『投げかたわかる?』
「うん、本で読んだ。いっしょにやる?」
『うんっ』

同じ年。一か月違いで誕生したうちはイタチと仙波リクハは、その異端児っぷりをたった4年という歳月で周囲に知らしめた。互いの母親が客間で世間話をしている最中、二人は庭に面した縁側の上に広げたクナイを手に取り的当てをして遊ぼうと話し込む。上忍クラスである両親に教わるでもなく、イタチはもう三回は読み込んだ分厚い指南書に書かれていた通りの握り方をリクハに説明する。

『こう?』
「うん。投げてみて」

数メートル先にある円形の的を視界におさめたリクハは言われた通りに右手を上げて、力み過ぎない程度に勢いをつけながら手首を捻りクナイを離した。幼子の手には余るサイズのクナイは一直線に宙を駆け抜け、数秒もしないうちにトンッ!という心地よい音を響かせイタチが以前につけた跡の隣に突き刺さった。

「すごいよリクハ!初じめてなのにど真ん中だ」
『えへへへっ。そうかなぁ〜』

予想以上の結果とイタチに褒められたことが嬉しくて頬を染めてはにかんだリクハ。そのふわりと愛らしい笑顔につられてイタチの表情も綻ぶ。

「うかうかしてたらすぐに追い越されそうだ」
『私もイタチみたいにうまくなりたい!』
「十分上手いと思うけど」
『ううんっ。イタチはスピードもあるし、私のより深くささってるもん。やっぱり目がいいからかなぁ?』
「まだ写輪眼は開眼してないよ」

顎に手を当て『う〜ん』と自分の瞳を覗き込んで来るリクハに苦笑いを浮かべる。実力差などなかった幼少期。自分が特別だなんて思ったことはないけれど、あと数年してアカデミーで同期になる周りの子供たちとの違いは、幼いながらに感じ始めていた。後にうちはの天才忍者として名を轟かせるイタチにとって、自身と同じ価値観を持ち、ほぼ同じレベルでたいていのことをやってのけてしまうリクハの存在は、貴重で好奇の対象であった。しかしそれはリクハも同じだったようで…。

『動いてるクナイに当てられる?』
「どうかな、試したことないから」
『私がなげるからやってみて!』
「う、うん。いいけど」
『じゃあいくよ〜っ』

なんでも器用にこなしてしまうイタチには、いつも好奇心をくすぐられた。

「じゃあフガクさん、そうゆうことで話進めますわ」
「ああ。くれぐれも内密に頼む」
「任して下さい。根回しは得意…ん?」

ーキンッ、キンッ、キンッ

「「…???」」
『10、11、12、13!』

フガクの部屋から出てきたリクハの父、アキトの言葉を遮るようにして聞こえて来た金属音に、二人の視線が庭先に向けられる。愛娘のハツラツとした声の後にテンポよく響き渡る音に一体何をしているんだとアキトが歩みを進めると、縁側の縁に座り目の前で繰り広げられている光景を先に眺めていたハスナの隣に立ち問いかけた。

「なん、あいつらにクナイの投げ方教えたんか?」
「教えてない。勝手に覚えてくれたみたい」
「は?」
『イタチ、さいごの一本いくよ〜!』
「いつでもいいよ」

20本目のクナイが投げ放たれて、イタチが何食わぬ顔でそれを落とす。クナイとクナイがキンッと音を立ててから地面に落ちると、リクハが笑顔を浮かべて『すごいすごいっ』と拍手を送った。

『私もやりたい!』
「あ、うん。いいけど…ちょっと待って…」

きゃっきゃっと喜ぶリクハに気まずそうな笑みを浮かべて、背後から感じる刺さるような視線にイタチがゆっくりと振り返ると、そこには幼馴染の母親と父親がそれぞれ正反対な表情を浮かべて自分たちを見つめていた。

「イタチ君、天才…」
「リクハ、手裏剣術ならパパが教えたるわ」
『え〜、いい。イタチに教えてもらう』
「な"っ…!」
「イタチ君に任せとけば間違いないから黙ってて」
「おまっ、俺のかわいい娘がっ…」

ぎゃーぎゃーと口論を始めた両親を横目に、娘のリクハは『ほっとこう』とイタチの手を取りクナイを拾いに引っ張っていく。そんな二人の姿が視界の隅に入り込んだ瞬間、父アキトの罵声が飛んだ。

「イタチ!お前にリクハはやらんからな!」
「決めるのはリクハです」
「!?…クソガキがぁ…」
『とうさんあっち行ってて!イタチにかまわないでよ!』
「(ガーーンッ)……反抗期?」


幼馴染はの子



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