芸術の街 その3
第二次調査隊が組織され、Q地区に突入していった。
いや、犯人征伐体、Q市内の人の救出部隊と言った方がよかろう。
今回は重武装をした自衛隊や機動隊が警察官たちといっしょにQエリアの中に入ることになった。
警視庁及び各警察署からもあわせて総勢200名くらい。
碧の署からも選ばれた8名ほどが参戦することになった。
男性警察官が5名。女性警察官が3名とな。
女性はもちろん怪盗の逮捕や戦闘というよりも、住民を救出するために選ばれた、優秀でスポーツ万能の者たちばかりだ。
エリアの東西南北他10地点から同時に突入して、犯人を捜し確保す。
加えて内部の状況把握と現状報告。
まあ、最初の1回で犯人を捕まえることはなかなか難しいと思っている。
だから情報収集をメインの目的としているのも本音のところだ。
何より時間厳守。退却時間を除いた、約6分間での勝負である。
ただし現場の状況によっては、直ぐにでも撤収してよいとなっている。
署内に設置された対策本部にて。
特設のモニターに、刻一刻と現場の映像が送られてくる。
美穂と夏美は碧に食い下がり部屋の中に(無理やり)入れてもらった。
『なんたらかんたらの専門家』という、よくわからない(全然わからない?)肩書を持った、碧の友人ということで。
一番前の席を勝手に陣取り、映像を堂々と見ている。
(碧)「あのねぇ、ここは部外者立入禁止なんだぞ、本当は!」
「少しはあたしの立場を考えて遠慮しろ」と、怒るが、
美穂と夏美は無視して「いいから、いいからさ」
他の警官も碧に遠慮して何も言わない。
さて状況はどうなっているかと言うと・・・Q市内はシーンとしている。
動かない裸の人たちがあちこちにいる。
(夏美)「あ、なるほど。裸だね。みんな」
(碧)「それに誰も動かないね」
ここまでは報告にあった通りだ。
街の中で動いている者がいたら、おそらくそれが犯人だろう。
3人は目を凝らして画面を見ている。
「犯人発見!」
モニター内から女性警察官の叫び声が聞こえた。
カメラがそちらを追うと、通りの向こうのビルのところで、中学生の服を脱がしている男が映った。
犯人らしい男は顔を上げた。
あっ気づかれた!
しかし男は逃げずに、なにかどなっている。
「犯人を確保しろ!」
隊長らしい人物が叫んで、数人が走って行く様子が映ったが、突然画面が切れた。
「応答せよ、応答せよ」と、本部からは必死に呼びかけるが・・・応答はなくなった。
(夏美)「なによ、これ!いいところなのに」
夏美が叫ぶが、そういう問題じゃないでしょ。
(美穂)「なんか嫌な予感がするなぁ」
これ以降モニターには何も写らない。
強行作戦は失敗に終わった。
次の日の朝の出来事。
碧は泊まり込みになってしまった。
「どれ、ちょっと外の空気を吸ってくるか」
朝日が気持ちいい。署の外に出て伸びをしているが、
「うー、あーぁ・・・あ、あ?あーーーっ!!!」
碧はギョッとした。門の外の方に何かマネキンのようなものが置いてある。
急いで近寄ってみると、
「うゎぁぁ!な、何よこれは!」
昨日強行突入していった隊員たちが、うちの警察署の警察官たちが・・・
「うっそぉ!」
全裸で並んでいる。
「い、いつの間に、こんな・・・」
なにか探しているような。
何かを持っているような。
走っているような。
さまざまな格好で。
男性警察官も女性警察官も全員裸だ。丸見えだ。スッポンポンだ。
男性は5人ともブラブラと、いや固まっているから揺れたまま止まっている。
やはりそれぞれ個性がある。
女性の3人は、何気ないような顔、不安そうな顔、何か叫んでいる顔。
動作途中で固まってしまっている。
なかなかかわいいものであるが、あられもない姿を、隅々までバッチリと晒している。
職員が登庁してくれば、十二分にじっくり見られてしまう運命だ。
「このままじゃかわいそう」
碧はなにか毛布でもないかと思いかけてやめた。
気の毒だが何もしてやれない。触れないし隠せないし。
「やむを得ないか」
すっぱり諦めてよく見てみることにした。これはなかなか見ものだ。おもしろい。
もちろん男の部下の方が興味がある。
彼らのナニであるが、立派な物もそうでない物も、やっぱりあった。
「ハハハ。こんなに違うのね。いやだぁ。ん?」
男性警察官、鈴木巡査の一物に糸で紙切れが結び付けられている。ヒラヒラと舞っているが。
「なんだこれは?」
なにか書いてある。でも触っては危ない。ヒラヒラを目で追ってみると、
『碧、かかって来い!相手になってやる。ただし必ず1人で来いよ。1人でだぞ』
第二次調査隊の200名は全滅した。
碧を挑発すべくか、彼女の署員8名だけが彼女の署の前にわざわざ飾られている。
残りは、国会議事堂の前に石像のようにずらりとたたずんでいるとのことだ。
この惨状を知って、碧は怒り心頭だ。
(碧)「なにいぃ!警官192名が全裸で並ばされてるってぇ!」
碧は署長に直接掛け合い、1人でQ地区に行ってみることにした。
もちろん止められたが聞かない。
(美穂)「やっぱり行くの?」
(碧)「行くしかないでしょ。警察の恥だわ。必ず犯人を捕まえてやる」
(夏美)「だけどなぁ、1人じゃ危ないんじゃないの?」
(碧)「なによぉ!あたしがやられるっていうの!」
(夏美)「いや、そういうわけじゃないけどさあ」
碧の剣幕はすさまじく、だれも止められないみたい。
エリア内にいられる時間は10分弱、実際は5分くらいかもしれない。
いや、敵方が脱出の妨害をしてくればさらに短いかも。
当然、罠が仕掛けられている可能性もある。
碧にとっては不利な事ばかりだ。訂正、不利な事しかない!
(夏美)「やっぱり危ないと思うけどなぁ」
(美穂)「あたしもそう思うなあ。あたしも一緒に行こうか?」
本当は瞬間移動ができる、美穂がいてくれた方がありがたいが、
必ず1人で来いと言ってきたのだ。
1人で行かないと犯人は現れないかもしれない。
(碧)「ううん。大丈夫だよ。やっぱり犯人の指示通り1人で行ってみるよ」
美穂と夏美が引き止めるのも聞かなかった。
3人はQエリアの所に来た。
当たりを見回して、
(碧)「それじゃ行ってくる。状況は逐一報告するから」
(夏美)「危なくなったらすぐに引くんだよ」
(碧)「ありがとう。それじゃあ」
エリアに足を踏み入れて変身と叫んだ。
スーパーガールブルーの姿になった。
振り返って美穂と夏美に手を振ると、奥に向かって走って行った。
さて、碧は時計を見ながら、用心深く進んで行く。
予告状もどき?では、相手は出てくるような感じだったがどうだろうか?
しかしその心配は無用であった。すぐに、
(Mr.N)「よく来たな。湯村碧、スーパーガールブルーか」
(碧)「あ!」
碧は振り返ったが、全裸の男が立っていた。
程よい大きさの物がブラブラとしている。
(碧:ヒヤァー、いきなりなんなんだ!なんかいやだなあ・・・)
碧は赤くなりながら、うつむいてしまった。
(碧)「ちょっとぉ、失礼でしょ。女性の前で」
気を取り直して、仕切り直す。
キッとなって顔を上げて男を見返すと、
(碧)「あらわれたな変質者!あんたを逮捕するわ」
しかし・・・どうしても目があそこに行ってしまうのは仕方がないのだろうか?
男はまったく動ぜずに、ニヤニヤして嬉しそうだ。
(Mr.N)「どうだこの創造の都は。あ、これは、俺がそう呼んでいるのだがね」
(碧)「何を言ってる。変態。元に戻せよ。それよりあんたは一体誰なの?名乗りなよ!」
(Mr.N)「私か。私はな、ミスターネイキッド(naked)と呼ばれている」
(碧)「は?へ!な、何て言った!?」
碧は何か聞き間違えたのかと思った。
(Mr.N)「またの名は、ミスターベア(bare)。ミスターヌード(nude)でもストリップ(stripe)でもいいぞ」
本当に裸が好きらしい。
碧は「あ、あ、あっそう。そうなのね」と、絶句して言葉が出ない。
彼が言うには、彼は一応芸術家だそうだ。彫像を専門としている。
そして、ある人物に出会って、この発想を教えてもらい、さらには資金の援助もしてくれたそうだ。
(碧)「まさかその人物って・・・」
ミスターピーイーであった。
(Mr.N)「彼とは実に馬が合ってな」
またあいつか!碧は舌打ちをしてぼやく。
(Mr.N)「俺への資金援助の代わりに彼とも約束したしな」
(碧)「約束?」
(Mr.N)「そうだ」
彼はフフフと笑って「お前たちを倒したいんだってさ」
(碧)「え!?」
(Mr.N)「お前は気づいてないが、ここは特殊な空間になってるんだよ。
おまえと俺のやり取りの映像を仲間に送っているつもりなんだろ?」
彼の言う通りである。
犯人の正体や目的等を美穂と夏美に送り、万が一、碧が不覚をとった場合の対策を考えておくことになっていた。
でも実際は何も届いていなかったわけだ。
無情報なのであった。そして碧は彼に言われるまで全然気がつかなかった。
(碧)「えっウソォ・・・ そうなの?」
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