妄想別館 弐号棟


芸術の街 その6


夏美は蒼白い困惑顔だ。途方に暮れてしまった。
「やっぱり美穂もやられてしまったのね」
頭を抱えたり、腕を組んだり、部屋中をずっとウロウロ歩き回っている。
声明文通りであるならば、じきに夏美のところにも何かくるだろう。
「次はあたしか・・・」
敵の正体も、時間停止のカラクリも、今だにわからない。
現状では勝てる要因がまったくないのだが・・・

案の定、来るものがきた! 実に早々ときた!
「今晩勝負してやる。絶対に来い。逃げるなよ!
いやどうしても勝てないと思ったら逃げてもよいぞ。
スーパーガールのプライドを捨ててな」
挑発気味でムカつく内容だ。しかも夏美の心情を読んでいるみたい。
でも・・・ たとえどんなに不利な状況であっても逃げるわけにはいかない。
もちろん夏美も逃げるつもりなど微塵もないのだが。
しかしながら、このままでは負け必須!
「うーん、どうしよう。困ったな。困った困った」
でも妖力の気配は感じないことから、人間の仕業であることには間違いない。
で、あるならば、この現象は何か科学的な方法によるもののはずである。
「人間の作った物だよね。ふーん、それならばもしかすると・・・」
しばらく考えているうちに、いいことが閃いた。
妙案が浮かんだようだ。
いろいろと起こりそうな場面を想定していくうちに、やがて明るい顔になった。
「よし。こんなところかな。でも信用できる協力者も必要だな」
夏美は部屋を飛び出すと、まずQ地区に向かった。

エリアの前まで来ると、あたりを警戒して、しばらく様子をうかがっていたが、
「誰にも見られていないようだな。それじゃ探ってみるか」
グリーンに変身して歩きだしたが、エリアの中には入らない。
外周に沿ってズンズン歩いて行く。
途中で立ち止まっては、しゃがみこんで土の状態を調べて何かやっている。
そしてまた歩き出すを繰り返している。
小一時間ほどで元の場所まで戻ってくると、
「これぐらいでいいかな。頼むよぅ。うまくいってね」
しばらく手を振りかざし、呪文を唱える。
「えーっと、一週間ぐらいか。少し時間がかかるけど・・・」
まさに祈るような気持ちでブツブツ言っている。
植物の超能力を発動したのである。
それは何なのであろうか?種明かしは後でね!

次に彼女が向かったのは、碧の警察署であった。
入口のところには、時間を止められた9人が立っている。
もちろんその中の1人は碧だ。
湯村 碧がスーパーガールだとわかってしまい、どんな素顔か見物人が来るようになっている。
今日も数人来ている。立ったり座ったり、あるいは写真を撮ったりと。
でも結局は、スーパーガールの素顔と言うよりも・・・やっぱり裸の方が興味があるに違いない。
指をさして何かしゃべっていたが、やがって去っていく。
グリーンはため息をつきながら碧に近づいていった。
誰も触れられないので、放置されっぱなしで、ずっとそのままの状態だ。
碧の体には水滴や泥のハネがついている。
グリーンは、銅像のようになっている彼女をじっと見ていたが、
「もう少しがまんしていてね」
そうつぶやくと、署長室に向かっていった。

(署長)「あ、スーパーガール」
(G)「どうも、こんにちは」
(署長)「よく来てくれました」
(G)「お願い事がありまして、お伺いしました」
グリーンと署長は打ち解けて話している。
(署長)「まさか湯村警視がスーパーガールだったとは」
しかし碧はやられてしまった。
もう1人のスパーガール、イエローが美穂だったことも、負けて飾られてしまっていることも情報として入っている。
(署長)「気の毒だけど、どうしようもなくてねぇ。あのまま野ざらしなんですよ」
グリーンは外にいる碧を思い出しながら、署長に考えていることを話し始める。
(G)「あのですね、これからもう一度あのエリアに行ってみるつもりです」
グリーンは犯人から挑戦状が来たことを伝えた。
署長は驚いた。
(署長)「大丈夫なんですか」
(G)「いえ、たぶん十中八九負けてしまうと思いますよ」
(署長)「えっ、負けるんですか?」
(G)「はい、おそらく。でもですね・・・」
署長は固唾をのんで聞いている。
ある策を施しておいたから、一週間経てば犯人を捕まえられる・・・可能性がある。と言っている。
(署長)「可能性ですか」
(G)「そうです」
(署長)「どういうことです?」
グリーンは考えていた腹案を話す。
話を聞いていた署長は「なるほどね」と納得したようだ。
(署長)「念のためお聞きしますが、もしその秘中の策が失敗したら」
(G)「その時は・・・」
グリーンはニコリとして、
(G)「あたしたち3人は終わりですね」
同時にあの変態芸術家、さらには彼に便乗する悪人たちの天下になってしまうだろう。
(G)「でも大丈夫ですよ。一週間後には、おそらくあのエリア内に入れるようになるはず。そうしたら・・・」
グリーンは思い切ったように「変身解除」と唱えた。
驚く署長の前に現れた女子大生は言った。
(夏美)「島瀬夏美です」
署長は見覚えがあった。よく碧のところにやってきている。
(署長)「ああ、あなたがグリーンだったんですね」
(夏美)「あのエリア内では、これは使えません。預かっておいてください」
署長にベンチアンマスクを渡した。
彼女は、時間停止の現象が起きているうちは、おそらく変身できないと思っている。
(夏美)「止まっている人が動き出したら、すぐに『変身』と、唱えてください。
そうすればあたしはスーパーガールになることができます」
署長は初めてスーパーガールの秘密を知った。
現状では警察に打つ手はない。
(署長)「わかりました全面的にご協力します」

夜になると夏美はQ地区に向かった。
レプリカのマスクをとり出しグリーンに変身する。
犯人はきっとこのマスクも狙ってくる。
グリーンはニセモノを渡すつもりだ
昼間と違い、エリアの奥に一直線に向かって歩いて行った。
一応、時間を気にしながら歩いていたが、しばらくすると「おい」と、後ろから声がした。
男が立っているが・・・・
(夏美)「うわあぁぁー、いやっ!」
夏美は顔を覆ってしまった。美穂や碧とまったく同じリアクション!
まごうことなき変態とはこういう人のことなんだろう」と、夏美は思うのだった。
下を向きながらチラ見していたが、
(夏美:これじゃいけないわ!)
気合を入れて向き直る。
(夏美)「あんたが犯人なのね」
(Mr.N)「その通り、ネイキッドというんだ。よろしく」
夏美は口をあんぐりあけて唖然としている。
(夏美)「ね、ネイキッド・・・というのね・・・」
恥じらう女性はみな同じようなリアクションをするのだろう。
彼女は顔を赤くしながらも「負けるものかぁ!」と攻勢をかける。
(夏美)「なによ、そんな小さい物をぶらさげて!ドやってるんじゃないわよ。お笑いだわ!」
大抵の男は、こう言われると、えて凹んでしまうものだ。
だが彼は違った。堂々と反論してきた。
(Mr.N)「大きければ秀作で小さければ愚作って思ってるなら、それはナンセンスな話さ。
大きくてもそれは芸術。小さくてもそれも芸術。
仮に形が悪かろうが、それは個性のある芸術作品としてとらえるベきだろ。俺はそう思っているよ。
あんたのおっ〇いやおま〇こだって、あの仲間2人と比べれば、大きくも小さくもなるだろう。
そんなので、あんたのナニを評価されたら、あんたは悲しくないかい。おかしいと思わないかい。
芸術品を賞翫しょうがんする基準はそんなものじゃと、俺は断言するよ。
君は少し感性が欠けてるね」
少し違う気もするが、夏美は反撃されて、グウの音も出ない。
(夏美)「あ、いや、あの、あ・・・そうですね・・・」
(Mr.N)「ところで、実は俺、あんたのファンなんだぜ」
(夏美)「?」
(Mr.N)「イエローやブルーのおばさんたちと違ってさ、俺は女子大生が好みなんだ」
(夏美)「お、おばさん!?碧は28歳、美穂だって30代前半なんだぞ」
(Mr.N)「30代か。オバんだろ。ピーイーは部下たちといっしょになって、さんざん裸で抱き合って喜んでいたがね。どこがいいのやら」
夏美は聞いていて真っ赤になった。
(夏美)「ピーイーって!や、やったのね、美穂と!?」
(Mr.N)「いや俺はやらない。興味ないもの。でもピーイーは何回も何回も・・・」
美穂は完全に人間ラブドールにされていた、と言っている。
(夏美)「もういいよ!」
気分が悪くなった。どうやら美穂はあの悪人に・・・いやいや、やめておこう。
(夏美)「碧もなの?」
(Mr.N)「あの貧乳女か。いいや。でもな、いきなり殴りかかってきやがったよ。それでさぁ・・・」
(夏美)「それで・・・なに?どうしたのよ?」
(Mr.N)「頭に来たんで大事な所、おっと、胸はなかったんで、下の方をチョン切ってやったぜ」
(夏美)「チョ、チョン切ったぁ?」
(Mr.N)「うん、ハサミで。そっか、乳首も落として完全な真っ平にしてやればよかったかな」
まちがいなく女の敵である。
聞いていると腹が立ってくるし、こんな無駄話をしている時間もない。




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