身近な刺客 その5
目の前に現れたのは、なんと岸波舞花であった。
(えー、なんであんたがここに?!)
でも悠長な時間はない。
(R:舞花、助けて・・・でもどうやったらいいんだろ・・・)
レッドは自分でもどうしていいのかわからない状態である。
なにせ彼女の体はバラバラになっているし、ベネチアンマスクも取られてしまっている。
しかし舞花はなすべき段取りが、すべてわかっている様子だった。
(舞花)「急がなくっちゃね」
バラバラになっているレッドの体を冷蔵庫から一つづつとり出し、体についている氷を砕いて落としている。
それが終わると立体パズルのように床に丁寧に並べている。
マスクの取れた首を持ち上げて見ているが、死体モドキの羽純を見てもまったく動じていないようだ。
(舞花)「ははぁ、羽純ちゃんがスーパーガールレッドだったのね」
などと言っている。
さらに驚いたのは、なんと手にはレッドのベネチアンマスク(正確にはペンダント)を持っているではないか。
(R:呪文のことも知ってるのかな?)
もちろん彼女は知っていた。
さらりと「変身」と唱えると、次の瞬間にはバラバラだった体が一つにまとまり、レッドがグニャリと横たわっていた。
スーパーガールレッドは再生した。
(R)「痛たたたた!ひどい目にあったな」
(舞花)「大丈夫? 動けるの?」
(R)「なんでなんで、あんたはマスクの秘密を知ってるの」
(舞花)「マスクを手に取ったら、変身と唱えろと教わったの」
(R)「誰から?」
(舞花)「それは秘密よ。でも今はそんな場合じゃないでしょ。皆を助けなきゃ」
(R)「そ、そうだよね。どこかに、白と青のベネチアンマスクがあるから探してきてくれない」
(舞花)「これのことかね」
彼女は白色の指輪と青色のブレスレッドをすでに持っていた。
(R)「あー! なんでぇ?」
(舞花)「連中が隠していたのを、ちょいと拝借してきたのよ」
悪く言えば『盗んできた』、良く言えば『取り返してきた』だ。
そういえばレッドのペンダントだってそうだ。
あいつらだって厳重に封印して隠していたはずだが・・・
レッドは再び驚いた!
(R)「どうやって取り戻したのよ?」
(舞花)「あとあと、先にやることがあるでしょ」
(R)「そうだった。それじゃ呪文で早速・・・」
(舞花)「ちょっと待って。まず、あの彫刻の呪術を何とかしなきゃだめだよ。魂を彫像に封じ込められているんだから」
静流と詩音は完全に死んでいる。そして体の方は乗っ取られている。
(R)「そっか、どうすればいいの」
(舞花)「まず妖魔を倒してよ。そうすれば術は解けるから」
(R)「やっぱり、栂池君が犯人なのね」
(舞花)「いや、彼は犯人ではないよ」
(R)「えっ、違うの?」
(舞花)「彼は殺しちゃだめだよ。妖魔に操られているだけなんだ。
そのあとはあたしにまかせて。ちょっとした魔力解呪の呪文を知ってるから。それじゃ頼んだよ」
(R)「あ、待ってよ」
舞花は行ってしまった。でもグズグズしてはいられない。
再び美術室にやって来て様子をうかがうと・・・
正人の大声が聞こえる。
(正人)「なんだと、ベネチアンマスクがなくなったぁ?」
レッドのは封印箱に入れて厳重に、いや正人が直々に金庫に保管したのだ。
それが消えてしまったと言っている。
さらには・・・静流が指につけていた指輪、詩音が腕につけていたブレスレット、
それが彼女たちが気が付かないうちに消えていた、とも言っている。
聞いていたレッドもそんなバカなことと思った。
(R:消えるまで気が付かないなんて、そんなことがあるのかな?)
そんなことができれば、まさに神業だろう。
しかしどうやら舞花がやったらしい。
薄気味の悪い娘だなと思った。
しかしチャンスだ。今なら静流も詩音もただの人間だし。
(正人)「探せぇ探すんだ!」
静流と詩音が飛び出そうとしたときに、レッドは手刀で、
「あっ!」
2人は一瞬で気を失った。
(雪音)「あ、スーパーガールレッド、やっぱり貴様の仕業か!」
(R)「いやあたしじゃないのよ、残念ながら」
言うが早いか、飛び掛かかっていって雪音を殴りつけた。
彼女はグウと
唸ってひっくり返った。
(正人)「きさま、いったいどうやって生き返った」
(R)「うるさいよ」
回し蹴りで正人を蹴り飛ばした。
見事なくらいに決まり彼は動かなくなった。
が、すぐに妖怪が飛び出してきた。
(R)「出たな本体。覚悟しろ!」
奪魂妖怪が正体を現した。
(奪魂)「ちきしょうスーパーガールめ。それならもう一回魂を抜いてやる」
(R)「同じ手を食うもんか、それ」
体を火に変えた。こうなると簡単には手が出せない。
奪魂妖怪がためらっているうちに、レッドは火炎の放射を始めた。
(奪魂)「うわ、熱い!」
たまらず彼は窓から逃げだした。
(R)「逃がさないよ」
窓から飛び出しながらもう一回、今度は長距離の火炎を放った。
(奪魂)「うわぁ、あちち!」
妖怪は燃え出した。封印力のある火炎を浴びたからたまらない。
(奪魂)「おのれ、スーパーガール。うわ、体が消えるぅぅ・・・」
断末魔もそこまでであった。
レッドが美術室に戻ると、舞花が雪音と正人に加えて、静流と詩音まで介護している。
(舞花)「レッド、妖怪はやっつけたのね」
「封印して消えたよ。それよりさ・・・」
レッドは舞花に向かって、
(R)「あんたいったい何者なのよ?」
舞花はメガネをかけ直しながら笑っている。
(舞花)「その話は後で。まだやることがあるのよ。正人君が造った彫像を全部破壊して。そうすればみんな元通りに戻るから」
レッドは話をはぐらかされたが、彼女の言うことの方が正論だし先だ。
「チェッ」舌打ちをして彫像を壊しだした。
全部壊して戻ってくると、
(R)「全部壊した・・・あれ?」
彼女は消えていた。
さて次の日、さっそく・・・いつもの階段の踊り場にて。
(詩音)「ちょっとあんた。なんで、あたしたちの秘密を知っていたの?」
(舞花)「ある人から聞いていたのよ。ピンチなったら助けるようにって」
(羽純)「それは誰なのよ。言いなさいよ!」
(舞花)「いやだよぉ〜」
(羽純)「言いなさいったら。言わないと痛い目を見るよ」
(舞花)「へぇ。あんたたち何もしてない善良な生徒を痛めつけるんだ。それでも正義の味方なの。悪人並の思考だね」
舞花の強烈な正論に詩音と羽純はたじろぐ。
(詩音)「い、いや、痛めるとかそういうわけじゃないけどさ・・・」
(羽純)「あたしたちは秘密を知られちゃまずいんだよ。だから・・・」
(舞花)「しつこいなぁ。あんまりしつこいと、学校中に秘密をバラすぞ!」
舞花はさらりと逆襲してくる。
(詩音)「あたしたちを脅す気!」
(羽純)「や、やれるもんならやってみなさいよ。そんな脅しには屈しないわ!」
強がって出たが、
(舞花)「ついでに、妖怪にやっつけられたこともバラしてやろうか」
「そ、それはぁ・・・」
詩音と羽純は簡単に屈して黙らされてしまった。
舞花は一転してニコニコと、
(舞花)「それよりさ、あたしも仲間に入れてよ。あんたたちに協力するからさ。入れてくれなきゃバラすよ」
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