
(ニセ)「あ、待て、逃げるのか!」
ニセも追って外に躍り出たが、とたんに木の葉が手裏剣のようになって四方から飛んできた。
「うわぁっ」グサグサと体中に刺さっていく。
『グシャリ』と、地面に激突して・・・まったく動かない。
イエローは勝負あったかと思ったが、
(Y)「あれ?」
ニセグリーンはいつの間にか、木の葉が刺さった丸太に変わっている。
傀儡鬼が「変わり身の術だろ。初歩の技だな」
植物使いならこういうのは簡単である。
(美穂)「どこへ行ったの?」
音がする方を見ると、2人は何かの植物を剣にして、打ち合っている。
(碧)「すごい・・・なにあれ・・・」
一合二合、バチバチと打ち合って、草のくせに火花が散っている。
彼女は剣術が使えたのだろうか?
2人は楽しんでいるかのようだ。笑いながら切り結んでいる。
ただし全く互角だ。そのうちに、どちらが本物かニセモノかわからなくなった。

グリーンはためしに呪符のカードを投げてみるが、
ニセは剣で打ち落としている。
(G)「やっぱりこいつは、もう護符では倒せないか」
護符は効かない。護符は人間には効かないのだ。
すでにニセは呪具ではなくなっている。
妖術で作ったがすでに人間と同等なのだ。
(ニセG)「やっぱり術を使わないとだめだね」
ニセグリーンはスッと飛び下がる。
手を振ると草が伸びだしたが、すぐ枯れてしまった。
(G)「何をやってる。あたしには効かないだろ」
2人は自分で出した術を自分で消すようなことを、しばらく続けていたが、
(ニセG)「時間的にそろそろいいかな。よし、今すぐに片付けてやる」
ニセが何か唱え始めると、
(G)「ん?あれ!」
まわりの地面が消えてしまった。
地面だけではない。周りの建物、木々、草までも消えてしまった。
これは・・・幻術だ。暗闇の中を真っ逆さまに落ちていく。
ニセも一緒に落ちているが「傀儡鬼様が授けてくれた術だよ」笑っている。
グリーンの持っている術ではない。だからどうしていいかわからない。
本物はとうとう上下左右がわからなくなった。
自分は回っている、落ちていく、そんな感じになってしまった。
「うわー」始めて悲鳴を上げた。
イエローとブルーも底なしの闇に落ちていくような感じがする。
(Y)「これはいったい、どうなっているの」
しかし2人は攻撃の対象外なので、どうということはない。じっとして、ただ見ていればいいだけだ。

まわりは真っ暗闇。もちろん植物も一切見えない。
(G)「しまった。これでは術が使えないよ」
ためしに呪文を唱えてみるが、反応がない。
異空間に落ちてしまって、本当に植物が無いのか?
あるいはニセが術を打ち消しているのか?
でも条件は相手も同じなのではないのか?

グリーンは暗闇の中を、頭から真っ逆さまに落ちている・・・と、思っていたが、
『ハッ』と、気がつくと、地面の上に仰向けに横たわっていた。
「これは!あ、体が動かない!」起き上がろうとしたが動けない。
(ニセG)「お前はそこから一歩も動いてはいなかったんだよ」
幻覚に惑わされている間に、ツタが伸びていたのだろう。
両手両足にやたらと絡みついていて。逃げるどころか動くこともできない。
地面のまわりには、すでにたくさんの食虫植物が口を開けていた。
あわてて切り裂こうと草の剣を作ったが、自由が効かないし草の量も多すぎる。
ニセはこのような状態を想定して、罠を仕掛けていたのだろう。
食虫植物が一斉に襲い掛かり、グリーンは食べられてしまった。
(B)「あぁー、グリーン!」
食虫植物は口を閉じてしまった。
頭から飲み込まれてグリーンは呪文を唱えるヒマもない。
術を使う前に消化液の中に落ちてしまった。
ニセグリーンは食虫植物をうまく操り、よく混ぜるように草をゆすっていたが・・・
しばらくして、両手を開くようにして何か唱えると、食虫植物はあっという間に枯れだし、溶けて消えてしまった。
後には・・・
ドロドロになった液体と・・・緑のベネチアンマスクと、グリーンのまとっていたコスチュームなどが落ちている。
グリーン本人の姿は跡形もない。
(ニセG)「ハッハッハ、完全に溶けてしまったわ」
イエローとブルーは抱き合うようにしてこのありさまを見ている。
(B)「グ、グリーンが溶けてしまった・・・」
(ニセG)「さあ、溶けたグリーンを、一滴残らず吸い取ってしまえ。」
地面は見る見るうちに乾いていく。
溶けたグリーンを十分に吸ったのだろう。
たちまち草が勢いよく生えだしてきて一面を覆った。

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