妄想別館 弐号棟


身近な刺客 その3


次の日の朝。
羽純と詩音がぼやいている。
(詩音)「ねえ羽純。昨日静流が様子を見に行くって言って、その後連絡きた?」
(羽純)「いや。こなかったよ。あれだけ連絡を密にしろって自分で言っててさ」
(詩音)「ん―、何かあったのかな・・・」
でも、朝のHRで静流は何事もなく入ってきて、連絡事項を話し始めた。
詩音はあっけにとられたが「どうやら無事であるようだ。まずはよかった」と、思った。
彼女が教室を出て行くと、すかさず彼女を追いかけていって、
(詩音)「ちょっと先生、昨日はどうしたのよ?」
静流は「え?!」と、恐る恐る振り向く。
(詩音)「心配したじゃないのよ」
(静流)「あ、ああごめんね。忙しくてつい忘れてしまったわ。これから気をつけるね」
(詩音)「それでどうだったの?」
(静流)「特別に怪しいところはなかったわ。作品を作っている時の栂池君が少しナーバスになっているだけみたい」
(詩音)「そうか。それならばよかった」
(静流)「羽純が感じている怪異は別の原因じゃないかしら」
静流と詩音の話は続いているが、羽純は教室の陰からジーッとこの様子を見ている。
(羽純:こいつは一体何者だ?)
彼女の直感は静流も別人になってしまったと言っている。

先生が廊下の角を曲がって見えなくなってから、
(羽純)「詩音、あれ、静流じゃないよ」
(詩音)「何、言ってんのよ。どうみても先生じゃないの」
話のつじつまも全部あっている。
(羽純)「中身が違うのよ」
羽純は懸命になって詩音を説得する。
(詩音)「それじゃ、先生も別人になっちゃったの?」
(羽純)「きっとやられちゃったんだわ。仕方がない、こうしよ」
2人はコソコソ話をしだした。
この様子を柱の陰から見ていたのは・・・当の静流であった。
(静流)「あの羽純とかいう女、気がついたみたいだな」

夜の美術室に2人のスーパーガールが忍び込んできた。
慎重にあたりを見回しているが、ガランとしていて何もない。
(R)「何もないね」
準備室にはガッシリカギがかかっている。
(B)「火はまずいよ、壊さないようにあたしがやる」
ブルーは体をバチャリと水に変えると、すき間から中に入りカギを開けた。
中に入ってみると、見知った顔の彫刻がたくさん置いてあった。
『たくさんある』どころではない。学校中の先生や生徒、ほぼ全員分ではないのかな?
2人は思わず「これは・・・すごい数だね・・・」
しかも一体一体が非常に精巧に作られている。
(R)「へぇうまいね。そっくりじゃない・・・あれ?これは!」
レッドは一つ一つ手に取って穴が空くほど丁寧に見ていたが、突然声を上げた。
ブルーは怪訝そうに「何よ? どうしたのよ?」
(R)「この彫像全部本物の感じがする。いやこれ人間だよ」
(B)「はい? 言ってることが不明! 石膏の彫像が人間ってなによ!」
(R)「彫像が人間に思えたんだけどな。いや、そんなの変だよね。あっ!」
突然レッドは振り返り、いきなりバーナーのような火を机に向かって放った。
驚いたブルーは「何だよいきなり。ビックリするじゃない」と怒り出す。
レッドは机の方を呆然と見ている。
(R)「誰かの気配がしたんだよ。机のところで」
(B)「机って?何もいないじゃない」
動く気配も逃げる気配もなかった、とブルーは言っている。
(R)「おかしいな。確かに影の中に誰かいたような気がしたんだ・・・」
(B)「影の中? 何バカなこと言ってんだい」
(R)「もういないよ。いや気のせいだよね。もう少し部屋の中調べてみよう」
(B)「あんた。さっきからおかしいよ!」
結局怪しい物は見つからなかった。
しいて言えば、廃棄バケツの中に砕けた彫像のかけらがあったが、それだけであった。
(B)「落っことして割っちゃったみたいだね」
破片を手に取って見ているが、それが何を意味するかわからなかった。
(R)「こうなったら、栂池君に直に聞くしかないな」
もう少し彼を調べてみる必要がありそうだ。
2人は美術室をこっそりと後にした。入って来た時と同じように・・・

さてしばらくすると、結界を張った異次元空間から2人が出てきた。
ブルーとレッドが探りに来ると予想して見張っていたのだ。
彫像の秘密を気づかれかけたが、どうやら大丈夫だったようだ。
(正人)「バレたかと思ったがな。しかし何で机に火を吹いたんだろ」
(雪音)「さあてな。それよりもだ、早いとこ、あの2人も片付けておかないと」
2人はしばらく密談をしていたが、やがて出て行った。
それからさらにしばらくすると・・・
さらに『ブルーとレッドを見張っていた正人と雪音』の様子を探っていたもう1人が闇の中から現れた。
もちろん正人と雪音は、その存在には気がつかなかった。
(影)「危ない危ない! レッドの感は鋭いね。あたしが影になって感づかれたのは初めてだ。
でもな、敵が多すぎるよ。あの2人だけじゃ、やられちゃうな・・・」

次の日。
羽純と詩音は正人を問い詰めようとしたが、
「教室の中で細かい事情を話すのはいやだなぁ。後でね。放課後の美術室でならいいよ」
彼はのらりくらりと話をはぐらかしてしまった。
「どうする?」「行ってみるしかないでしょ!」
そして放課後、羽純と詩音はこれから美術室に行こうとしているところで、
(羽純)「あ、ちょっと、待って。先にお手洗いに行ってくる」
詩音は「スマホでも見ているか」と、カバンからスマホを出そうとしたのだが、
いきなり静流が走ってきて、
(静流)「詩音、すぐに来て。美術室で大変なの」
(詩音)「え、どうしたんですか?」
(静流)「いいから、すぐに来て手伝って」
(詩音)「え、羽純がお手洗いに・・・」
(静流)「時間がないの。あなただけでも来てよ」
静流が怪しいので、そのことを聞きに行くはずなのに・・・
(詩音)「でも、まあいいか。羽純はすぐに来るだろうし・・・ 分かった。行きましょう」
静流のただならぬ顔を見て、詩音は彼女の後について走り出した。
羽純はすぐにトイレから出てきたのだが、
(羽純)「あれ、いない?」
近くにいた友人(もちろん別人である!)に、
(羽純)「詩音いなかった? 今の今までいたんだけれど」
(友人)「ああ、初月先生と一緒に行っちゃたよ」
(羽純)「えっ先生と! そうなの・・・」




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