数年前。
任務で殉職したリクハの両親。とても危険な任務だったと、イタチの父フガクは言っていた。ミコトは親友の子であるリクハに同居を申し出たが、幼い少女が首を縦に動かすことはなかった。家族三人で住んでいた一軒家から、今は三代目が用意したアパートで一人暮らしをしているリクハ。生活においては、何不自由してないと本人は言っていた。
「(…まだ帰っていないのか)」
時刻は九時を回った頃。
通常任務であれば、もうとっくに帰宅しているはずだ。
待つのもいいが、医療忍者である幼馴染が研究に没頭して朝まで帰ってこないなんてことはざらにある。
ここで一晩越すわけにはいかない。
そう思ったイタチは、もうしばらく待ち、帰らぬようであれば諦めようと鍵のかかったドアを見つめた。手持ち無沙汰ではと思い買ってきたリクハの好物。喜ぶ顔が見たいなどと柄にもないことを考えながら、イタチは夜空に輝く無数の星を見上げリクハの帰りを待つのだった。
*
その頃、リクハはというと…。
『よしっ!また一歩前進!』
一枚の通知書らしき物を見つめながら、嬉しそうに家へとつながる道を歩いていた。両親が亡くなり早4年。本当にいろんな人たちの支えがあってここまでこれた。何度もくじけそうになった時もあったが、今日やっと、自分の目標であった母親に…一歩近づくことができた。
『本日付で貴殿仙波リクハを、正式な医療上忍・仙波式高等医療忍術継承者と認める!』
先ほど三代目から手渡され、通知書にも書かれている文面をそのまま読み上げたリクハ。嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。この認定書が有ると無いとでは、医療忍者として携われる任務のレベルも変わってくる。より過酷な環境下での治療に従事し、一人でも多くの命を救うことができるのだ。
胸の奥から湧き上がって来る喜びを感じながら再び夜空を見上げ、ずっと自分を見守ってくれているであろう両親に向けて思いの丈を口にした。
『母さん、父さん、私まだまだ頑張るからねっ』
"さっそく明日からバリバリ修行するぞ!"と、己を激励する声が聞こえ、イタチはどこか嬉しそうな苦笑いを浮かべながら、2階の通路から下にいるリクハに向かって声をかけた。
「そんなに大声出したら、警務部隊に注意されるぞ」
『…あ…』
「おかえり、リクハ」
『…イタチ』
夜空に向かって両手を上げたまま、まさか居るとは思っていなかったイタチの存在にフリーズしているリクハ。叫んでいるところを聞かれたことは恥ずかしいが、今はそれよりも幼馴染に会えたことが嬉しくて気恥ずかしさはすぐに消えてしまった。
『…イタチ。え?…イタチ?』
「別人に見えるか?」
『ごめん、久しぶりだったから』
「早く上がってこい。ほら」
『…!それは私にっ?』
「ああ」
『やった!』
イタチが持っていたケーキの箱を見せれば、リクハはおもしろいくらいに顔を輝かせてすぐさま地面を蹴り2階の通路に飛び移った。「ほら」と渡した箱を物凄く嬉しそうに受け取るものだから、イタチの顔にも自然と笑顔が浮かぶ。待っていたかいがあったと嬉しそうなリクハを見つめながら思った。
そして、鍵を開け終えたリクハがおもむろに振り向きイタチに笑顔を見せたすぐその後で、胸元に軽い重みが加わった。腰あたりに回された腕に、その温もりに、イタチは驚きのあまり驚愕し先ほどのリクハのようにフリーズ状態に陥った。
「……」
『ありがとうイタチ』
「……」
『抹茶のケーキ。私の大好物っ』
「あ、いや。…いいんだ」
『でも、それ以上に…』
「?」
『イタチに会えて、すっごく嬉しい!』
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