芸術の街 その4
(Mr.N)「ついでに言っておくとだな、ここでは、お前さんの超能力は一切使えないの」
(碧)「なによ。なんのことよ?」
(Mr.N)「自分の体をよく見てみ」
(碧)「え、あれ、あれれ?」
いつの間にか変身が解けて、碧の姿に戻っている。
(Mr.N)「どうだわかったかな。変身は不可能なのさ」
碧は慌てて変身と叫んでみるが、やっぱり変身できない。
何回やっても駄目である。
(Mr.N)「無駄だってば。それに超能力もだよ」
(碧)「え!まさか」
碧は超能力でネイキッドを押さえつけようとしてみたが。
彼は『へへへ』と、笑っている。
(碧)「そ、そんなバカなこと・・・」
ネイキッドは真面目な顔になり。
(Mr.N)「さあ、どうする。スーパーガールの能力が使えないんじゃ、ここから逃げ出すのもいっぱいいっぱいだよね。
走っても外に出れるかどうか微妙だな。いや難しいかな」
碧は青くなってしまった。
これは誤算だった!素手で戦うことになろうとは。
(Mr.N)「まあな、ピーイーたちとも話したんだが、お前たちが動かなくなったら首を切り落としてほしいそうだ。どうしようかな」
首を落とされてたまるか!こうなれば素手で倒す!
グズグズしている場合ではない。碧はネイキッドに飛び掛かっていった。
(Mr.N)「お、来るか!」
数回打ち合ったが、碧の方が優勢である。
でもネイキッドもまあまあな腕を持っているようだ。
しかし、揺れるブラブラが気になって、目が逸らし気味になってしまう。
(碧:やりにくいなぁ。どうも・・・金的に一撃くらわしてやろうか)
変な迷いがあるうちに、逆に一発、ボディに喰らってしまった。
(碧)「ウグ!」
吹っ飛ばされたが、すぐに起き上がる。
しかしネイキッドはニヤニヤ見ているだけでそれ以上かかってこない。
碧は構えながら、
(碧)「結構やるわね。さあ、来なさいよ」
(Mr.N)「いやもういいや。時間切れだろ」
(碧)「え!?」
いつの間にか、あと20秒しかない。
(碧)「えーーー!しまった!」
(Mr.N)「お前の裸は特別丁寧に警察署の正面に飾ってやるよ。それとも国会議事堂がいいか。それとも警視庁の前かな?」
(碧)「いっ!そ、そんな事されたら、あたしは生きていられないわ!」
(Mr.N)「いいじゃないか、お前の知り合いによく見てもらえるぞ。上司に部下に、それから、ええと・・・」
(碧)「ふ、ふざけるんじゃないわよ、いやだよ、そんな。あたしの体って・・・」
そこまでであった。
怒りっぽい碧は、うまくネイキッドの足止め作戦に引っかかってしまった。
ネイキッドの前でまったく動かなくなった。
(Mr.N)「なかなか勝気な女だったな。どぉれっと」
ベネチアンマスクを碧の胸元から取り出して。カバンにしまう。
(Mr.N)「それじゃあさっそく」
深夜の街を荷物運送用のトラックが走っている。
乗っているのは、ミスターピーイーの手下たち。
そして、毛布にくるまった全裸の女性が1人。
この女性は、もちろん碧である。
悪意のある嫌がらせ、はたまた復讐の一環か。
トラックは碧の勤務する警察署の前に停まった。
ご丁寧にも、わざわざ彼女をここまで運んできたのだ。
男たちは素早く飛び降り、周囲を確認すると、碧をトラックから降ろした。
そして、先日やられた8人の横に並べると、覆っていた毛布をとった。
1体増えて9体目!
「へへ、副署長さんのマネキンか」
男の1人が顔や胸をなぜながら、
「せいぜい、あんたの裸を大勢に鑑賞してもらうんだな」
いずこへか立ち去っていった。
朝になって、朝日をいっぱいに浴びて・・・何か叫ぶような格好で碧が立っている。
素っ裸の碧、もちろん他の者と同じようにすべてを晒して・・・
署員、職員が登庁してくると、黒山の人だかりとなった。
が、誰も手を触れない。触れるわけにはいかない。触れば自分も・・・
三角コーンを置いて近づかないようにするのが精いっぱいだ。
しかし女性の裸はやっぱり興味が尽きない。
上司とは言え、間近で写真を撮る者もいる。動かないから!
彼女の体をなめるように見ている者。碧の体の講釈を始める者。
碧には聞こえているのだろうか。自分の裸が品評されているのを。
そして警官たちが指さしながら騒いでいる。
「何だあの紙きれは?」
碧のペッタンコの胸・・・にちょこんとついている右乳首に糸が結び付けられている。
その先には短冊のようなものがヒラヒラと舞っていて、
『私、湯村碧はスーパーガールブルーなのです』
ヒラヒラ〜っとね。
(夏美)「まったくもう、どうするのよ!」
言わんこっちゃない。碧はやられてしまった。
しかもさらし者になっているが、現状ではどうしようもない。
(夏美)「まあ、当分の間、碧の裸は見放題ね」
(美穂)「ふざけたこと言ってる場合じゃないよ。何とかしなきゃ」
ああだこうだと話をしていたが、結論としては、やるしかない。
あのエリアに入っていって、犯人を力ずくで捕まえるしかないでしょう。
美穂と夏美は夜になったら、あのエリアへ忍び込むことにした。
(夏美)「暗いけど大丈夫なの?あっそうか!」
美穂は先日の事件、例の粉と猛特訓のおかげで、まったく光のない暗闇の中でも動くことができるようになっている。
(美穂)「もう、真っ暗闇でも平気だよ」
犯人を見つけ出し、とにかく速攻で片をつけることにした。
夜になった。
美穂と夏美はエリアの中に踏み入ると、すぐに「変身」と唱えた。
閃光が止むとイエローとグリーンが立っている。
2人はうなづくと、二手に分かれた。
イエローは右へ。グリーンは左の方へ走って行く。
この様子を車の陰から見ていたネイキッドは、
「フーム。やはりスーパーガールの能力は侮れんかったな。
でもよかった。どうせすぐに変身は解けてしまうんだし。
まず美穂から片付けるか」
イエローは時計を見ながら、グリーンに連絡を取ろうとしたが、ダメである。
「チェ、やっぱりダメなんだ」
エリア内では電波が通じない。
しばらく辺りを探してみたが、犯人らしいものはいない。
タイムリミットである。
「ここまでかな。そろそろエリアの外に出ないと」
と、思った時に、建物の陰に人影がチラリと。
「う、待て!」
イエローは追いかけて行ったがすぐに見失った。
「どうするかな。時間がないよ」
イエローは瞬間移動をしようとしたができない!
「あれぇぇ」
なんと、いつの間にか美穂の姿に戻ってしまっている。
あわてて「変身」「変身」と唱えるが、変身できない。美穂は焦った。
「どうしたっていうんだろう?」
瞬間移動なら一瞬でエリアの外に出られるはずだったのに、変身できないんでは・・・
このままでは、逃げる時間が足りなくなってしまう。
今すぐに退却するか?でもなんか癪に障る。
目の前に現れた犯人をムザムザ放っておくなんて。
それに敵は1人のようだ。なんか簡単に捕まえられそうだ。
でも、これが彼の作戦であることに、美穂は気がつかなかった。
(Mr.N)「おーい、どこ見てる。ここだぞぉ」
振り返った美穂は「ギャフン」と、声を出してしまった。
全裸男が目の前に立っている。立派な一物をぶら下げて。
反射的に顔を覆い、逃げたくなったが、立場上そうはいかない。
(美穂:こういう悪人も、本当にいるんだ)
情けないが、やむを得ず意を決して、ネイキッドを見た。
美穂はネイキッドと対峙している。目を逸らしたいところを我慢して、
(美穂)「あんたが犯人ね」
(Mr.N)「その通りだ」
碧にした時と同じ自己紹介をすると、美穂は目を丸くして、
(美穂)「え、な、何って?」
空を仰いで「いやらしすぎるんだよぉ!」
心の底から変態だと思ったが、ピーイーたちともつながりがあるようだ。
できればこいつを捕まえて芋づる式に・・・
などと考えていたが、ネイキッドは彼女の考えがわかるかの如く、
(Mr.N)「そんなに簡単に、俺たちは捕まらないぜ」
(美穂)「それはどうかしら」
彼女は数歩踏み込んでネイキッドに向かってパンチを打つ。
彼は素早くかわして、殴り合いのようになった。
(美穂:まずいな、こいつ意外とやるじゃない)
時間稼ぎと言うことは十分にわかっている。
美穂は飛び下がって距離を置くと、
(美穂)「残念だけど時間切れね。一旦引くことにするわ」
ネイキッドは笑いながら、
(Mr.N)「そいつは残念だな。でもそううまくはいかないんだよなぁ」
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