妄想別館 弐号棟


その後の世界 その4


昨日と同じように6人で帰り、同じように最後は詩音と羽純だけになった。
そして同じように、もう少し話をしていたい。
そういうわけで、昨日と同じセリフと行動が起きることになった。
「どうする?」「決まってるじゃないの」
なにかコソコソと話をしていたが、やがてニヤリとうなずく。
性懲りもなくまたG地区にやって来た。
そして、またしても男たちが現われた。
(詩音)「あ、また出た。早く写真を撮って逃げよう!」
男たちはあきれた。
(男)「お前たち昨日の奴らか。また来たのかよ」
(詩音)「なんだよお、あんたたちだって、昨日逮捕された連中の生き残りじゃない」
(男)「なにぃ!!!」
(羽純)「どうしてあんたは口が悪いんだ。いつも一言多いんだよ!」
(詩音)「だってさぁ・・・」
余計な一言で男たちを怒らせてしまった。そして男たちは猛然と襲い掛かってきた。
でも彼らにとっては目撃者を引っ攫ひっさらって始末してしまう方が都合がいい。
「それ捕まえろ」
詩音と羽純は「どうする」「作戦通りやろう」「わかった」とうなずいている。
作戦とは? 彼女たちの考える作戦とは一体どのようなものか?
緻密? 完璧? あらゆる危険性を排除した完全無欠な作戦を想像したかったのだが・・・全然そうではなかった。
怪我をしない。死なない。
その程度で簡単に捕まって敵のアジトに連れていかれる。
その上でそこを取材する。できれば大物にインタビューを。
そして首尾よく脱出する。すごい特ダネになる。
それが彼女たちの考えた作戦のすべてであった!
少し思慮が浅いのだが、中学生なので仕方がない。

詩音はいきなり回し蹴りで2人をなぎ倒した。
不意を突かれた男たちはあっけなく転がった。いや吹っ飛ばされた!
「あっつ、手ごわいぞ」
羽純もファイティングポーズからパンチを繰り出し、2人、3人と倒していく。
(男)「だめだ。あれを使え!」
1人があわてて、パラライザーをとり出して構えた。
(詩音)「あ、武器を使うなんてずるいぞ!」
羽純と詩音は、やっていることがチグハグで、気がついたが遅い。
『ピルルルルゥ』奇妙な音がした時にはもう、
(羽純)「ああ、体がしびれるぅ」
あっという間に動けなくなってしまった。
「手こずらせやがって、何者だこいつらは」
中学生だってさ!
武術ができるようだが、つまり・・・手下たちは中学生にやっつけられていたのだ。
あまりに極まりが悪く、ムッとしていたが、
「まあいい、連れて行け」
よくみればけっこうかわいいし。商品にするには文句はない。

(羽純)「ここはどこだ。あ、詩音、ちょっと起きなよ!」
(詩音)「えー何?」
辺りを見回すと鉄格子の部屋の中にいる。
どうやら捕まってしまったようだ。
(羽純)「あ、あたしたち捕まってしまったのか」
怖いもの知らずか? 
恐ろしいことに「ここまでは予定どおりだ」と彼女たちは考えている。
敵のアジトに連れてこられた・・・いやいや、わざと連れてこられた。
ここまでは首尾よくいった。
さあ次は敵の大ボスに取材をして脱出だ。
でも本当にうまく脱出できるのだろうか?

中には6人ほど、彼女たちと同じ年頃の女性たちがいた。
みんな隅っこに固まってうつ向いている。
すすり泣いている娘もいる。
羽純と詩音は、ニヤリと意味ありげな笑いを浮かべると6人に向かって、
(羽純)「あなたたちもさらわれてきたの」
彼女たちのげんによれば・・・
思った通りここは悪人たちの玩具製造工場であるらしい。
そしてみんな、ガシャポンの景品にされるのだと言う。
(詩音)「そんなことさせないよ」
(少女)「何言ってのよ! あなたたちだってそうなんだよ」
(羽純)「あ、そっか。そういえばそうだよね」
羽純と詩音も例外ではないはず。
少女たちはあきれるが2人は全然動じない。
(詩音)「大丈夫さ。うまく逃げ出せばいいじゃん」
(少女)「それができたらとっくにやってるよ。そもそもどうやって逃げるって言うのよ!」
ここには赤い顔をした妖怪がいるという。
鬼火とか呼ばれていて、火を自在に操ることができるそうだ。
詩音は「へぇ」と言って羽純を見るが・・・
羽純、俄然がぜん目を輝かせだして指をポキポキ鳴らしだした。
(詩音)「おいちょっと、あんた調子に乗っちゃだめだぞ」
(羽純)「あ、あん、わかってるってば」
少女たちは羽純と詩音のやりとりがよくわからないが、
(少女)「とにかくここから出ることは無理なんだよ」
いやだ、死にたくないと泣き出した娘もいる。
(羽純)「大丈夫だってば。何とかなるよ」
言ってる先から、手下であろう男が2人やって来た。
(手下)「おい、ガシャポンの景品にしてやる。1人ずつだ。誰からいくかな!」
6人は後ろの方に逃げようとするが、羽純と詩音はうなずいて、
羽純が「あたしが」と言って手を挙げた。
「自分から手を挙げただとぉ?」
驚いた驚いた!
ここは泣きだして命乞い、あるいは必死で抵抗する場面だろ。
自分から景品になりたいなんて「少しおかしいのでは」とも、思うのだが・・・
でも抵抗されるよりは作業がやりやすくて都合が良い。
(手下)「では、おまえからだ」
でも羽純は大まじめのようだ。
(手下)「お、なかなかかわいいお嬢ちゃんじゃないか、それじゃ来い」
(羽純)「じゃあ、行ってくる。詩音あとよろしくね」
(詩音)「まかせとけ!」
羽純は牢屋の外に引っ張り出されて連れて行かれてしまった。
詩音も詩音で、別に驚いた風も見せずに、あっさりと見送っている。
(少女)「ちょっとぉ、あんたの友達なんじゃないの。景品にされちゃうんだよ」
(詩音)「え、まあね。でも彼女は空手を習っていて強いから・・・多分大丈夫じゃないかな?」




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