三勇士の最期 その9
ツバーンはいつの間にか後に立っている。あざ笑うように、
(Th)「あなたらしくないですね。変わり身の術に簡単に引っかかるなんて」
グリーンはあわててムチを振るが、今度は簡単に避けられてしまった。
(Th)「まあ、少し落ち着いて。あれを見てくださいよ」
いつの間にか、封魔石の横に裸のマネキンが柱に
括り付けられている。
(G)「なんなんだ、あれは? マネキン?」
「なんであんなものが」と、思う間もなく、その下に落ちている物を見て驚いた。
(G)「あっ、ベネチアンマスク!」
(Th)「どうぞ、ご自分で手に取ってみてください」
言われるまでもない。グリーンは走り寄ってベネチアンマスクを
掴んで見てみると・・・
本物であった。間違いなくイエローとブルーのマスクであった。
(Th)「さあ、呪文を唱えてみたらどうです」
なんだ? どういうことだ? あいつのセリフは?
グリーンはキッとなってツバーンを睨むが、とにかくも、
「美穂、碧、戻って、変身と唱えた」・・・のだが、
(G)「へ、変身しない!」
叫ぶようにして、何度も「変身」「変身」と唱えるが、
(G)「ダメだ。どういうことなのこれは? ・・・あ、そうなのか!」
ツバーンはいつの間にか、ボードを抱えるようにして持っている。
さすが妖術使いのグリーンは、この現象がわかったようだ。
(G)「その変な呪具の方が、ベネチアンマスクの能力より強いのか」
ツバーンが持っているボードは強力な呪具だと気がついた。
(G)「ベネチアンマスクに
勝るなんて、並の呪具じゃないわ! いったい何なのよ、そのボードは」
(Th)「ご名答。さすがさすが、その通りです。よくわかりましたね、ミスグリーン。でもこれが何かは教えません」
人を食ったような言い回し。グリーンを挑発するのも策のうちの1つだ。
(G)「何をぉ!」
グリーンはいよいよ怒りと焦りで我を忘れるが、ツバーンの思う壺である。
ツバーンは大袈裟に驚いたようにうなずくと、鬼を指した。
(Th)「1つお聞きしますよ。あの鬼を外に出すことはできると思いますか」
突然変な質問をしてくるが、怒りの彼女は彼の意図を考えられなかった。
封魔石を見るが、グリーンもその水晶のような石の性質を知っている。
あの中から外に出ることは絶対にできないはずだ。
(G)「無理に決まってるでしょ」
(Th)「本当に無理ですかね?」
ツバーンの笑い顔に、グリーンは少し不安になった。
(G)「まさか鬼を出せるっていうの。いや絶対に無理だね。あれは最強の封印が施されているはずだよ」
(Th)「はあ、さすが博識のミスグリーンですね。よくご存じで。その通りですよ。
でも・・・本当に無理・・・なのかな?」
(G)「くどいな!それに鬼を出してもなんの力もないでしょ。もう死んでいるんだから!」
グリーンが手を挙げると、洞窟の中の植物がザワザワと伸びて彼を取り巻くように動きだした。
(G)「もう逃げられないでしょ。最後
通牒よ。さあ、美穂と碧はいったいどうしたの。答えなさいよ」
いよいよ殺気が上がり、本気で呪符をぶつけてくる気配だ。
だがツバーンは、全く動じずにゆっくりと口を開いた。
(Th)「それはこのボードに書いてある通り」
(G)「ん? ボード? ボードが何だっていうの? あ!」
ボードには何か書かれている。いやそれよりも妖気が噴き出し始めている。
ツバーンはソッと呪文を唱え始めた。
(G)「あ、何をやっている!」
護符を投げつけようとしたが、一瞬の差でツバーンの方が呪文を唱え終えていた。
(G)「うわぁぁっ!」
ベネチアンマスクがはじけ飛んで、グリーンは夏美の姿に戻ってしまった。
(夏美)「痛たたた!な、なにこれは、あ、変身が解けてる!」
さらに、夏美はマネキンが
磔になっていた柱に・・・同じように磔にされていた。
まるでマネキンと夏美を取り替えたように、全く同じ格好の磔に。
胸を大きく反らせて、手足を水平近くまで開いて。見事なくらいにピーンと伸び切っている。
それに「体が、体が全然動かない!」
手足を動かそうとするが、知覚がまったくなくなったように動かせないのだ。
ベネチアンマスクはすぐ足元に落ちているが、拾うことができない。
なんで? どうして? さっぱりわからない?
(夏美)「これはいったい・・・ どうしてこうなったんだ? あたしに何をした!」
せいぜい、そう言うのがやっとだ。
(Th)「スーパーガールの中でも、特にあなたには恨みがあります。
これから同朋たちの敵を取らさせてもらいますよ」
妖怪を専門に倒してきた夏美には、美穂や碧以上に恨みがあるのだろう。
ツバーンは笑っている、しかし目には殺気が
籠っている。
(夏美)「ど、どうしようっていうのよ!」
フッと彼が手を振ると、ボードには次の条件が追加されていた。
☆☆☆― 条件:夏美は一糸まとわずの全裸になる ―☆☆☆
呪文を唱えると夏美は一瞬でその通りになってしまった!
夏美は何が起きたか、すぐにはわからなかったが、動く頭を下に向けると、
(夏美)「え、何? うわっ裸に! どうしてこうなったの?!」
(Th)「さあ、いよいよ本番と行きますかね」
再び手をスーッと振ると、次の替文がかかれていた。
☆☆☆ この状態の夏美を 封魔石の中の鬼と 交換 ―☆☆☆
(夏美:あたしはいったい・・・)
気がつくと目の前にはガラスのようなものがある。
(ここは、いったい・・・ う、動かない。 あ、あたしは今どうなっているんだろ)
向こう側には、2人の男が、こっちを見ながら話をしている。
(あ、いつの間にかピーイーもいる!)
「早くなんとかしないと」と、気は焦るのだが、体はピクリともしない。
さっきまでと違って、動けないというよりも、時間が止まっているような感じだ。
息も止まっているようだし、脈も打っていないようだ。
でも考えることができるので、生きてはいるのだろう。
(まるで何かに封印されて・・・まさか!)
このガラスのようなもの? 時間が止まったような奇妙な現象?
(もしかしたらあたしは・・・)
封魔石の中に閉じ込められているのではないか?
(で、でも、いったいどうやって?)
『交換の板』の強力な呪術によって、夏美は水晶の中に封印されてしまった。
正確には、封印されていた鬼と交換されたのだ。
(Pe)「おお、素晴らしい出来上がりじゃないかよ。いやいやこれはすごいな」
夏美は人間なのに、封魔石の護符力でピクリとも動くことができなくなってしまった。
目をパッチリと見開き、驚いたような顔で2人を見つめているが、瞬きもしなければ、眼球すらも動かない。
まさに封魔石に閉じ込められたオブジェだ。
手と足を限界まで開いて、大事な所も丸見えだ。
ツバーンが前に言っていたが、まさにこういうのがピーイーの好みである。
(Th)「お気に召しましたかな。でもまだこれからなんですよ。私たちの復讐は」
髪の毛一本すら動かせない彼女ではあるが考えることはできる。
(ツバーンが持っている、あのボードを壊しさえすれば・・・)
それは正解である。ただし壊すことができればの話ではあるが。
夏美は植物の術でボードを破壊しようとする。
洞窟内にも草が生えていたし、さっきは術の発動ができたじゃないか。でも・・・
(しまった!)
すぐに気がついた。変身を解除されている。
それでは、グリーンの術ではなくて夏美の妖術を使って植物を操ることはどうだろう?
夏美は頭の中で呪文を唱え(考えて?)術を試みるが・・・
(これもダメだ!)
封魔石は内側からの術、妖力をすべて遮断してしまうのだった。
(それならば、封魔石の方はどうだ)
夏美は必死になって、封魔石に掛かけられている呪術封印を解こうとするが、
(ダメだわ!)
石に掛けられている封印術はおそらく最高レベルの護符力を使っている。
さすがの夏美でも無理だった。
(他に出る方法はなにかないか・・・そうだ、異空間移動の術ならば!)
鏡やガラスの中を、異空間として移動できる夏美の得意な術である。
夏美は頭の中で、術を唱え始めたのだが、
やっぱりダメだった。
(うう、どうすれば・・・)
いや・・・彼女になす術はもうないのだ。残念ながら。
それに彼女の人間としての最期も迫っていた。
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