妄想別館 弐号棟


イエロー奮戦記 その3


場面はガラリと変わる。
都内のK地区。ここは女子高や女子大がたくさんある地域。
女性向けの洋品店、ぬいぐるみやアクセサリーを扱う洒落た小物店、もちろん飲食関係の店舗もいろいろとある。
ようするに女性が多くいるわけ。
ここで事件が多発しだした。

白昼の目抜き通り。
大勢が行き交う中、シックなロングドレスを着た女性が立っている。
サングラスをかけて茶っぽいドレスハットをかぶっていて、素顔を隠すようにしている。
なにか物色している様子だが・・・
「フーンあの娘、良さそうね」
歩いて来る就活らしい女性に向かって「あなたちょっといい」
女学生はびっくりした様子で「え、あ、はい何でしょうか」
女はサングラスを外す。女の目を見てしまった女学生は・・・
女は「ついておいで」と一言。女学生はフラフラとついて行った。
近くの駐車場に停めてあったほろのついたトラックの荷台に乗るように指示した。
中にはすでに数人の女性が乗っている。
皆、ボーッとしていて、意識が無いように座っている。
でも目を見開いているから起きてはいるのだろう。
「10人か。今日はもうこれで十分かな」
女は自ら運転席に座ると、車にエンジンをかけて走り出す。
そして彼女たちはいずこへか去っていった。

次の日も、女子大生を、OLを、数十人単位でさらっていく。
そしてその次の日も。
そしてこの街は変な噂が立つようになってしまった。
さてこの女、実は目で見たものを石にしてしまう石化妖怪である。
メデューサ(Medusa)の末裔まつえいか親戚か。
本当の名前は別にあるのだろうが、誰もがメデューサと呼んでいる。
彼女は、アジト(宮殿)の内装が古くなったので、新しい物に変えたくなった。
そのためには・・・新しい材料が必要である。
そこで、この街に女性をさらいに来ているのである。
石にした女性を粉に砕いてセメントの代わりにしたり、
美しくきれいな女性は、そのまま石のオブジェにして飾ったりと。
ああ、男は素材が悪くて使えない。なにより気持ちが悪いのだろう。
え、なんでその場で、すぐ石にしないのかって?
運ぶのに重たい。騒ぎが大きくなる。正体がバレれば、用心して人が近づかなくなる。etc・・・

「さて誰かいないかな」
今日も人探し(人さらい)をしていると、向こうからスラリとした女が歩いて来る。
「あの女、少しいいな」
メデューサは、ススッと、前を塞ぐように出てきて、
「あの、ちょっとよろしいですか」
「え、何でしょうか」、
メデューサが、さらに近づこうとすると女は飛び下がった。
この女は碧であった。
(碧)「あなた妖怪なんでしょ。最近女性をよく攫っている」
「あっ」驚くメデューサに碧は飛び掛かっていった。
しかしメデューサも巧者である。
碧のパンチをスルリとかわしたが、いかにもさりげなく、目がバッチリと見える位置に顔を動かした。
そうとは気がつかない碧は、次のパンチを打とうとして、うっかり目を見てしまった。
(碧)「え、あ、ぁぁぁ・・・」
碧はおとなしくなった。ボーッと立っている。
(Me)「手こずらせやがって、ついておいで」
碧は「ハイ」と言ってメデューサの後ろを歩き出した。
メデューサは歩きながら、
(Me:この女、最初から殺気を放ってきたな。それに、あたしの正体を妖怪と知っていたな。いったい何者だ?)
と、思う間もなく、後ろの方から叫び声が。
(G)「碧、何やってんのよ!」
同時に光のムチが女の手首に巻き付いた。
(Me)「あ、おのれ!」
イエローが前に飛び出して、女の前に立ちふさがる。
グリーンは後ろに立って、退路を塞ぐようにする。
同時にグリーンは、木の葉の塊を碧にぶつけた。
と、彼女はつんのめって転んだ。
(碧)「痛ぁい。あれ、あたしはいったい?」
(G)「あんた、催眠術にかかっていたんだよ」
イエローはムチをひっぱり女が逃げないように足止めをする。
(G)「イエロー、目を見ちゃだめだよ」
この女は妖怪に間違いないが、どんな妖力を使うかわからない。
(Me)「えーい、こざかしい」
女が頭を振ると、イエロー目掛けて帽子が飛んできた。
あぶない、イエローはころがって避ける。
帽子はドカと言う音を出して、道路に転がっている。
すごい重量だ。
(Y)「なんていう馬鹿力だ。あ、いない!」
一瞬だが、帽子に気を取られたまさにその瞬間に逃げられてしまった。

夜になって、いつもの喫茶店にて。
(碧)「目を見たらさ、もう意識がなかったんだよ」
(夏美)「あんたらしくないな」
あやうく連れ去られるところだ。
(碧)「そのぉ・・・・ごめん」
夏美は「うーん」と唸っている。
「催眠術を得意とはしているようだけど、人を操って化かす種類の妖怪じゃないね」
他にもまだ能力を隠しているはずだ、と言っている。
ところで、碧からも情報があるようだ。
(碧)「それでね」
防犯ビデオに犯人の様子が映っていたという。
(碧)「ちょっと見てくれない」
女性がフラフラと帽子を被った女の後を黙ってついて行くところからだ。
女は自らトラックに乗りこんでいる。
(夏美)「やっぱり催眠術のようだね」
催眠術で女性を操ってさらっていく手口。
(美穂)「フーン。ずいぶん手慣れた様子だよね」
変な言い方だが、手際が非常にいい。無駄な動きがない。
また別の映像では、女性に当身を食らわせて、トラックに乗せている。
なんとグッタリした女性を片手で軽々と持ち上げている。
(美穂)「これは女装している男なのかな?」
相当な怪力の持ち主のようにも思える。
(碧)「でも、手合わせしてみた感触ではやっぱり女だよ」
(美穂)「力がすごそうだな。腕力ではかなわなそう」
3人はあきれたように見ている。

(美穂)「でもさ・・・」
これだけバッチリと、犯人の手掛かりや証拠が残っているのだ。
(美穂)「ここまでわかっているんなら逮捕は簡単でしょ」
(碧)「ところがさあ」
ここから先が問題なのだと、碧が言っている。
トラックは、やがて〇◇峠に向かった。  
そしてトンネルに入っていくのだが、不思議なことに、そこで・・・
(夏美)「そこで・・・どうなるのよ?」
トンネルの中に入ると消えてしまうんだと。
(美穂)「は?トンネルの中で消えるの。トラックが?」
消える。跡形もなく消えるそうだ。
(美穂)「そんなバカなことないでしょ」
本当のようだ。トンネルの反対側のカメラには、いくら待っても該当するトラックは出てこない。
後から入った車や観光バスが次々と出てくる映像が映っているのみ。
(夏美)「フーン、不思議な事もあるもんだね」
そういうわけで、そこから先は・・・警察ではどうしようもなくなってしまったのだ。
(夏美)「トンネルの中はよく調べたの?」
もちろん総動員をかけて調べたそうだ。
トンネルの中で本当に消えるんなら、やっぱり怪異の仕業だろう。
しかし逆に言うと、このトンネルを調べれば、すぐに犯人にたどりつけるのではないか、と、碧が言う。
美穂と夏美は、なるほどとうなずいて、
「わかった。それじゃ調べてみようか」




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