「リクハ、額当て…少し曲がってるぞ」
『え?』
「直してやるからじっとしてろ」

そう言って、シスイがリクハの額当てを直そうと手を伸ばした時だった。「あー!」というまるでシスイの動きに待ったをかける幼い子供の声が聞こえて来たのは。どこか聞き慣れた声に視線を向ければ、少し離れた場所から見学に来ていたサスケが駆け寄ってくるのが見えた。何事かと思い「どうした?」とシスイが問いかけると、サスケの口から予想だにしない言葉が飛び出し二人はフリーズすることとなった。

「姉さんに触っちゃだめだよシスイさん!」
『「……」』
「リクハ姉さんは、兄さんの恋人なんだから」

目の前まで来て腰に手を当てながら自信たっぷりにそう言ったサスケに対し、二人は一瞬ワケがわからず顔を見合わせた。が、すぐに状況を理解したシスイだけが先に吹き出し笑い声を上げた。

「ああ、すまんすまん!そうだったなサスケ」
「シスイさんのことは好きだけど、だめなものはだめなんだ」
「リクハは妹同然だから、ついな」
「きもちはわかるけどさ!でも兄さんのだから」
「ぷっ…!ああ、サスケの言う通りだ」

首を傾げているリクハの横でサスケの頭をガシガシと撫でるシスイ。まだ幼いにも関わらず、しっかりと二人の関係を理解しているところが可笑しくて愛らしい。と同時に、サスケの兄に対する思いが伝わってきて改めて良い兄弟だとシスイは内心呟いた。

「姉さんも、相手がシスイさんだからってなんでも気をゆるしちゃだめだからねっ」
『え?』
「お。言うな、サスケ」
「当たり前だよ!なんたって僕の兄さんの恋人なんだから」

リクハは苦笑いを浮かべシスイと顔を見合わせてからくすくすと肩を揺らした。サスケからしてみれば大好きな二人の関係を少しでも邪魔しようものなら黙ってはいない…といった感じなのだろう。今は任務でいないが、イタチがこの場にいたら困った様な表情を浮かべていたはずだ。

「ねぇ、わかった?リクハ姉さん」
『え?あ、うん!もちろんっ。分かってるよ』
「ホントかなぁ?ちゃんと理解してる?」
『は、はいっ。ちゃんと理解してます』
「シスイさんもちゃんと見張っててよ。姉さんは時々抜けてるところがあるんだ」
『なっ…』
「ぷっ…はははははっ!」
『シスイ!』
「よく見てるなぁ、サスケ!いい観察力だっ」

アカデミーに入ったばかりの幼いサスケの的を得た発言に腹を抱えて笑うシスイ。確かにリクハは優秀だが、里の中では酷く警戒心が薄い。サスケはそれをよく理解しているらしく、真剣な表情で言ったところがまた可愛らしくて笑えた。

『もう!笑いすぎっ』
「はははっ。だって、事実だろ?」
『うっ…』

何も言い返せずに言葉を詰まらせると「でもさ!」と笑顔のサスケがリクハの服の袖を引っ張った。
そして…。

「そうゆうところが"かわいくてしかたない"って、兄さん言ってたよ」
『へっ…?』
「おおっ!サスケ〜、お前って奴は流石だなぁ」
「へへっ」

言わないで欲しいことと、言ってもいいことの区別などまだつかないサスケにとってこれはいいことなんだと判断されたようだ。シスイは完全に面白がってしゃがみ込み、サスケの肩に腕を回し恥ずかしがっているリクハの反応を見てけらけらと笑っている。シスイ相手ならからかわないでと反発もできたが、可愛いサスケにはそれができない。
こうゆうことには不慣れなリクハがあわあわしていると、タイミングがいいのか悪いのか少し離れた場所からサスケの名を呼ぶイタチの声が聞こえてきた。

「おーーいっ!兄さ〜ん!」

ぶんぶんと笑顔で手を振り走り出したサスケ。シスイは立ち上がるとリクハの隣に並び、視線はサスケたちに向けたまま口を開いた。

「顔」
『えっ?』
「真っ赤だぞ」
『だって、サスケが突然あんなこと言うからっ』
「はははっ。意外と女だな、お前も」
『シスイ私のこと何だと思ってるの?』

そりゃあ可愛い妹だが?と意地悪く言ってみると胡散臭いと返されてしまった。

「姉さーん!シスイさーん!いっしょにかえろー!」

イタチの手をぐいぐいと引っ張りながら歩み寄って来るサスケ。こうして見ているだけで兄弟とはいいものだなと思わせてくれる。リクハは平然を装いながらシスイと顔を見合わせて『余計なこと言わないでね』と念を押した。

「ねぇ、兄さん」
「ん?」
「さっきね、姉さんトマトみたいに真っ赤な顔してたんだよ」
「え?」
『サスケ、サスケサスケッ。言わなくていいから!』
「ははははっ!オレよりサスケを口止めしないとなリクハ!」
「一体なんだ」

ケラケラ笑うシスイにニコニコしながら口を開くサスケ。リクハの制止も虚しく次の瞬間にはイタチの頬までもが少しだけ赤く染まることとなった。

「兄さんが姉さんのこと"かわいい"って言ってたって教えてあげたら、姉さんトマトみたいだったんだよ。ね!シスイさんっ」
「なっ…サスケッ、お前…」
「ぷっ…あはははは!ナイスだサスケ」
『〜っ…!』
「えへへ」

不意にイタチと視線が重なると、一気に恥ずかしさが増し両手で顔を覆ったリクハ。『人をからかうな〜!』と可愛らしい反応を見せながら、シスイの背後に身を隠した。

「あー!だからだめだってば姉さん!」
「サスケ、もうよせ」
『穴があったら入りたいっ…』
「しばらくは楽しい毎日になりそうだな」


かれと思って
(ねえさんとにいさんがとってもだいすき!)


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