ムジナ退治 その2
さて授業が終わり静流が職員室に戻ろうとしたら、
(静流)「おや?」
オレンジ色の人魂のようなものがユラユラと飛んでいる。
さっそくベネチアンメガネの効力があったようだ。
(静流)「なんなんだあれは?」
周りにいる生徒たちは誰も気に留めない。
(静流)「普通の人には見えないんだな」
明らかに妖気を放っているが、別段誰かを襲う気配はなさそうだ。
静流が後をついて行くと、人魂は1年生の教室に入っていった。
ドア越しに覗いてみると、ある女生徒の周りをまわっていたが、やがてスポリとはいってしまった。
どうしようかと思ったが、ヨシとうなずくとその生徒に近づいていき、
(静流)「あなた、どこか体調が悪くない」
女生徒はいきなり静流先生から声をかけられてキョトンとしている。
(生徒)「あ、初月先生! いえ別に。調子が悪いとかはないですけど・・・何かご用でしょうか?」
(静流)「いえ、そういうわけじゃないのよ。そう、何ともないのね。もしなにか調子が悪くなったら・・・」
その時に「早く部活に行こうよ」と数人の友人たちが集まってきて、
(友人たち)「どうしたの?」
(生徒)「いえ、なんでもないよ。あ、先生、特に用件がなければ、部活があるので失礼しますね」
友達は彼女を連れて行ってしまった。
(静流)「あ、ちょっとぉ」
静流は強く引き留めることができなかった。
引き留める根拠があやふやだし、別段調子が悪そうでもなかったし。
(静流)「あれは違ったのかな・・・」
これ以上彼女に聞くことはあきらめた。
次の日。
『近日行われる遠足のための注意説明会』が、体育館で行われた。
全校生徒が集まっているこの時に、また事件が起こったのだ。
もちろん被害者は昨日の女生徒。
状況もこれまでとまったく同じだった。
先生の注意事項が一段落した時、笑いながら叫びだした彼女。
舞台に駆け上がり、さらに壇上に飛び載った。
驚いて見ている者を見下ろしながら立っていたが、いきなり服を引きちぎるように脱いでしまった。
全裸で万歳姿の彼女、ブラとパンツを手に持って振っていたが、見ている者に投げつけてきた。
両手両足を思い切り広げながら、自分の下着を放り投げる姿はある意味
爽快であった。
おまけに取り押さえようとした男の先生3人、それも2人は体育科の先生だったが、を投げ飛ばして。
彼女は柔道も空手もできないのに一体どうやったのだろうか?
とんでもない観劇が起きたものだ。
華奢であどけなさの残る彼女の行為は、生徒たちの語り草になってしまった。
(羽純)「下着の投げ捨て方が豪快だったな」
(詩音)「拾った者に差し
遣わす、なんて言ってたもんね。男子が目の色変えてさ・・・」
争ってパンツを拾っている姿と言ったら・・・エラク傑作であった。
静流は苦い顔をして「なに不謹慎な事言ってるのよ!」
(詩音)「あ、いけね」
(静流)「他人事じゃないでしょ」
羽純は話をまじめに戻そうとする。
(羽純)「集会は中止になっちゃったしね。先生どうしたの?」
静流は2人を無視してどんどん歩いて行く。
(羽純)「待ってよ先生。ちょっとどうしたのよ」
(静流)「やっぱりあの人魂が原因だったんだ。失敗だったなぁ」
(詩音)「人魂?人魂って何よ?」
(静流)「人魂がいたんだよ。オレンジ色の」
誰かに操られていたものに違いないが、出所さえ突き止めれば、犯人がわかるのではないか。
(静流)「無駄かもしれないけれど、念のため校内を探してみる」
静流は行ってしまった。
(詩音)「あ、ちょっと先生ってば」
彼女は学校中を歩き回って、人魂が飛んでいないか探してみたが・・・
(静流)「やっぱりダメか。いや待てよ。大きな集会とかの前じゃないと現れないのかな」
静流の直感はおそらく当たっているだろう。
では次回の大きな集会はというと・・・
「週末、朝一で全校集会があるな」つぶやくように言った。
集会の前日になった。
静流は学校中を歩き回っていたが、
(静流)「あ、いた!」
とうとう見つけた。
2年生の教室の廊下に人魂が飛んでいたのだ。
羽純と詩音に連絡したが、2人ともすぐには来れないらしい。
(静流)「やっぱりあれは使い走りか」
式神の
類のようで、自分で意思を持っているわけではなさそうだ。
つまり首謀者が放って操っているものであることは間違いない。
人魂はフラフラと逃げていく。
静流は捕まえようとするが、歩いて来る生徒たちが邪魔になって追いつけない。
(静流)「ちょっと君たちどいてよ。えーい、待ちなさいよ」
人魂ははるか向こうに飛んでいって、階段をユラユラと降りていこうとしている。
(静流)「ちょっと待て、あっ!」
(老先生)「あっ!」
ドタッツ!
急いで階段を降りようとして、下から上がってきた老先生とぶつかってしまった。
(老先生)「痛っ!」
静流はかろうじて踏みとどまったが老先生は尻もちをついている。
(静流)「ああ、す、すみません」
(老先生)「初月先生、どうしたんですね。危ないじゃないですか。おー痛い」
散々謝って、2階の廊下まで降りてきたが、
(静流)「あ、いない!」
見失ってしまった。
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