妄想別館 弐号棟


三勇士の最期 その2


2人と別れた美穂は、ビル街の大通りを歩いていく。
「もうすぐクリスマスか」
キラキラと光るイルミネーションが通りを華やかにしている。
行き交う人たちも、心なしかウキウキしている。
「こういうにぎやかな情景はいいよねぇ」
並んでいるお店を、覗き込んでみるだけでも楽しい。
光のイエローはこのような所が好きである。
フンフンと歩いて行くうちに、何気なく見やった通りの向こう側。
彼女とは反対の方向に向かって歩いて行く男、どこかで見たことがある。
「おや? あ、あれは、ツバーンだ!」
うつむき加減で顔を伏せるようにしているが間違いない。
なにげなく歩いているようだが、見るものが見れば、かなり用心深く辺りを警戒している様子がわかる。
大通りの向こう側を、彼女が今来た方向に向かって遠ざかっていく。
美穂も何気ないふりを装いつつ、Uターンすると後を追っていった。
道路を渡り、彼の後ろを距離をとりながらピタリとついていく。
やがて彼は大きなビルの中に入っていった。
外観は、いかにもありふれた建物である。
ビルの前を大勢が行き交っているし、なにか配っている背広姿の青年も立っている。
入口の横で、たむろいながら、スマホでしゃべっている女子高生たちまでいる。
なんの変哲もないビルのように見える。
追いかけてきた美穂はビルの入口の前で立ち止まった。
「ここは・・・?」
おそらく彼、あるいはピーイーに関わりのあるビル、あるいはアジトに違いない。
でも今は、それを考えるよりも彼を追う方が先だ。

美穂は躊躇ちゅうちょせずに、ビルの中に入っていった。
「あ、いない!」
広いエレベーターロビーには誰もいなかった。
「どこに行った。エレベーターに乗ったのか?」
小走りでエレベーターの方に向かいかけたのだが、
「ん? あーつ!」
突然、空間がゆがみ。体が下に落ち始めた。
あるはずの床が一瞬で消えた。いや床が抜けたのではない。
真っ暗闇の空間に変わってしまい、彼女は下に落ちていく。
まわりも暗闇が広大に広がっている。いやこれはどうみても異世界だろう。
「うわーーー!」

ハッと気がつくと、広々とした場所にいる。
(美穂)「ここはいったいどこだろう?」
(Th)「ようこそいらっしゃいましたね」
(美穂)「あ、ツバーン。それにピーイーも」
やはり彼らのアジトだったか。
美穂は反射的に起き上がり、飛び下がって距離をとる。
すぐにイエローに変身して構えた。
(Y)「あんたたち、ここで会ったが百年目ね」
2人は「ああ、そうだな」と、まるで他人事のよう。

「ここはですね」ツバーンがゆっくりと説明を始めた。
(Th)「私が特別に作った異空間なんですよ」
特別な結界が張ってあるという。
(Th)「ブルーさんとグリーンさんへの連絡はとれなくなっているんですよ。つまり救援は来ません」
イエローは構え直す。
(Y)「だから何なのよ。必要ないわ。あたし1人で十分ヨ」
(Th)「これはこれは、勇ましいことで」
たちまち手下たちが、湧き出るように躍り出てきた。
(Y)「なるほどね。わかった相手になるよ。さあ来い!」
イエローは、左右からかかってきた2人を、かわすようにして殴りつけた。
うしろから1人が覆いかぶさってきた。
素早く足を払い、ひっくり返った胸のあたりに肘打ちを当てる。
「グワッ」と、うめいてのびてしまった。
右から左から、そして前後から・・・
次から次へと男たちがかかってくるが、長い手足で払うようにかわしていく。
彼女のボディには全く触れることができない。
(Pe)「なかなかやるじゃないかよ」
(Th)「そうですね」
ピーイーとツバーンは世間話でもするようにノホホンと見ている。
我関せずとばかりの態度で、まったくの余裕だ。
イエローは少しムッとする。彼らをにらみつけて、
(Y)「こいつらが終わったら、あんたたちだよ。首を洗って待ってなさいよ!」
(Th)「はいはい、わかってますよ」
(Y)「今日こそは、あんたたちを捕まえてやるからね」
と、イエローは意気込んでいる。自然と力が入るようだ。
男がまた1人投げ飛ばされる。次の者はハイキックで吹っ飛ばされる。
十数人はいるであろう手下たち、まったく問題にならずにのばされていく。
イエローはあきれたように、
(Y)「言っちゃなんだけど、あんたたち弱いね」
(手下)「なんだとぉ」
顔を真っ赤にして必死になってかかっていくが、
「ほら、どうしたしっかりかかって来い」
「わきが甘いよ」
「どうした、打ちが弱いよ。全力で打っておいで」
こうなることを予想はしていたピーイーではあるが、さすがにイライラしてきたようだ。
舌打ちをしている。
(Pe)「たしかに弱いな。いや弱すぎるな」
普段から精鋭を自称している、ピーイー自慢の部下たちのはずなのだが・・・
しかもほとんどが、武道の有段者である。
さらには格闘術の訓練を受けて、常に鍛えているはずなのだが、全然勝負になっていない。
それだけイエローが強いってことよ!

(Y)「そらそら、どうしたのよ」
とうとう1人が銃を取り出す。それにつられて次々に銃やナイフを取り出して構える。
でも心配は無用である。彼女は手をパンパンたたきながら余裕で言った。
(Y)「わからないかな。あたしには効かないよ。拳銃なんかは」
それでも一応・・・撃つ。
イエローはわざと、しかも、おもしろそうにボディで受けていたが、
そのうち、一発が胸、別の一発が顔に当たった。
(Y)「あ、女性の顔になにすんのよ!それにいやらしいな!」
イエローは怒って蹴り飛ばした。もう1人もまわし蹴りで。
(Y)「撃ち方にもマナーっていうものがあるでしょ!」
拳銃のダメージなんてまったくなかった。
残っている手下ども、3人になり、2人になった。
そしてとうとう、最後の1人が吹っ飛ばされて動かなくなった。
これだけ一方的だとスカッとするものだ。
イエローは腰に手をあてて、うめきながら転がっている手下たちを見下ろしている。
フフンと口を鳴らし、
(Y)「何よ、弱いったらないわね。鍛え直して出直しておいで」
(手下)「う、うるさい!」
(Y)「何を吠えてんのよ。あんたたち、本当におチ〇ンチンついてんの」
ホホホ、と笑うと、今度はピーイーたちに向かい合う。
(Y)「あんたたちはどうかな?」
ピーイーは目を輝かせている。
(Pe)「ほしい・・・」
(Y)「は?」
(Pe)「やっぱりほしいな」
(Y)「ほしい? 何を?」
(Pe)「お前さんの体だよ」
(Y)「はあ?」
ピーイーはこの間の、エロ芸術家の事件で、実は美穂を抱いて、いやいや一方的に遊んだ経緯がある。
実は、そのことを美穂は知らない。
が、ピーイーはその時にどうしても美穂、いや彼女の体が欲しくなったのだ。
それ以来、ずっと美穂の体を手に入れることを考えていた。
なんとかそのままの姿で手に入らないかと。
でももちろん、彼女が「はい、いいですよ。差し上げます」などと言うわけがない。
美穂、これにはさすがに怒り「冗談は寝て言え」と、どなる!




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