妄想別館 弐号棟


元気がでるアメ その2


場面が再びガラリと変わって、ある会社ビルの中の一室。
このビルはお菓子の卸売業を行っている、ということになっている。
ここで2人が言い争っている。
1人はディーディー(Different Dimension)と呼ばれている男で、空間に関する奇妙な術を操る妖怪である。
もう1人はキャンディス(Candace)と呼ばれている、白衣を着ていて若そうに見える女性。
しかし実際は200年は生きている魔女である。
(Ca)「気をつけなきゃダメじゃないかよ」
うっかりしていて、白ネコににげられてしまった。
(Dd)「そううるさく言うなよ。すぐに捕まえただろ」
(Ca)「足がついたらどうするんだよ」
ディーディーは抱きかかえているネコの頭を撫でながら、
(Dd)「わかったわかった。これからは気をつけるさ。それで商売の方はどうなってる?」
(Ca)「すこぶる順調さ。今のところはな」
(Dd)「今のところは、ってなんだよ?」
(Ca)「邪魔が入りそうな気配がするんだよな」
キャンディスが懸念しているのは、スーパーガールが邪魔しにやってくる、という事らしい。

2人はしばらく打ち合わせをしていたが、
(Ca)「それじゃ秘密の作業場に行くとするか」
キャンディスが杖を『ブン』と振ると、異次元トンネルのようなものが現れた。
中を通って行くと、郊外の原っぱのようなところに出てきた。
作業場と言っていた建物がポツンと建っている。
ここで何を作っているのかと言えば、もちろん!
たった一粒で、体力や気力が完全回復する元気アメ。  
何気なく建っている古びた建物が、実は製造工場になっていたのである。

さて、作業場には真っ白な石膏像がたくさん置いて、いやそこいら中に転がっていた。
全部女性である。それも思い思いの恰好で。
手足を放りだしたり、体を反り返らせたり、デッサンに使うにしてはずいぶんと無様である。
しかし実はこれ、見た目はまるで石膏像のようであるが、とんでもないものであった。
なんと精気を完全に吸い取られた女性たちの残骸なのである。
真っ白になった彼女たちの体は小麦粉を固めただけのようにもろくなってしまっている。
これをくだいてすりつぶして粉にし、水アメを混ぜてアメの基材としているのだ。
基材はアメの形状や食感を保つための『土台(ベース)』となる原料のことである。
それではアメの主成分は一体何であろうか?

彼らは別の建物に向かって行った。
別棟は、例の白ネコがたくさんいるネコ舎であった。
このネコ、実は魔界に住む魔猫である。エネルギーネコともよばれている。
見た目は人間界のネコにそっくりではあるが、生体エネルギーを食べて生きているのである。
しかしすこぶるおとなしくて人懐こい。それにネコに悪気はない。
ネコの性質を利用して、この2人が悪だくみを考えたわけでである。
キャンディスは魔力によって、ネコが吸い取ったエネルギーを首輪に蓄えられるようにした。
満タンになったらエネルギーを取り出してアメに混ぜる。
そうすると、ものすごい滋養強壮剤、エネルギー補給剤のようなものができ上るというわけだ。
人間の女性から吸い取ったエネルギー、これがアメの主成分というわけであった。
魔力が企業秘密でもあったわけだ。
女の体をあまねく使って出来あがったアメを高く売り出して大儲け!
成分は全部人間。アメの組成からして何の問題もない。
国の厳密な検査にも引っかからなかったわけだ。

手下たちが呼び出された。
(Ca)「さあ、女たちの残骸を製造工場に運ぶんだ」
作業自体はものすごく簡単である。
上述の通りで、
残骸を粉々に粉砕して、水アメと混ぜて、最後に首輪から取り出した生体エネルギーを注入するだけ!
たちまち『元気アメ』のでき上りとなる。
手下たちが出て行くと、今度は・・・
正装した知的エリートみたいな男たち。さわやかなスタイルのイケメンの男たち。ガッチリした体格のムッチョな男たち。
その他にも女性が興味を引きそうな、様々なジャンルの男たちを呼び出した。
キャンディスが大声でけしかける。
(Ca)「それ、材料(女たち)をさっさと調達して来い。今日のノルマは最低20人だ」
(男たち)「お任せください」
(Ca)「美人不美人は問わない。いいか、若くて生きの良さそうなギャルだぞ。ほら行ってこい!」
男たちを追い出すと、さらに手下に指示を出す。
(Ca)「ああ、販売の部署の責任者を呼んで来い」
販売のエリアをもっと広げろ。移動販売車の台数を増やせ、と部下にげきを飛ばしている。

再び職員室での場面に戻る。
(羽純)「アメちょうだいよ」
(詩音)「もうないよ」
(羽純)「なんだ、もうないのぉ」
詩音はムッとして「何言ってる! あんたたちにたかられたんじゃないかよ!」と食ってかかる。
(詩音)「三千円もしたのにさ・・・」
(静流)「まあ、まあ、それよりもちょっと気になることがあるの。このアメってどこで売ってるの?」
(詩音)「先生も買うの? すぐ向こうの大通りに時々売りに来るんだよ」
都内のどこにも現れるようだが、大通りにもよく来ると言う。
(詩音)「でも一番多いのは隣町のR区だそうだよ」
(静流)「販売車が来るようになったのはいつ頃からだろ?」
(詩音)「確か半月くらい前からだね」
(静流)「ふーん半月前か。R区R区、なんかあったような? なんだっけな」
静流は上を向いて何か考えていたが「あっそうか!」と、何か思い出したように叫ぶ。
(羽純)「どうしたのよ、先生?」
(静流)「羽純、詩音、R地区で女性失踪者が出始めたのっていつ頃だか知ってる?」
(詩音)「え、確か半月くらいじゃないかな・・・あ!」
静流は考えていたことを説明した。
(羽純)「それじゃ関連があるってことかな」
(詩音)「相当怪しいと思うよ」
ここからスーパーガール行動開始だ。

手ぐすねを引くように待っていると、数日たって移動販売車がやって来た。
早速出向いて行く3人であったが、
(羽純)「うゎすごい。向こうまで行列じゃない」
口コミによる、ラーメン屋やカレー店の行列はよく聞く話だが、アメを買うために行列とは・・・
そしてアメはすぐに売り切れてしまった。
(詩音)「うわぁ、買えないじゃのよ。もっと早く並べばよかった」
詩音はあくまで買うつもりで来ていたようだ。
(羽純)「売切れなら買えないでしょ。まあしょうがないよね」
(詩音)「しょうがないってぇ? あんた買えなくて悔しくないの」
(羽純)「いや、あたしは別に・・・ほしくないもの」
(静流)「そうじゃないでしょ。調査だよ。調査、調査」
3人は片づけをしている男に近寄って行って、直接アメの出どころを聞いてみた。
(静流)「このアメがどうしても欲しいのですが、どうすれば手に入りますかね?」
(店員)「工場に直接行けば、分けてくれると思いますよ」
〇▽区にある✕◇株式会社の製造工場から直接仕入れているという事であった。
男はそれ以上のことは知らないらしい。
(詩音)「どう思う?」
(羽純)「ウソではなさそうだね。あの店員は人間だよ」
(静流)「ここじゃ手掛かりなしか。よしそれじゃさ、直接工場に行って調べてみようか。こっそりとね・・・」




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