その後の世界 その2
ここはG地区の隣、T地区にある私立の名門中学校である。
あるクラスの放課後の描写。
早く帰りたい生徒たちを前にして、先生が叫ぶようにして話をしている。
(佐藤)「今日はお前たちの担任の初月先生が休みなので、俺が代わりに重要な連絡事項を伝える」
佐藤先生の注意事項は・・・
報告の通り、G地区ではこの一週間で誘拐・行方不明事件が異常に多発している。
隣地区がひどい有様ということになると、この街も危ないだろう。
余計な寄り道禁止は言うまでもなく、下校の時は数人で一緒に帰るように。
(佐藤)「なるべく人通りの多いところを通ってな。いいな、わかったな」
後の方に座っている羽純と愛花がコソコソと、
(羽純)「むざむざ誘拐なんかされるかって! 小学生じゃないんだよ」
(愛花)「本当だよ。ねえねえそれよりさ、通りの向こうにアイスクリーム屋さんができたって知ってる?」
(羽純)「知ってる知ってる。それが何?」
(愛花)「帰りにちょっと寄って食べていかない」
(羽純)「いいね。ちょっとくらいなら大丈夫で・・・」
(佐藤)「おいそこ!ちゃんと話を聞け!」
怒られてしまった。
くぎを刺された愛花と羽純と、それにあと4人、紗希と、
詩音と、啓と、志穂の6人でぞろぞろと連れだって帰る。
(紗希)「うわさ知ってる?さらわれると、マネキンにされて売り飛ばされるんだってよ」
(羽純)「ああ、あたしも聞いた聞いた」
羽純は新聞部なのでさすがに世事に
敏い。
(紗季)「マネキンにされて売られるって、いやだな」
(志穂)「あんたは
不美人だから売れないよ。たぶん大丈夫だよ」
(紗希)「ん、あんだよ。それ!」
(啓)「やめなよ。本当に出てきたらどうすんのよ」
(紗希)「一応作戦を考えておいて方がいかもしれないよ。あたしは逃げるな」
(羽純)「あたしも逃げる」
(詩音)「んー、あたしは戦ってみようかな」
(啓)「お前勝てるのか?負けるだろ」
(詩音)「やっぱり逃げるかな」
「あたしも逃げる」「あたしも」「あたしも」
これは作戦と言えるのだろうか?
(志穂)「足の速い啓と羽純が誰かを呼びに行って、あとの4人は、犯人を
威嚇して足止めする。それでどうかな?」
そういうことで、あっさり決まった。
「でもさあ」と、詩音が言う、
(詩音)「犯人はずる賢くて凶悪だよ。やっぱり一目散に逃げだすべきではないかな」
「ああだ、こうだ」と、騒いでいたが、そのうちに、
「あたしはこっちだから」「じゃあまた明日」
と、1人抜け2人抜け、最後に残ったのは、羽純と詩音だけになった。
(羽純)「ところでさ、先生は一体どうしたんだろうね」
担任の初月先生は、腰が痛いとかで今日は休みだった。
(詩音)「この間も頭が痛いとか言ってなかった?」
少し天然でおもしろい先生なのだが、運動神経はすごくにぶそうだし、そもそもやることがトロい。
先週は寝坊したとかで、生徒と一緒に正門に駆け込んできたのを、
(詩音)「あたしも見たよ」
若いし(27歳)八頭身でスラリとした日本美人なのに、いつも生徒にからかわれて恥をかいている。
(羽純)「美人なのにトロければ絶好のカモだね」
(詩音)「やっぱりそう思う?」
(羽純)「当然でしょ」
2人はまだ話足りない。道草の時間を確保するためには・・・
「ちょっとさ、G地区まで行ってみない?」
言い出した峰霧羽純 (14歳)は新聞部部員である。
「悪人が出てきたらどうすんのよ」
答えた木之元詩音 (同じく14歳)は写真部部員である。
しかし両人とも興味津々で目は輝いている。
羽純は余裕たっぷりと、「悪人が出てくれば、やっつけるのみよ」
彼女たちは中学生だが空手の有段者である。
というか、同じ道場で競うようにして習っていたのだ。
おまけに2人は新聞と写真で何となく補完するような関係である。
『何か特ダネ』『良い被写体』・・・をいつも探し回っているのだ。
(羽純)「ねえ、白いスーパーガールがいるんだって?」
(詩音)「そうらしいね。強くてカッコいいらしいよ」
2人は悪人たちの前に彼女が現われないかと期待しているようだ。
できれば取材も受けてもらいたし、写真も撮りたいし。
「やっぱり行くしかないな!」
G地区までやって来たが、
「なんだぁよぉ・・・」
特に変わったことはなにもない。
たまに人も通るが、うわさを聞いて避けているのか少ない。
さっさと帰ればいいものを、根気強く(?)長時間粘っていると・・・
突然、いや、とうとう怪しげな男が数人現われた。
(羽純)「本当に出たよ。詩音どうする。逃げる?」
(詩音)「せっかく来たのに写真くらいは撮らないと・・・」
彼女、スマホではなくて、自慢の一眼レフカメラをあわててバックからとり出そうとする。
段取りが悪い。この時になってから、あたふたとしている。
こういう事態を想定していたならば、、最初からカメラを出して待っていればいいものを!
当然男たちは待ってはくれずに襲い掛かってきた。
(詩音)「あ、ちょっと待ってよ、まだカメラが!」
反射的に詩音は男を投げ飛ばしてしまった。
片手だけで男をつかみ、腰に載せるようにしてズデーンと!
もちろん詩音は男よりカメラを心配している。
(詩音)「乱暴にしないでよ。カメラが壊れるでしょ!」
(悪人)「こいつら歯向かうぞ」
子どもだと思って舐めて掛かったら情けない有様だ。
2人は逃げるでもなく、いやわざと悪人たちをあしらうようにして、その場にとどまっている。
そのうちに完全に囲まれてしまった。
背中合わせになって何か言っている。
(詩音)「どうする? 〇〇する?」
(羽純)「まだよ、まだまだ。もうちょっと粘ってみよう」
こんな場面でいったいなにをしようっていうのだろうか?
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