妄想別館 弐号棟


イエロー奮戦記 その6


メデューサのアジトを脱出してからすでに3日。
美穂は部屋床の上にひっくり返っていた。
気分は重たく沈んでいる。同時にかなり焦ってもいる。
屈辱だ。手も足も出ずにあしらわれて、逃げ出すことになってしまった。
碧と夏美も置き去りにしてきてしまった。
実際のところは、あの状況で2人を助け出すことは不可能だったが、彼女はそうは思っていない。
「あたしのミスだ」
虚ろな目を真っ赤にしながら必死で考えている。
「2人を助け出さねば。でもどうやって・・・」
なによりも最大の懸念ごとは・・・
「いったいどうやったら、メデューサを倒すことができるのだろうか?」
昔から、石化妖怪に『鏡』と言われているけれど・・・
そんなものを背負っていっても、壊されるだけだろう。
メデューサは強敵だ。
「これぞ!」といえる必勝方法を考えるしかないが、妙案が浮かばない。

この間からやっている特訓で、ブルーとグリーンの術を考えているうちに、
「そうだ!ブルーのバリアだ!」
光をバリアにすれば鏡のようになるのではないか?
これなら即効で使えそうだ。
少し練習をしてみると、使えないことはないけれど・・・
「大丈夫かな?」
砂を浴びてバリアが石になってしまえば、ブルーの二の舞だ。
「んー、でもなあ・・・」
水のバリアは石になってしまったが、光は物質とは少し違う。
「石にはならないと思うんだけどな・・・光も石になるのかな?」
自信がない。やはり、もう一工夫、奥の手が必要だろう。

美穂は腕を組んで頭をひねる。
作戦を考える。考えに考えている。
「これではだめだ!それじゃこうすれば・・・あ、これもだめか」
「もし、こうなった場合は・・・だめだ、逃げられない!」
机を『バン!』と、たたいた。
「ああん!もう」
勝つ手が見つからない。どうしても、あと一歩うまくいかない。
相手の結界の中で戦うのだもの。こっちが圧倒的に不利だ。
そこに活路を見出すのは・・・とても難しい。
美穂は机に突っ伏した。
「負ける・・・どうやっても」
返り討ちの公算の方が大きい。
しかし逃げるわけにはいかないし、じっくり策を練っている時間もあまりない。
時が経てば経つほど不利になるに決まっている。
美穂は「じっと待ってはいられないわ!」、決戦を明後日と決めている。
負けるかもしれないが、敵地にのりこんでいくつもりだ。
「だめだ。考え方を変えよう」
美穂は捨て身の作戦を考え始めた。
「あたしが倒されても、あの2人が生き返るならば・・・」
先の未来はある。それはそれで『御の字』であろう。
「せめて相打ちにでもできればなぁ」

再び決戦だ。
美穂はトンネルのところまで来ると、イエローに変身した。
出で立ちはというと・・・
ベネチアンマスクの目のところに、真黒(実際は濃紺のさらに濃い色)のレンズが入れてある。
特殊な変更レンズである。
『メデューサを見ると恐怖で石になってしまう』と、あるが、今イエローは可視光線は見えていない。
「直接メデューサを見ないようにしないと」
光の使い手である彼女は、赤外線や紫外線で状況を見ることにした。
「これならメデューサの実像姿はまったく見えない」
でもしかし・・・
怪光線を直接浴びてしまえば・・・
妖術の砂や石を受けてしまえば・・・
結界が閉じてしまえば・・・
「ああ、もうやめた!」
悪いことは考えるとキリがない!

「どうやったら中に入れるんだろう?」
この間は夏美が呪文で異界を開いたのだが、彼女では同じことはできない。
しかし・・・案ずるには及ばなかった。
宮殿までの洞窟がすでに開いているではないか。
これはつまり、メデューサが「さあ、ここまでやって来い!」と言っている意味だ。
彼女は宮殿、アジトの中で待ち構えている。手ぐすねを引いて待っている!
イエローは深呼吸をしてから、一気に突入した。宮殿の中まで一直線だ。
決戦の覚悟で、宮殿の中に飛び込んで行った。

(Me)「やっぱり来たな」
これもサングラスをかけたメデューサがニヤニヤと立っている。
一息でイエローを石にして片付けるつもりではないらしい。
いたぶって、いたぶって、その挙句に彼女を石にして・・・残忍な意図が見え見えだ。
(Me)「仲間想いのことだな。助けに来たのかな?」
(Y)「そうよ。それとあんたを倒すためにね」
(Me)「いい度胸だな。褒めてやる」
(Y)「2人と、さらった人たちを返しなさいよ」
(Me)「あたしを倒せば元に戻るんじゃないのかな。その前にほら」
突然ボールのようなものが、左右から襲い掛かってきた。
イエローはそれを見て愕然がくぜんとする。
(Y)「あ、あんたたちは・・・」
ほとんど鬼のような顔になっているが、まちがいなく碧と夏美だ。
(Y)「碧と夏美なの!なんてひどいことをするのよ、元に戻せ!」
怒り心頭である。体が光りはじめた。
(Me)「こいつらは、もうあたしのペットだよ。そら、その女をかみ砕いておしまい」
首たちは、イエローが誰かわからないようだ。
口を大きく開けると長い牙が生えている。
恐ろしい形相でイエローに噛みついてきた。
「あたしだよ。美穂だよ」「ちょっと待って」「やめてったら!」
飛び掛かってくるのを、何回も何回も避けていたがきりがない。
(Y)「仕方がない!ごめん。勘弁してね!」
手首を光らせて碧の首を打ち落とした。
「ゴツン」と、首は地面の上を転がっている。
夏美も後ろから噛みつこうとしている。
(Y)「夏美もごめん」
拳で殴りつけて打ち落とした。
「ギャン」と鳴いて、夏美の首は動かなくなった。
碧は再び噛みついてきたが、今度は髪の毛をつかんで、地面に打ち付けた。
「グエ」と、声を出して気を失ったようだ。
(Y)「卑怯だぞ、自分でかかって来い!」
(Me)「生首はまだ戦闘経験が足りないようね。もう少し実戦訓練しないといけないな」
メデューサは平静を保っているようだが、実際はかなりイライラしている。

「それじゃあたしが相手になってやる」と言って、石礫いしつぶてを投げてきた。
当たれば石になってしまうのだろう、たぶん。
イエローはスッと消えて、全然違う所に立っている。
同時に強烈な電撃を放った。
洞窟内がフレッシュを焚いたように光る。まるで横向きの雷のように放電が起きた。
命中すればメデューサに大きなダメージを与えられるが・・・
(Me)「おおっと、危ないな!」
間一髪でかわされてしまった。
スピードではイエローに分がある。
(Me)「やはりね。速さではかなわないな。でもさ、・・」
メヂューサは呪術結界を徐々に狭めているはずだ。サングラスも外した。
(Me)「お前は、もう私と目が合っても、砂がかかっても石になるよ」
メデューサは手を振り上げて、宮殿の中に砂をまき散らした。
(Me)「さあ、どうする、逃げ道はないぞ」
(Y)「何を言っている。勝負は始まったばかりじゃないか!」
イエローが腕を振って光のナイフを放った瞬間、
(Y)「あ、しまった!」
砂が触れてイエローの下半身は一瞬で石に!
(Me)「ははあ、もう動けまい」
(Y)「あーそんなぁ!」という悲鳴を残して、彼女は石像になってしまった。
(Me)「なんだ、あっけないな」




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