妄想別館 弐号棟


伝説の美魔女 その2


イベントの開始時刻になった。
会場は異様な雰囲気に満ちている。
観客はほとんど総立ちで、おとなしく座っている者はほとんどいない。
すでにでき上っているのか、顔が真っ赤になっている男もいる。
いや女もだ。
その熱気に当てられて、祥子はたじたじとなった。
しかし司会が話し出すと、一瞬にして会場はシーンとなった。
(司会)「では1人ずつ登場してもらいます。皆様拍手でお迎えください」
『ウォー』と再び歓声が沸き起こる。
最初に番号1番、なつみが出て行った。
ファッションショーのような感じで歩いている。
祥子は2番目に登場だ。
続いて、るい、薫もステージにそろった。
他の3人の娘をチラ見すると妙に自信にあふれている。
(祥子:彼女たちは50代なんかに見られるわけないか)
祥子はだんだん後悔してきた。
すぐに50代とばれてしまったら、あまリにも体裁が悪い。
(祥子:やっぱ、出なきゃよかったかな。顔を見せておばさんに思われたらいやだな)

(司会)「では質問のある方どうぞ」
胸に番号札をつけた5人の回答者がステージ下に座っている。
4番の回答者がありきたりな質問をしてきた。
(4番)「彼氏はいますか」
(祥子:何と答えようか?夫は彼氏というのだろうか?彼氏とは少し違うかな)
なつみはさらりと「いません」と答えている。
(司会)「2番の人いかがですか?」
(祥子)「え、む、昔いました(今は夫です)」
会場に笑いが起こり、少し沸いている。
(るい)「います」
(薫)「いません」
(司会)「4番の回答者さん、見当がつきましたか?」
(4番)「ぜんぜんわかりません」
司会者は苦笑しながら、
(司会)「他に質問は」
「はい!」3番の回答者が下衆な質問をしてきた。
この男はかなり酔っぱらっている様子だ。
(3番)「やったことありますか」
会場から爆笑とブーイングが起こる。
(祥子:やっだなぁ、もう)
ステージ上の祥子たちは、皆、口に手を当てている。
(司会)「さあどうですか。答えてください」
なつみは下を向いてクスクス笑いながら「ありません」
祥子は「ご想像にお任せします」
るい、薫も「ご想像にお任せします」
(3番)「それじゃ、答えになんないよ」
(司会)「さて時間もないので、第一印象タイムとしましょう。
さあ、皆さん、第一印象で50代はどなたと思いますか?」
5人の回答者の結果は、3番、3番、4番、3番、4番であった。
祥子自身が『うっそぉー』と思った。
(祥子:ハハ、私は若く見られてるのかな)
とりあえずすぐにはバレなかった。
対照的にるいと薫は少しムッとした様子だ。
それはそうだろう。50代に見られたのだから。

(司会)「では、みなさんマスクをとってください」
「あ!」
(祥子:そっか。いつまでも顔を隠していられるわけじゃなかったっけ。おばさんと思われたらいやだな)
再び同じことを思った。
4人がマスクをとると、会場からもザワザワとした声が上がりだした。
素顔を見ても誰が50代だか全然わからない。
3人の娘はもちろん若いのであるが、祥子も年齢の割にはきれいすぎて、他の3人に比べてまったく遜色がない。
回答者は全員首をかしげている。
(1番)「本当に50代がいるの?」
(司会)「もちろんいますよ。では皆さんその場で一回りしてみてください」
なつみ、ふわりと。
祥子、ふわりと。
るいは少しお辞儀をしながらふわりと。
そして薫も。

(司会)「えーそれでは、再び質問を・・・」
(3番)「ちょっと待ってくだし」
3番の回答者が、フラフラと立ち上がり
(3番)「せっかくだし、水着審査を提案します」
祥子は目が丸くなった。
(祥子:そ、そ、そんな話全然聞いてないよぉ)
他の3人娘も驚いたように「いやだぁ」「うそでしょ」などと言っている。
しかし明らかに『望むところよ』と言う雰囲気がありありだ。
元から自信はあるのだろう。
盛大な拍手と悲鳴のようなヤジもとびはじめた。
会場も圧倒的に水着審査に賛成のようだ。
(祥子:やっばぁい!)
祥子はあせった!
このイベントの実行委員会は3番の男とつるんでいたのではないか。
わざと水着審査に持っていくように。
しかし勘ぐっている場合ではない。
急いで拒否しなければ。
祥子はこの3人娘とは状況が大いに違う。
50代の素肌をさらして恥をかくなんて、まっぴらごめんだ。
大慌てで手を振り振り司会に訴える。
(祥子)「あ、あの私、水着を持ってきてませんが」
しかし司会はにべもなく、
(司会)「こちらで用意できています。いや用意できます」
会場は司会者の声も聞き取れないほど、やんややんやの大騒ぎとなっている。

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