妄想別館 弐号棟


三勇士の最期 その5


昼休みの公園。まったりとした時間を皆がそれぞれ楽しんでいる。
しかし・・・碧はベンチに1人腰かけて、うつ向いていた。
明るくのどかな風景とは裏腹に、彼女の心は暗い。
「美穂はどこに行ってしまったんだ」
彼女が行方不明になってすでに2か月。
帰宅途中で襲われたと思われるが、緊急の連絡はもちろん、何の痕跡もなく消えてしまった。
「フウ」とため息をついて、しばらくぼんやりしていたが、やっぱりこんなのは彼女の性に合わない。
彼女はほおをパチンとたたいて気を取り直した。
「こんな風にしょげていてはだめだ」
早く犯人を捕まえなければ。それには動いて動いて動き回らねば!
自分自身に気合を入れるように立ち上がり署に戻ることにした。
その時にチラリと見えた、木立の中を歩いて行く男。
「おや? 今のはツバーンでは!」
碧は走り出し、男のいたあたりまで来たが誰もいない。
「どこに行った? あれ? どうしたんだ。うわぁ!」
突然、周りの木々がざわつき、足元に穴が空いたようになって・・・

「痛たたた。ここはいったいどこだ?」
ホテルのような建物が立っていて、公園のような大広場がある。
よく見ると、どこか見覚えがある。
「いつか来たことがあるよね。この場所には・・・」
少し歩いて行くと、庭園の散策路、大きな池、そして・・・青年裸像の噴水。
思い出して「あっ」と声を上げた。
仁王立ちで腰に手を当てて、性器を前に突き出し、そこから水を噴きだしている。
(碧)「そうだ、鬼を退治した時に泊まったホテル」(鬼の復活話の巻を参照してくだされ)
(Th)「その通りですよ」
(碧)「ツバーン! やっぱりあんただったのね」
碧は異空間移動の術で、ここまで運ばれてきたのだ。
(Th)「ここはミスターピーイーの所有するホテル。実は秘密のアジトなんですよ」
(碧)「何ですってぇ!」
(Th)「まあ、秘密中の秘密なんですがね」
碧はブルーに変身した。
我を忘れかけていたが、深呼吸ひとつで落ち着いた。
すぐに攻撃を仕掛けられる態勢で構えながら、
(B)「美穂はどうしたの?」
(Th)「やっぱり彼女のことが心配ですかね?」
(B)「当たり前でしょ。彼女をどこにやったのよ」
(Th)「それを知る必要はないでしょ。あなたはもうすぐこの世から消えるんだから」
有名ホテルといっても敵のエリア内だ。
どんな手を仕掛けてくるやら?
(B)「まさかまた、鬼を呼び出すっていうの」
(Th)「いやいや、もうしません。手間がかかるだけだから。私だけで十分」
(B)「言いなさいよ! 美穂はどこ?」
(Th)「さあて、どこでしょうね」
こんな問答をしていても無駄だ。聞きたいことは力づくで聞きだすしかないようだ。

ブルーは手を振りかざした。たちまち噴水池の水が波立つ。
バシャバシャと水面が涌きあがり、水のボールになってツバーンに向かって飛んでいく。
早いスピードと威力がある。当たったらただでは済まないだろう。
でも「おっとっと」彼はスイスイと避けていく。
ブルーは切れ目なく、次々と水玉を投げつけるが、ギリギリのところで彼はかわす。
(B)「逃げられると思っているの」
しかし彼は本気で逃げる気配がない。
こんなところに彼女を誘い込んだのは地の利を得るためだろう。
しかし戦いを臨んできて、攻撃を仕掛けてくるでもなし。
ブルーを挑発しているのは確かだが、いったいなにをたくらんでいるのだろうか。
変だとは思うが、とにかくブルーは彼を捕まえることしか頭にない。
(B)「おや、なんだろう、あれは?」
ツバーンはいつの間にか、ホワイトボードのような板を持って何か唱え始めた。
呪具だろうか?よくわからないが危険なものに違いない。
それならば、先に破壊すべし。
ジェットカッターに切り替えて切りつけるが、
(Th)「おっと、私を殺したら、ミスイエローの行方は、わからなくなりますよ」
「ウッ」とうめいて、ブルーは動きが止まった。

(Pe)「そうだぞ、ブルー、いや、湯村 碧」
振り返ると、ピーイーがいつの間にか立っている。
(B)「あ、ピーイーか・・・ あー!それは美穂のベネチアンマスク」
(Pe)「そうだ。イエローのだよ」
(B)「イエローを、美穂をどこにやったの!」
ブルーは絶叫して飛び掛かろうとしたが、ピーイーは手で制し、
(Pe)「まあ騒ぐな。返してやる。そうらよ」
なんとマスクを放ってきたのだ。
敵らしくない振る舞いに、ブルーは戸惑ったが、とにかく拾って手に取ってみる。
(Pe)「本物かどうか、確かめてみ」
さらに、あるまじき言葉を吐いているが、ゆっくり考えている余裕はない。
ブルーは丁寧に撫でまわしていたが、
(B)「本物だ。間違いなく美穂のものだ・・・」
(Pe)「ほれ、ついでに呪文も唱えてみろよ」
ピーイーとツバーンはニヤニヤしている。
(B)「どういうことだ、何を考えている」
ベネチアンマスクの能力が正常なら、美穂は、イエローはただちにこの場に現れるはずだ。
だが、あいつらの自信はいったい何なんだろう?
ブルーは不安を覚えつつも、美穂のベネチアンマスクを持って「変身」と、唱えた。
何も起こらない。何度も呪文を唱えるのだが・・・
(B)「これはどういうことなの!」
やはりやつらの自信はこれだった。
美穂が変身できない状態にして、わざわざマスクをブルーに渡してきたのだ。
ブルーはピーイーたちに向かって「美穂をどこにやった」と叫ぶが、彼は一転して有無を言わせない口ぶりに変わる。
(Pe)「俺たちの言う通りにしてもらおう。いやなら、俺たちはこの場から帰らせてもらうぜ。今すぐにだ!」
ブルーは彼らのセリフに黙らされてしまった。
(B:美穂の手掛かりがなくなる・・・ どうすればいいんだろう?)
考えが及ばずに、しばし沈黙していると、
(Pe)「そうか、それじゃな」
2人は本当に歩き出し去ろうとしている。
ハッとして、
(B)「待って、言う通りにする。だから美穂の居場所を・・・」
(Pe)「俺たちの言う通りにしてからだ。いいか、お前に選択権はないんだよ」
(B)「まさか、生きてるんでしょうね!」
(Pe)「まだ死んではいないな。誓ってウソではない」
ツバーンもうなづいている。
悪人の言葉だ。信憑性しんぴょうせいがあるかどうかはわからない。
でもわらにもすがりたいこの状況では、こんなセリフでも少しはホッとできる。
(B)「生きてる可能性があるのならば・・・」
碧のブルーでは、美穂がベネチアンマスクで変身できない理由はわからない。
でも夏美ならなんとかできるかもしれない。
美穂が生きているのなら、少なからず助け出す可能性はある。
ブルーはうなだれたが、すぐに顔を上げて、
(B)「どうすればいいの」
(Pe)「まずその石像を破壊しろ」

卑猥ひわいな青年裸像は、水鉄砲の術で吹き飛ばされて跡形もなくなった。
ブルーは、なんで彼らがそんなことをさせるのかわからなかった。
でもしかし・・・石像があった台座の上で、ブルーは足を開かされて立っている。
(Pe)「ひざは少し曲げて、そうだな、腰も少し落とせよ」
(B)「何なのよこの格好は。あたしをどうするつもりなのよ」
(Pe)「黙って言うとおりにしろ。そして腰に手を当てろ」
彼女は舌打ちをして、言われたとおりの恰好になった。
(B)「これでいいの?」
(Pe)「そうだな。もう少し足を開け。そして大事な所を前に突き出すんだよ」
ブルーは従わざるを得ない。
怒りを鎮めるため深呼吸を一つしてから、足を大きく開き、ボトムのファスナー部分を突き出すようにした。
(Pe)「そうだもっとだ。そんな感じかな」
そして、トドメともいうべき、すごいことを言った。
(Pe)「よしよし、それで立ちションをする時みたいな格好になったな」
(B)「た、立ちションて! レディに向かってなんてこと言うのよ」
(Pe)「1回ぐらいやったことあるだろ。お前さんなら」
(B)「あたしは下ネタが大嫌いなんだ!下品な事と下品な連中もね!
あんたたち、いったい何を考えてい・・・」
ツバーンが遮って「さからわない、さからわない。ねっ」
ブルーは「チェッ」と舌打ちで答えた。




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