身近な刺客 その2
放課後。静流は正人の後をこっそりとつけていく。
美術室に入っていった彼を扉越しに
窺っているが、
(静流)「これじゃわからないな」
美術室の前を行ったり来たり、壁に耳を当てたりしていると、
(雪音)「初月先生どうしたんですか?」
いきなり声をかけられて跳びあがった。
(静流)「いえ、その、いえ、そうだ、
栂池君がうまくやっているか、心配で心配で・・・」
ハハハと笑いながら、ごまかそうとする。
(静流)「ちょっと様子を見てみようかな、なんて・・・! おじゃまかしら?」
(雪音)「なんだ。それならば遠慮せずに中へどうぞ。彼ならいつも一生懸命ですよ。部員たちともうまく溶け込んでやっていますよ」
静流は断ることもできず美術室の中に入って行った。
(雪音)「お茶をお出ししましょうか」
(静流)「いえ、あの、お構いなく」
チラと奥を見ると、正人はそれこそ一心不乱に粘土をこねて作品を造っている。
30センチくらいの彫像であった。人にそっくりの造りでとても精工な感じがする。
静流は近くで見てみたくなった。
(静流)「彼の作品を見せてもらってもいいですかね?」
(雪音)「どうぞどうぞ」
正人は数枚の写真を元に、それを描いているようだ。
正面、側面、後面その他の角度から・・・
一生懸命に粘度をくっつけて、ヘラで削ってを繰り返している。
(静流)「栂池君、ちょっと、お邪魔するね」
彼はニコニコしながら「あ、先生。なにか用ですか」
(静流)「作業は止めなくていいよ。何を造っているのかな?ちょっと見せてよ」
(正人)「いいですけど、だけどあと1分、1分だけ待ってもらえませんか。そうすれば完璧に仕上がるんですけど」
1分? ずいぶん変な事言うけど、たいした時間じゃないし。
静流は「ええ、いいけど」と返事をして近くの椅子に座る。
(雪音)「あたしが説明しますわ」
横に出てきた如月先生は話し出した。
(雪音)「彼の使っている粘土は特別性なんです」
(静流)「特別性って?」
(雪音)「彼は彫塑の能力が卓越してるんで、良い画材を特別に用意しているんです。
こっちに彼の作品があるから先にご覧になったら」
隣接している機材庫をのぞくと・・・あるある。見事なものが何体も。
でも・・・、どれもこれも見覚えのある顔ばかり。そっくりに造られているのですぐにわかる。
(静流)「これって、確か隣のクラスの岩崎君、それに黒川さん」
教師のもあり、さらに、
(静流)「まあ、校長先生のまで!」
(雪音)「全〜部彼が作ったんです。この学校の生徒や教師をモデルにね」
(静流)「へぇ、そうなんですか」
かなり見事だ。いや顔だけではなくて体つきまでも。
小さいだけで、当人そっくりで瓜二つ。これは相当な腕前だ。
(静流)「すごいのね。あなた」
しかしこれだけの数をつくるとなると、相当大変だっただろう。
彼が転校してきて、まだ一か月だと言うのに。
いくら才能があるといたって20体ちかくはある、これらを全部造ったのだろうか。
いや本当に1人で造ることができるのだろうか?
雪音が言うには、倉庫にはまだ相当数があるそうだ。
それを聞くと別の疑問が起きた。
これだけ造るのはすごいが・・・何でそんなんことをするのだろう。
単に興味で造りたいのだろうか?
(学校中の人物の彫像を造って・・・どうするのかな?)
静流が首をかしげていると正人が「先生できました。どうぞ見てください」と言ってきた。
(静流)「じゃあ、見せてね」
正人の後ろに立って覗き込んで見ると、
造っていたのは、なんと目の前の彼女、初月静流の彫像であった
(静流)「え、これはあたしじゃない・・・あ!」
突然体が動かなくなった。
(静流)「こ、これは? どうしたっていうの?」
かろうじて振り返ると、如月先生がゴニョゴニョと何かとなえている。
(静流)「あなたたちは! いったい?」
(正人)「完璧だよ先生。こうした方が良く見えるでしょ」
正人が彫刻の載っている台座をこちらに向けると見事だ。
静流の全身像。彼女とそっくりである。
(雪音)「面白いんですよ。彼の作った彫像は」
(静流)「なにがですか?」
(雪音)「作った彫像に呪文を唱えると、魂がこの彫像の中に封じ込まれてしまうんです」
(静流)「は、どういうこと!?」
静流は雪音が何を言っているのか意味が分からない。
(静流)「魂が封じ込まれるって? 何ですかそれ。仰っていることがわからないんですが」
(雪音)「わかりやすく言うと、彫像の中に魂が吸い込まれてしまうんです。ここにある彫像のモデルになった人はみんなそうなんですよ」
彼女の言い方だと学校中の大部分の者がそうではないか。
(静流)「まさか!」
(正人)「まさかなものか。この雪音も、いや、今やこの学校のほとんどが俺の操り人形なんだよ」
雪音がうなずいている。静流は一瞬頭が混乱した。
(静流)「それって、いったいどういう事なんだ?」
(雪音)「すぐわかるわ。さあ静流さん。いえ、スーパーガールホワイトさん、次はあなたの番ですよ」
(静流)「え、なんで、それを、あ、うわーっつ!」
静流は変身しようとしたが・・・間に合わなかった。
突然目が回りはじめ意識が消えた。
不意打ちを喰らった彼女の体はグニャリと崩れ落ちた。
雪音と正人は置いてある彫像を凝視する。
(正人)「よし大丈夫だ。静流の魂は封印できている」
魂封じの術。静流はまんまと引っかかった。
(雪音)「やれやれ危なかった。変身されると面倒なところだったよ」
正人は雪音に「とどめを刺しておけ」と指図する。
うなずいた彼女は置いてあった金属ハンマーをつかみ、彫像を殴りつけた。
バコンと言う音がして、静流の彫像は粉々になってしまった。
(雪音)「これでよし。まず1人ね。さあ、次はだれかしら」
(正人)「その前にベネチアンマスクを封印しておかないとな」
指輪は術にかからないらしく床に落ちている。
呪文を唱えられたら復活してしまうのだろう。
指輪を呪文の描いてある箱に封印すると、
(正人)「それじゃこいつの体も使わせてもらうかな」
正人は両手を上げてゴニョゴニョと唱えると、
倒れていた静流が起き上がった。
(正雄)「さあ、お前は俺たちのために動くのだ。あと2人いる。そいつらを倒すんだ」
静流はニコリと笑って「わかりました」と・・・
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