妄想別館 弐号棟


解呪のやり方 その5


カギは開いていた。
(静流)「おっかしいなぁ? カギはかけたはずなんだけど・・・」
電気の消えている理科室は薄暗くて少し不気味、あまり長居したくない感じだ。
しかし・・・別段異常はなさそうである。
(詩音)「ここに女がいたって?」
(羽純)「隠れられそうなところなんてないよ」
(静流)「そうだよね・・・」
室内はガランとしていて誰もいないのはあきらかだ。
女はすでに逃げてしまったのだろうか。
3人がどうしたものかと考えていると、
突然男の声がした。
「もっと良く調べろよな」
「えっ」と振り向くと、今の今まで何の気配もなかったのに男が立っている。
(静流)「あー、あんたは!」
UFOキャッチャーを点検していた係の男だ。
(詩音)「お前が犯人だったのか!」
(Pastel)「そ、俺の名前はパステル。カラクリマシンの職人と覚えておいてくれ。一連の事件の張本人だ」
ククと笑いながら、
(㎩)「あのぬいぐるみマシーンは俺が作ったんだぜ。言ってみれば、まぁ俺の飼い犬のようなものかな」
3人はスーパーガールに変身して男を取り囲んだ。すぐにでも攻撃できる態勢である。
(㎩)「おやおや、俺とやるっていうの?」
(W)「覚悟しなさいよ。レッドお願い」
(R)「うん、わかった」
返事と同時に火炎放射を放つが、男はハハハと笑いながら燃えてしまった。
(W)「しまった、レプリカだ」
(㎩)「お前と同じことやったのに、気がつかないなんてね」
(W)「え?」
(㎩)「ここだ。ここ、ここだよ」
どこからか声は聞こえるのだが姿が見えない。
(B)「どこにいるんだ。出てこ〜い!」
(㎩)「ホワイト、今度のお前は替え玉ではないようだな」
(W)「え?」
彼女、正真正銘本物だ。
静流たちはあわてて理科室まで来てしまったが、これが罠だったとは気がつかなかった。
状況に気が付いたホワイトが、
(W)「いけない、外に出るのよ。早く急いで」
(B)「え、なんで・・・」
(W)「これは時間稼ぎだよ。おそらく結界が張ってある」
その通りであった。結界がいつの間にか部屋中を覆っている。
(W)「早く出ないと閉まっちゃう!」
言われた2人も気づいたが・・・すでに手遅れであった。
あわてて扉まで走り開けようと試みるが、
(B)「ダメだぁ!」
(R)「開かないよぉ!」
(㎩)「罠にはまった気分はどうだ。今回はこの部屋全体を人形作成マシンにしているのさ」
つまり3人はすでにUFOキャッチャーの中にいるようなものだ。
(W)「ブルー、レッド、かまわないから壁を壊して!」
ブルーは水鉄砲を、レッドは火炎放射をフルパワーで・・・しかし「あれっ?」という感じで威力が全然ない。
(W)「おかしい?パワーがまったく出ないよ!」
ホワイトも加わって、扉や窓に向かって最高出力の冷凍光線を放射するのだが、
(㎩)「無駄だってば。もうここは結界の中だぜ」
「あー、どうしよう!」
(㎩)「それ、フィギュアになってしまえ」
何もない空間からピンク色のもやが、あふれるように噴き出してきた。
「しまったあぁぁぁ・・・」
虚しい声が響いた。
逃げようとしても逃げ場がない。
3人は存分に靄の呪力を浴びてしまい・・・フィギュアにされてしまった。
(㎩)「この間はしくじったけど、今回はうまくいったな」
落ちているブルーのフィギュアを拾って、
(㎩)「おー、スーパーガールブルーか。なかなかかっこいいな」

チャイムが鳴り静流が教室に入ってきた。
もちろんパステルの変装である。
彼女は開口一番、
「授業の予定を変更します。座学はなし。理科室で実験を行います。すぐに移動してください」
予定外?
何の実験をするのかよくわからないが、生徒たちは指示に従って理科室に向かっていく。
「何で予定が変わったんだろ」
「でも座学よりは実験の方がおもしろいもんな」
(静流)「ほらみんな、席についたら静かにして」
ザワザワしている生徒が静かになった。
(静流)「それじゃ、みんなちょっと私の目を見てくれる」
何を言いだすことか?
とは思ったが、全員が言われるとおりに静流の目を見た。
「?????・・・・・」
すぐに引き込まれるような感じがしてクラクラしだした。
もう目を逸らすことができない。
頭がぼんやりしてきて、意識がなくなって・・・

何事もなかったように出席を取り始める静流。
(静流)「欠席は3名ね。大崎君、木之元さん、それに峰霧さん。大崎君は風邪で休むと連絡があったね」
啓と愛花はコソコソと、
(啓)「羽純と詩音はどこへ行っちゃったんだろ」
(愛花)「さっきまでいたのにね。2人そろってさぼりなんじゃない」
(静流)「木之元さんと峰霧さんは何の連絡もなかったな。高宮さん真壁さん何か事情を知ってる?」
啓も愛花も「いいえ、知りません」と答える。
偽の静流がぬけぬけと言っている。
隠し笑いをしながら、
(静流)「まあいいや。それでは授業を始めましょう。今日は、解剖の実習ですね」
「あれ?」と誰かが手を上げる。
「今日は物理の実験ではなかったんです・・・か・・・・いや解剖の実習ですね。まちがえました」
質問をした生徒は首をかしげている。
静流はコホンと咳をして、
(静流)「いきなりカエルや魚を使うのは難しいので、練習に人形を使います。非常に都合のいい人形が手に入ったので」
今度は別の生徒が立ち上がって、
「なんで解剖に人形なんかを使うんで・・・いや、あってます。変だな?おかしいと思ったのにな」
疑問に思って質問する生徒は、彼女を見たとたんに納得してしまうのである。
すなおに指示に従い逆らう者など誰もいなくなった。

静流は前に出てくると、白、赤、青のベネチアンマスクをつけた美しいフィギュアを並べた。
「先生、これスーパーガールのフィギュアじゃないか。どうしたの」
(静流)「たまたま手に入ったんだよ。すごくきれいでしょ」
ビキニコスチュームが光沢を放って輝いている。
光が当たるとまばゆいくらいに反射する。
「すごいな」「きれいだな」そして「かっこいいな」
「ホワイト、ブルー、レッド、全部あるじゃんよ」
銀色のブラとボトム。ガントレットにブーツ。
プラスチック製ではあるがカラーのベネチアンマスク付き。
「すごい。本物そっくりだよね。よ―くできてるね」
(静流)「手に取ってみてもいいよ」
身長はホワイトが少し大きくて、レッドとブルーは同じくらい。
3つともスラリとしているがメリハリのある見事なボディ。
スーパーガール本人を見たことがない者がほとんどだが、
「これ、本物とそっくりなんですかね?」
(静流)「たぶんそうだよ。いやそっくりのはずだよ。ホホホ」
「でもさ、正義の味方を解剖するのって・・・いや、いいんだっけ。あれ?」
「何言ってんだよ。スーパーガールは解剖するのが当たり前だろう」
「そうだよな」「そうだそうだ!」
生徒が疑問に思っていることは、どんどん歪んで変な方向に操られていく。
そして実はそれが正しいのだ!
(静流)「いいみんな。誤解しているようだけど、スーパーガールたちは実は悪者なのよ」
一瞬ザワザワとしたが、
「そうだよ」「あたしもそう思う」「ひどい連中だって聞いた」
と、納得している。
静流は満足そうにうなずいて、
(静流)「さあ、みんな、それがわかったら、恨みを込めて解剖を始めましょう」
「うらみ・・・って、なに・・・いや、こいつらには恨みがあるのだった」
いつの間にか心底そう感じ始めている。
(静流)「そうだ。解剖より処刑の方が納得がいくかな。みんなどう思う?」
「賛成。早く処刑しましょう!」
クラス中、全員が手を挙げている。




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