うちはセンリ処刑執行の日、ムスビはそこに居なかった。
居たのは彼を知る木ノ葉の上層部、里の上忍、うちは上役たちだけだった。そしてセンリの存在は戦争の一部として闇に葬られ、その後彼の名を口にする者はいなくなった。父に対する怨恨の末(そうゆうシナリオ)で行われたアキトによる実親殺しの一件を口にしようとした者は…その後不可解な死を遂げたとムスビは両肘を抱えた。

「こんな言い方は不謹慎だけど…」
『…?』
「ある意味では、アキトほど暗部に適した人間はいないと思うよ」

君以外の人間を人間と思っているかどうかも危うい男だったから…と続けたムスビにリクハは険しい表情を浮かべた。

「とまあ…センリさんの情報が残されていないってことに関しては今話した通りだ」
「アンタが最初にセンリと面識がないと言ったのは、アキトさんの幻術の影響だったんだな」

不快な表情で黙っているリクハを横目に、イタチが腕を組み問いかける。

「うん。今の話も、アキトが幻術を解いてくれた時に蘇ってきた記憶なんだ。不思議な感覚だよ。アキトからセンリさんの話を改めて聞いた時も本当に他人感覚だったし、ただ知らない人の話を聞かされているような感じだったからね」

幻術にかけられていることをこんなにも強く認識しているのに、センリのことだけはどうしても思い出せないと首を捻るムスビ。

『…なぜ、幻術を解かないんですか?』
「ああそれは…」

リクハの率直な問いかけに、ムスビは苦笑い浮かべ口を開いた。

「解かないんじゃなくて、解けないんだよ」
『え…解けない?』

片方の手のひらを上げながらそう言ったムスビの言葉に、イタチはわずかに両眉を上げた。自他ともに解術不可能なアキトの幻術。術をかけられたのは自分たちが生まれるよりも前のことで、持続期間だけでも10年以上は経過している。その間術の効果が薄れることはなく、彼の計画通りムスビの記憶からはセンリという存在が綺麗に無くなっている。
昔から強者であることは分かっていたが、今になって再び彼の持つ瞳術の強さに好奇心が沸き上がるのを感じた。

「アキトは術の詳細を他人に話したがらない性格でね。どんな術なのかは…聞いても教えてくれなかったよ」
『…親友だったムスビさんにも?』
「うん」
『あの、さっきから話を聞いてると、その…』
「ああ、アキトの性格の悪さでしょ?」
『…はい…、本当…どう謝ればいいのか…』
「謝らないで。僕はそうゆうとこも気に入ってんだ」

表情を歪めたリクハに対し、声を出して笑うムスビ。どれほど器が広いのか、彼の寛大さは大海原のように広大で深い。本当に良い親友を持っていたんだなと、ムスビに対して感謝の気持ちが湧き上がった。

「とにかく、今日君たちに会えてこの話をできて良かった。疑問に思う点はいくつかあると思うけど、今日のところはこの辺にしておこう」
『…あの、ムスビさん』
「ん?」
『…父の身勝手な感情で、ムスビさんを巻き込んでしまってごめんなさい』

すでにイタチとシスイを巻き込んだ。
そしてムスビまで。
リクハは自分たちの命を守る為だけに進んでいく道筋のようなものに、強い利己的な感情を感じて少しばかり気持ちの悪さを覚えた。

「リクハちゃん、それは違うよ」
『え…?』
「巻き込まれたなんてとんでもない。これは僕の意志だ」
『……ムスビさん』
「君だって、イタチ君とシスイ君が困っていたら手を差し伸べるだろ?」
『…………』
「それと全く同じだと思うよ」

リクハにとって、イタチとシスイが自分の命以上に大切だと思える存在のように、ムスビにとってのそれがアキトだったということなのだろう。優しい笑顔で笑ったムスビに、リクハは少しばかり背筋を伸ばして感謝の言葉を口にした。


Mission.10-2


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