妄想別館 弐号棟


鬼の復活話 その7


再び冒頭の焼肉場面に戻る。
大皿にあった肉、すなわちスーパーガールたちは、すっかり食べられてしまった。
後に残っているのは、彼女たちが身に着けていた物、の残骸?

「ベネチアンマスク?ああ、そこにあるぞ」
赤介が大皿を指し箸で!
(Th)「あ!」
見るも無残、二つに折れ曲がった黄色のベネチアンマスク。
緑色もグネグネに曲がっているし、青色は傷だらけで、装飾も取れてしまっている。
(Th:うおー、せっかく手に入ると思ったのに)
あわよくば商売に使おうと考えていたのだが。これはもうだめだ。
(Th)「そんなになってしまったんですか・・・」
なんてガサツな連中だと思った。
一言文句を言おうと思ったがやめた。後が面倒くさそうなので。

青之が最後の一切れを頬張りながら、
「そのマスクがあるとどうかなるのか?」
ツバーンは『変身』の呪文を唱えると、彼女たちが復元できることを説明する。
(赤介)「復元したら、また潰して食えばいい。ガッハッハ!」
豪快に笑っているのを見て、ツバーンは渋い顔をする。
さんざん痛い目に合っているのだ。とても笑えない。
黒彦が「まあ、そう心配しなさんな」
(青之)「そうだぞ。俺たちが腹に納めてしまえば、こいつらの能力も無力になるのさ」
(Th)「どういうことですかね?」
黒彦がベネチアンマスクを拾い上げて、
(黒彦)「これを持って、呪文を唱えればいいんだな」
ツバーンは驚いた。慌てて手を振って制止しようとする。
(Th)「ちょ、ちょっと待って。復活したらどうするんですよ」
(黒彦)「大丈夫だって、ほれ、へんしーん!」
しかし何も起きない。何回叫んでも何も起きない。
ツバーンはいい意味で当てが外れた。
(黒彦)「ほうらな。どうだい」
鬼の妖力はすごいものだ。
(黒彦)「な、もうこれもいらないんじゃないのか」
いやに食べたそうな顔をしている。
(Th)「いえ、それは・・・いや待てよ・・・」
鬼に食わせてしまった方がかえって安全かもしれない。
ツバーンは「はい結構です。どうぞ」と、言ってしまった。
(黒彦)「じゃあ、食べてしまうぞ」
鬼どもはそれぞれ1個づつ、バリバリとかみ砕いて食べてしまった。
さすがのツバーンもこれにはあきれ驚いた。
世に言うベネチアンマスクをこうも簡単に食べるとは!
(青之)「こういうのも意外と精がつくもんなんだよ」

鬼たちはまだ食い足りない様子だ。
コスチュームが盛ってある皿を見ながら、
(青之)「こっちのも、もういらないだろ」
カッコよかったコスチュームも、ボロクズ同然だ。
これも、まったく使い物にならないだろうな。
(Th)「ええ、どうぞ、食べて下さって結構ですよ」
さっそく箸をのばして火にかけるが、
(赤介)「おやぁ、焼けないじゃないかよ」
さすが彼女たちが着ていた戦闘スーツ。
炭火の上に乗せても、まったく焼ける気配がない。
これには鬼たちも少し驚きだ。
(黒彦)「へえ 焼けないんだ」
やはり特別な素材でできているのだろう。
(赤介)「まあいいや。そのまま食っちまえばいいだろ」
モシャモシャと食べてしまった。

鬼たちは、皿の物をすべて食べ終えると、ようやく満足したようだ。
(黒彦)「さて、腹もいっぱいになったし、余興に面白い物を見せてやる、おいお前ら」
(赤介 青之)「ああ、うん」
3匹は壁の方を向いて『フー』と息を吐いた。するとどうだ。
もやもやとした霧のような物が口の中から出てきて、目の前に薄い人影が現われた。3人だ。
やがてだんだん形が整った。間違いなく、美穂、碧、夏美だ。
例の男は「あースーパーガール!」と、叫んでしまった。
恐れていた事が起きてしまった。
彼女たちが復活した、と、思ったが少し様子が違う。
壁の向こうが透けて見えるし・・・どうも本当の実体ではないようだ。
鬼に向かって「これは一体なんですか」と聞いてみる。
(黒彦)「これはな、今食ったやつらの、霊魂、幽霊のようなものさ」
3人はユラユラと揺れながら立っている。いや漂っている風だ。
ツバーンは近づいて、恐る恐る夏美をつついてみる。
指は体を突き抜け、触れたところは砕け散ったが、すぐに元どおりに戻った。
彼女はまったく無反応。あいかわらずにユラユラしている。
(青之)「こいつらは、今の俺たちの胃の中の様子を投影したものだ」
(赤介)「そういうこと。でも霊力が強かったから、消化吸収するのに1か月はかかるな」
(Th)「消化されるとどうなるんです」
(青之)「完全に無だよ」
この世から消えてしまうわけ。
ベネチアンマスクの能力は強かったが、鬼の妖力にはかなわなかったらしい。
復元能力は遮断されて、彼女たちは、もう復活することができないわけだ。
もっとも今、ベンチアンマスクも壊れてしまっているのだが。
さらに言えば・・・
なるほど、思考がないということは、なんとかしようとする意志もないってわけだ。
鬼とどうやって戦う?ここからどうやって逃げる?体はどうやったら元に戻る?その他、いろいろと。
(黒彦)「こいつらはもう、ただ消化されるのを待っているだけの存在だ」
3人はいつまでもフラフラと揺れている。
ツバーンが夏美の顔の前まで近づいても、彼女は何の反応も示さない。
目は開いているが気を失っているようなものだ。
夏美に向かって、
(Th)「あはぁ、妖怪たちに恐れられた凄腕のハンターも、こうなってしまってはねえ」
ツバーンは笑みがこぼれてくる。
(赤介)「どうだ。これで、お前の心配事はもうなくなったんだろ」
(Th)「もちろんですよ。はい!」

(赤介)「邪魔者はいないし、明日から食べ放題グルメといこうぜ」
(青之)「おう、脂ののった女を食べ放題だ。ああ、よだれが出そう」
鬼たちがいろいろ言っているが、もう彼らに用はない。
(Th)「それでは失礼します」
喜び勇んでホテルを出てきたのだが、しばらく歩いているうちに、ふと思いついた。
(Th)「でも待てよ。あの鬼たち、あの石を放っておいて大丈夫なのかな」
でもしかし、よくよく考えれば、だれもあんな奥山深山に行くわけがない。
行ったとしても、そもそも石を戻すいわれがない。
つまり、鬼を封印するには、あの場所まで『わざわざ』行って、『わざわざ』石を元に戻さなければならない。
だれがそんな面倒なことをするものか!
(Th)「まあ大丈夫かな」




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