妄想別館 弐号棟


イエロー奮戦記 その4


次の日、3人はトンネルにやって来た。
「ここか・・・」
多数の車が行き交う、な〜んの変哲もないトンネルであった。
(B)「別にどうって言うほどのこともなさそうだけどね」
イエローもグリーンも、トンネルの奥を見ながらそう思った。
(G)「さてと、何が出てくるかな。それじゃ行ってみようか」
ゆっくりと中に入って行った。
しばらくは、何もなかったが、トンネルの中間ぐらいまで来ると、
(G)「あれ、ここ?」
グリーンが壁を手で撫ぜながら調べ始めた。やがて、
(G)「なるほど、ここから異空間につながっているよ。ちょっとさがって」
グリーンが数珠じゅずを持って手をかざす。
呪文を唱えると、霧のようなものが湧き出した。
霧が晴れると、壁に穴が空いていて、洞窟が向こうまで通っている。
明らかにトラックの通った跡がある。
(Y)「なるほど、普通の人間にはわからないわけだ」
イエローとブルーが顔を見合わせる。
(G)「それじゃあ先に進もうか」

洞窟はやがて行き止まりとなったが、壁には巨大な門がついていた。
(Y)「ここだな、妖怪がいるところは」
(B)「へぇ、まるで要塞の門だね」
彼女たちは、見上げるような立派な門の前に立っているが、
(B)「ねえ、どんな妖怪だかわかるの。闇雲に突っ込むんじゃ危険だよ」
(G)「それは正解だね。その通りなんだけれどもさ・・・ でもな・・・」
グリーンは腕を組んで考えている。
(G)「実際に会ってみないとね。何とも言えないな」
少し興味があるみたいだった。

グリーンが呪文を唱えると門は簡単に開いた。
通路となっていた洞窟は、もちろん暗く殺風景、薄気味悪かったが、門の中に入ると・・・
輝くような宮殿になっていた。
(Y)「うわーすごい」
光モノが好きな彼女は、思わず声を上げてしまう。
噴水のようなものもある。床は大理石のように輝いている。美しい石像もいくつか立っている。
(Y)「あー、なんなのここは!」
イエローはうっとりしている。
ゴージャスな神殿、あるいは宮殿とでもいえるような造り方だ。
(Me)「ようこそいらっしゃいました。スーパーガールさん」
(B)「あ!」
例の女がいつの間にか立っている。
よく見れば、なかなか品の良さそうな感じの女性ではある。
リボンがヒラヒラしているドレスハットをかぶり、地味なロングのドレスを着ている。
黒っぽいサングラスもしている。
(B)「あ、やっぱりあんたね。この間はよくもやってくれたわね」
(Me)「フフフ、これはどうも。できると思ったらスーパーガールだったのね」
(Y)「やっぱりあんたが昨今、巷を騒がしている誘拐犯人だったのね。証拠は挙がってるのよ」
あっさりと「その通りですけど、それがなにか?」
3人をバカにするような口調で答えてくる。
(G)「困るのよ。退治させてもらうわよ」
(Me)「ホホホ。ご冗談ですかそれは。あなたたちに私が倒せるのかしら?」
この時、グリーンは異変に気がついた。周りの様子が変だ。
目の前の女妖怪も、なにか次元の違う術を持っているようだ。
(G)「イエロー、ブルー、ここは一旦引こう」
第六感というか、この中にはいてはいけないような、非常にまずい感じがする。
(Y)「え?」
(B)「どうしてよ?」
イエローとブルーは納得がいかない顔をしている。
まだ二言、三言しか話をしていないのに、もう退却するのか、と?
女はクスクス笑い出した。
(Me)「あなたがやり手の妖怪ハンターさんね」
(G)「あんたいったい何者?」
女は答えない。
グリーンは不安が確信に変わった。危険だ。今すぐ逃げないと大変なことになる。
しかし、2人は女の挑発に乗りかかっている。
(Y)「あなた、たいそう自信がありそうね」
(Me)「いえいえ自信なんてないわ。あなたたちを倒すくらいの力しか持ち合わせていないのよ。あたしは」
眠そうな顔になって言う。
あきれたようにブルーが、
「相当な自信がお有りの様子ね。少しお手合わせしてもらえないかしら?」
メデューサはいかにも驚いたような顔をして、
(Me)「まあ!それは非常にいい提案よね。あなたたちも、ただ逃げ帰るだけじゃ格好悪いものね」
完全に挑発している。
なにか罠がしかけてあるはずだが、ブルーは意に介さない。
(B)「少しだけなんて言わずにさ・・・」
もう女に向かい合っている。
(Me)「まあ、やっぱり弱いくせに向かってくるのね。そういうの何て言うか知ってる?
蟷螂とうろうの斧。言いすぎかしら。ホッホッホ!」
イエローも腹が立ったようだ。顔つきが変わっている。
(G)「え、えーっと・・・ちょっとダメだよぉ!」
しかし、もうイエローもグリーンの声が耳に入らないのだろう。
女を挟むようにブルーの反対側に立って女をけん制している。
(G)「ちょっと待ってよ!挑発に乗っちゃダメだ!」

女が手を大きく振って何か仕掛けてきた。
3人は飛び下がって、攻撃に備えるが・・・
(G)「あれ?あっ!」
グリーンは、この時始めて、入口が閉じかかっていることに気がついた。
扉は開けっ放しのままだが、明らかに、目に見えない妖力の蓋で閉まりかかっている。
蓋が完全に閉まってしまえば、宮殿の外には出られなくなる。
いや、それだけではない。
この異空間自体もどんどん狭まってきている。
3人を飲み込もうとしているのだ。
異空間が、どんな呪術を持っているのかは、まったくわからない。
しかし触れれば、女の妖力の思う通りになってしまうだろう。
グリーンが大声で叫んだ。
(G)「これはまずいよ!ここから出られなくなる!」
さらに、両の手を振って騒ぎ出した。
(G)「罠だよ。早く逃げないと。早く早くぅ!」
(Me)「ほお、さすがだね。仕掛けに気がつくとは」
振り返った2人は、グリーンの様子が尋常じゃないのを見て、そこまで言うならと、
(Y)「ブルー、一旦引こう」
ブルーもすぐに「わかった」
と、返事はしたのだが、

(Me)「おっと、そう簡単には逃がさないわよ」
彼女は砂のような物をブルー目掛けて投げつけた。
ブルーは、バリアをさっと張って、完全に受けきった。はずだったが・・・
「あー!」なんと、水のバリアが石になっている。
(B)「ウソ!」
それだけではない。
バリアを張っていた彼女の手首もすでに石化している。
石化は上腕、二の腕とどんどん進んでくる。
(B)「あーっ!やだやだやだ!何とかしてぇ。」
バリアを張った手、いやバリアにくっついていた手は石になってしまってもう動かない。
足をバタバタさせているが、石化は止まらない。
徐々に肩を侵食し、上は首、下は腹に向かって石化は進む。
履いていたブーツもすでに石になっている。
(B)「いやっ!、なにこれ!」
彼女はもう逃げることができなくなった。
バリアを張った格好のまま次第に石化していき、
(B)「いやー!助けてぇ!」
と叫んだたまま、完全な石の像になってしまった。
イエローとグリーンは呆然と、この有様を見ている。

ブルーは口をあけたまま完全な石像になってしまった。
なんとベネチアンマスクまでが石に!
この時になって、グリーンもイエローもこの妖怪の正体がわかった。
メデューサは石像に近寄ってきて、顔をなぜている。
(Me)「ホホ、立派な石像になったじゃない。ブルーさんは。このまま飾ってあげてもいいんだけどね」
イエローとグリーンは言葉が出ない。
(Me)「あんたたちは『あたしに見られなければ石にはならない』とか、思っているんじゃないでしょね?」
ずっと、そう言われてきたのだもの・・・
残念ながら違うようだ。
(Me)「この宮殿の中ではね・・・」特別な呪術を施している、と、言っている。
(Me)「あたしの妖力を増幅できる仕様になっているの。だから非常に危険なのよ。わかった?」
(Y G)「・・・」
(Me)「別にあたしが、直接目で見なくてもね、ほらこの女のバリアのように、石化砂に触れるだけでも・・・」
メデューサはグリーンに向き直るが、この瞬間を逃さず、グリーンは木の葉の手裏剣を撃った・・・が・・・
この宮殿の中では、石になるのは人間だけではないらしい。
投げつけた木の葉は全部、石になって落ちてしまった。
(Me)「無駄ヨ無駄」
もはや完全に袋のネズミだ。

(G)「まずいイエロー、メデューサだ。何の準備もない」
(Y)「ど、どうすればいいの。ブ、ブルーは!」
(G)「今はどうしようもないよ。とにかくここから逃げなきゃ!」
イエローはブルーを見る。
ブルーを置いていくのはつらいところだが、グリーンの言うとおりだろう。
ここは身一つで逃げるしかない。
グリーンは「とにかく一旦外へ」と、言ったが、
(G)「あー!足が!」
右足が石化している。石化は止まらず、どんどん体の上の方を侵食していく。
(G)「イエロー、外に逃げて、このままじゃみんなやられる」
(Y)「そ、そんなこと言ったって、あんたたちを置いていけないよ」
(Me)「何を言ってる。1人も逃がさないよ」
(G)「目では見えないけれど、もう、宮殿の入口は呪術で閉まりかかっているんだ!」
閉まったら、出る方法はない。メデューサを倒さない限りは。
イエローもグリーンを抱えて逃げるのも無理だ。
(G)「あんた1人なら出られる、さあ、早く!」
イエローは唇をかむ。体が光り出した。
「必ず助けに来るから」と言って。
(Me)「あ、お待ち、逃がさないよ」
砂をぶつけたが、それよりも一瞬早く彼女は宮殿の外へ出た。
高速移動の術だ。
(Me)「まあ、逃げ足のはやいこと」

メデューサはグリーンに近づいて行く。
(Me)「お前は、許さないよ。覚悟をし!」
(G)「どうしようっていうのよ」
グリーンは腰まで石になっている。
(Me)「さあどうしようかな。残酷な方法をゆっくり考えてあげる」
サングラスを取った。
動けないグリーンは目を逸らすことができない。そしてメデューサの目を見たグリーンは、
「あ!」と、いう間もなく石像になってしまった。




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