その日、木ノ葉の里の一部の忍びたちの間に衝撃が走った。

「ねぇ、聞いたアスマッ」
「ああ。三人とも無事なのかっ?」
「分からないわ、まだ情報が曖昧で…っ」
「オレが助けに行く!!!」
「待てガイ!もう暗部が向かった!」

まだハッキリとしない情報を受けた上忍たちは皆どよめき、信じられないと言った言葉が至るところで飛び交っていた。情報の内容こそ忍として生きている限り耳にすることはいくらでもあったし、珍しいことではなかった。にも関わらず何故こんなにも騒ぎになっているのかといえば、任務遂行のために組まれたスリーマンセルの人選にその理由があった。

「我が永遠のライバルが死ぬわけないだろう!?」
「だからまだ死んでないっつーの!落ち着け!」
「ならばせめて、里の入り口まで迎えに行くぞ!」
「やめなさいってガイッ。医療班の邪魔になるわ!」

紅とアスマが部屋から出て行こうとするガイの前に立ち塞がり、行く手を阻む。当然ながらこの三人にも情報は届いていて、今まさに驚きを隠せないでいるところだ。同期の中でも任務についた三人の実力を知っているからこそ、余計に信じられないのは至極当然のことだろう。ガイは悔しそうな表情を浮かべ拳を握りしめると、「無事で居てくれ!」と目を固く閉じた。



パリーンッ!

『…!!うわ、やっちゃった…!』

この騒動が起こる少し前、家で夕飯の片付けをしていたリクハの手から淡い桜色のグラスが滑り落ち、床の上で砕け散った。少しの気の緩みでグラスを落としてしまったことに後悔しながら、リクハは表情を歪める。

『どうしようっ…せっかくリンさんから貰ったのに』

私のドジ…!と自分を責めながら、砕けた破片に手を伸ばす。虫の知らせなんて言葉があるように、リンから貰ったグラスが砕けたことにいい気がせず一瞬だけ不安な気持ちが生まれた。

『そう言えばリンさん…珍しくカカシさんとオビトさんとスリーマンセルで任務につくって言ってたなあ。大丈夫かな…』

指を切らないよう気をつけながら、ちりとりに破片を乗せていく。片付けをしながら思い出すのは、先日久しぶりにスリーマンセルで任務にあたるんだと話してくれたリンの姿。カカシとオビトとリンは、アカデミーを卒業してからミナトを隊長にスリーマンセルを組んでいたが、各々が上忍になってからは三人で行動することも無くなり、今回久しぶりに二人と任務につけることが嬉しいんだとも言っていた。
花が咲いたように可愛らしく笑うリンの姿が脳裏に浮かび、リクハは小さく笑みを浮かべる。

『カカシさんとオビトさんが付いてるんだから、大丈夫だよね』

力のある二人が一緒なら大丈夫。そう自分の中で確信した瞬間だった、玄関のドアを叩く音が響いたのは。こんな時間に誰だ?と思いながら片付けを中断し、玄関に向かいドアを開くと…そこには。

「リクハ…!」
『え…あれっ?』
「下じゃ下!!」
『…!!!パックン!?』

カカシの口寄せ動物の、パックンがいた。

『ど、どうしたの!?なんでパックンがっ?』

チャイムが鳴らなかったのは人の来訪じゃなかったからで、リクハは全く想像もしていなかったパックンの登場に心底驚き驚愕している。カカシを師に持つリクハとパックンは面識こそあるが、まさか自分の家まで訪ねてくるとは思ってもみなかっただろう。

「とにかく急いで着いてこい!話は道中する!」
『え、ちょ、パックン!?』
「急げリクハ!」

すでに走り出してしまったパックンを追うため、理由も分からないまま靴を履き家を出たリクハ。二階の通路から一気に下まで飛び降り、パックンの横に並ぶ。

『全く状況が掴めないんだけど、パックンが私のところに来るってことは…カカシさんに何かあったの?』

表情を歪めてそう問いかけると、パックンはギリっと歯を噛んで「さすがはあいつの弟子だな…」と呟いた。

「いいか落ち着いて聞けよ。カカシたちは任務に失敗した」
『…えっ…!?』

一瞬、動いていた足が止まりそうになった。
パックンの言葉に、後頭部を殴られたかのような衝撃が伝わり鼓動が早くなるのを感じた。次の瞬間には様々な疑問や感情が湧き上がり、取り乱しそうになるが自分自身に落ち着けと言い聞かせる。

「オビトは重症、リンにいたっては…意識がない」
『!!!!』
「カカシは何とかワシを口寄せし、医療忍術に長けたお前に知らせるよう言われた」
『三人とも今どこに!?』
「暗部の増援のお陰ですでに里には戻っておる!急いでカカシたちの元に向かうぞっ」


師からの便
(あんなに幸せそうだったのに)


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