妄想別館 弐号棟


身近な刺客 その4


(羽純)「入ります!」
ノックして扉を開けると「うーっ!」と、唸り声をあげてしまった。
静流と詩音が立っている。奥には雪音が座っているし正人もいた。
(雪音)「あら峰霧さん。どうかしましたか」
(羽純)「え、いえ、あの別に・・・」
静流たちに加えて詩音までおかしくなっている。
目つきがさっきまでと違い、まるで獲物を狙うような眼をしている。
(詩音)「羽純どうしたのよ? 中に入ってきなよ」
(羽純)「いや、いいや。いいです!」
逃げようとしたが、いきなり静流と詩音が飛び掛かってきた。
両腕をつかんで部屋の中に引きずり込まれてしまった。
(羽純)「何すんのよ!」
(正人)「いいからおとなしくしろ」
彼の手には羽純のそっくりの石膏像が握られていた。
「うわっ!」
羽純は床に転がされたが、床一面は真っ白になっていた。
「なんだこれは?」
なにかの粉を撒いたのかと思ったが、よくみると砕けた彫像のようである。
粉だけでなくて破片の一部もまざっている。
落して割ってしまったのか?
たまたま、砕け損なって残っている彫像の一部が・・・
(羽純:なによこれは、まるで詩音の顔にそっくりじゃないの・・・)
そうか!状況を理解した。
(羽純)「彫像になにか細工をしたんでしょ。そうなんでしょ!」
(正人)「そうさその通り。これは封魂術の彫像さ。人の体を乗っ取るためのね」

(羽純)「魂を? 取られてたまるか!」
雪音が呪文を唱えるよりも一瞬早く羽純は「変身」した。
のけぞるように・・・体位をずらすと同時に指先から火炎を噴く。
「うわ、火だ! あちち!」と、雪音は悲鳴を上げた。
避けようとした拍子によろけて躓き、
(雪音)「しまった!」
羽純の彫像は床に落ちて砕けてしまった。
(正人)「何をやってるんだ!しかたがない。こいつはこのまま片付けてしまえ」
(R)「簡単にやられてたまるか。あ!」
いつの間にか後にホワイトとブルーが立っている。
(R)「2人とも正気に戻ってよ!」
(正人)「無駄だ。こいつらは正気だよ。本物の魂はもう粉々さ」
いきなり冷凍噴霧がきた。あわててよけるが、超低温の噴霧は正人や雪音にもかかる。
(正人)「バカ、気をつけろ。俺たちまで凍らせる気か」
乗っ取られた静流と詩音はまだ、体の扱いに慣れていないな。
ベネチアンマスクさえ取り返せれば、2人も元に戻るに違いない。
でもどうしようか?まわりは敵だらけだ。
と、考えている間もなかった。
(W)「それ、凍ってしまいなさい」
(R)「あ、うわあー」
ホワイトの冷凍捕縛術で氷の中に閉じ込められてしまった。

氷漬けになったレッドはまったく動けないが、
(R)「このままやられるものか」
全身を輝かせて火の塊にし、氷を溶かそうとする。
(W)「そうはさせないよ」
ホワイトも全力でそれを防ごうとする。
氷は高熱で解けるがすぐにまた氷ができて・・・1時間 2時間 3時間・・・
レッドはフラフラになった。
(R)「もうダメぇ」
パワーがとぎれてしまった。
ホワイトもフラフラで肩で息をしているが、それでもまだ少しパワーがあるようだ。
(雪音)「部屋の中が血で汚れないようにな。おいホワイト、ガチンガチンに凍らせろ」
(W)「わかりました」。
ホワイトは構え直すと、青い光線のようなものを発射した。
(R)「え、なにこれ、こ、凍るぅぅ・・・」
氷の中ではあるが、いや氷の中に閉じ込められたレッドはカチンカチンに凍りついた。
彼女は真っ白になってしまった。
これは超極低温、絶対零度まで物体の温度を下げる、ホワイトの秘技である。
(W)「アハハ、この技を味方に使うとはね。おっと旧味方に訂正」
しかしホワイトもエネルギー切れである。
静流に戻ってしまってひっくり返っている。
(B)「こんどはあたしがやる。覚悟しろよ」
前に出てきたブルーが、氷の中のレッドに向かって、ジェットカッターを指から噴き出し氷を貫きだした。
(B)「真っ二つにしてやる」
氷の塊は簡単に二つのブロックになってしまった。
もちろん中のレッドも半分になっている。
(正人)「もっと細かくしろよ」
数分後・・・
冷凍肉の冷凍ブロックが数個転がっている。
(雪音)「こいつから魂は抜けないのかな?」
(正人)「彫像を造り直さなきゃ無理だね。少し時間がかかるよ」
(雪音)「まあいいさ。ベネチアンマスクだけ外しておけ。厳重に封印しておけよ。
肉塊は給食室の冷凍庫にでも入れて置け」

レッドは気がつくと真っ暗な所にいた。
実は冷蔵庫の中である。
(あたしはどうなったんだっけ?)
ホワイトの超低温の光線を浴びて絶対零度近くまで氷結して、さらにブルーのジェットカッターで真っ二つに斬られたところまでは覚えている。
(そうか・・・)
現在、彼女は死体というわけだ。
でも変身した状態でやられたためだろうか。
体はバラバラになっているがベネチアンマスクの超能力でかろうじて意識を保てているようだ。
でも・・・
(だめだ体が動かない)
体はガチガチに凍っているためか? あるいはマスクを取られてしまったためか?
火の塊になって再生しようとするが「力が出ないよぉ・・・」
体がピクリとも反応しない。
こうなると・・・やつらが用意を整えて殺しに来るのが先か、それともエネルギーが尽きて生命力が消えてしまうのが先か。
正人が封印の彫像を持ってくれば、羽純は魂を抜かれて体を乗っ取られて終わり。
静流や詩音たちのように式(式神)にされて永遠に奴隷だ。
あるいはエネルギーが尽きてしまえば、その段階で『死』あるのみである。
マスクを取られてしまった以上、体の再生は不可能だからだ。
どっちにしろ状況は絶望的である。
(どうしよう・・・)
途方に暮れていると冷蔵庫の扉が開いた。
(あ、誰か来た!)
味方が来る確率は皆無に近い。
(ああ、あたしは終わりだ・・・)
でも・・・
「うゎぁ、これはひどいな。バラバラじゃない」
と、声がする。敵ではないのだろうか? もしそうなら・・・




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