幼い頃から優秀で天才なイタチ。
何をやらせてもそつなくこなし、教えた忍術や体術はすぐに会得し本当に手がかからず教える事なんてもうないと思っていた。それはそれで嬉しいと感じながらもどこか寂しくて、まあ仕方のない事だし自分にはもう一人…世話の焼ける妹がいるからいいか、なんて思ってた矢先だったんだ。イタチがどう足掻いても会得するまでに膨大な時間を必要としそうな苦手分野を見つけたのは。



アカデミーを卒業して、イタチがすぐに写輪眼を開眼。リクハとイタチが異例の班編成で同じ班になり数年が経った頃。それぞれが任務でとても忙しくなった。
イタチは暗部に引き抜かれ、リクハは念願だった自身の一族の秘伝忍術の継承を認められ上忍にもなった。シスイは隊の隊長を務めているし、その人格と実力が買われうちは一族の若手育成にも一役買っている。最近では担当上忍をやらないかと声をかけられている程だ。そんな日々目まぐるしい生活を送っているせいか、今の今まで気づきもしなかった。あのイタチが…、

「…女を好きになるなんてな…」
「は?」

そうぽつりと呟いたシスイの視線の先ではリクハがサスケに手裏剣術の指導をしている真っ最中。何の前置きもなく隣に座るシスイが突然そんな事を口にしたものだから、イタチは眉間にしわ寄せ怪訝な表情を浮かべた。

「お前のことだよイタチ」
「…またその話か」
「すまん。今だに信じられなくてな」
「オレを人扱いしてない証拠だ」
「おいおい、人聞き悪いこと言うなよ」

昔から幼馴染という間柄で仲が良いのは知っていたが、イタチはリクハのことを妹のように思っているだけなんだろうなと思っていた。が、それは思い違いだったと最近知った。何せあの冷静沈着で他者には興味を示さないイタチが、リクハにだけは超が付くほど甘く、優しいのだから。自分も可愛い妹だと思ってはいるが、時々腹が立つことくらいはあるし叱ってしまうこともしばしば。

「そう言えばお前、オレがリクハと仲良くしてると昔から不満そうな顔してたもんな」
「…オレはそんなに分かり易いのか」
「ああ。気づいてないのはリクハだけだ」
「…………」
「…あの鈍さは才能だな」

シスイの言う通り、イタチがどんなに優しくしようが特別扱いしようがリクハがその想いに気づく様子は全くない。普通の女子ならもしかしたら…と期待してもおかしくないところだが、なんせ忍一筋の忍術バカと言っても過言ではない環境で生活してきた為か、恋愛という感情の芽生えが遅れてしまっているようなのだ。

「いっそのこと、好きだと伝えたらどうだ?」
「……」
「オレは上手くいく気がするぞ」
「いや、いいんだ。今はこのままで」
「…?何でだよ」

好きになった相手とは、恋仲になりたいと思うのが普通じゃないのか?と問いかけるとイタチは苦笑いを浮かべながら口を開いた。

「…オレに意気地が無いのもあるが」
「?」
「一番は…」
「お〜い、にいさ〜ん!」

言いかけた言葉を遮るようにして離れた場所にいるサスケがリクハの手を引っ張りかけ寄って来る。シスイは一番いいところを聞きそびれてしまったと苦笑いを浮かべた。

「にいさん聞いて、リクハねえさんすごいんだよっ」

イタチの前まで来て両手を広げてリクハの凄さを主張するサスケに笑みをこぼす三人。どうやら新しい手裏剣術を教えてもらったらしく、かなり上機嫌だ。微笑ましい兄弟の姿にほっこりしながらシスイの隣に腰を下ろしたリクハは『兄弟っていいね』と口にした。

「お前の兄貴ならここにいるだろ?」
『シスイッ…!!』

なんの意図もなくただ単に思ったことを口にしただけだったのだが、リクハは思いの外目をキラキラと輝かせてシスイの両手をばっ!と掴んだ。
そして、

『シスイ大好きっ』

なんて満面の笑みで言ったものだから、隣でその様子を見ていたイタチの機嫌が一気に悪くなったことは言うまでもない。

「お前、それは…っ」
『シスイはホントにいつも優しいなぁ』
「シスイ…」
「いや、違うぞイタチ。断じてオレは…」
「だめだよシスイさん!」

珍しく慌てた様子のシスイが、不服そうな表情で自分を見つめて来るイタチに対し誤解を解こうとした瞬間。サスケが頬を膨らませてシスイとリクハの手を一刀両断したものだから三人同時にフリーズした。

「いくらシスイさんでも、ねえさんはダメ!」
『サ、サスケ?』

何を言うのか待っていると、ん!とイタチを指差して口を開いた。

「リクハねえさんは、にいさんとけっこんするの!」
「「………」」
『…え?』
「ほかのひとなんて、ぼくがゆるさないっ」


親友の秘密
(幼い弟にはこの気持ちは筒抜けなのかもしれない)


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