数年前から一人暮らし。
生活面においては三代目様がいろいろサポートしてくれているから、特別困ったことはない。
ただちょっと…ちょっと寂しいだけなんだ。

『さ、入って』
「すまないな、突然」

そう言いながら脱いだ靴をしっかり揃えるイタチ。彼の育ちの良さを目の当たりにする度に、厳格なフガクの顔が脳裏に浮かぶ。几帳面で真面目で、品すら感じさせる幼馴染からは学ぶべきことが多い。

『適当に座って。今お茶淹れるから』
「リクハ、オレがやる」
『え…?』
「また火傷するぞ」
『うっ…』

苦い思い出が蘇り言葉を詰まらせていると、持っていた急須をスッと奪い取られた。ハッキリ言って…リクハは料理と名の付く作業が大の苦手だ。それは「この世で一番苦手な分野だと言っても過言じゃない」と、イタチとシスイに断言される程に。
なんてことを言うんだと思ったが、自分の作った料理を食べ体調を崩した被害者である彼等の言葉は説得力の塊である。ただお茶淹れは料理ではない。

「前から思っていたことがある」
『なに?』
「お前、手術が出来るほど指先が器用なのに何故料理が出来ないんだ」
『…イタチ、それは一番触れちゃいけない繊細なとこだよ』
「…そうか。すまない」

器用にお茶を淹れながらくすっと笑って悪びれる様子のないイタチ。彼はなんでも器用にこなす。昔からだ。

『医療と料理は別物でしょ?』
「それはそうだが、人体を切るより簡単だ」
『メスは包丁より小さいもの』
「サイズの問題じゃないと思うが」
『今馬鹿にした?』
「いや」

小さく肩を揺らし笑うイタチ。

『完璧になんでもできるイタチとは違うの』
「別に完璧じゃない」
『でも私より料理上手いじゃん…』
「……たまたまだ」
『今少し間があったよ?…イタチに負けないように練習しなきゃ』
「男のオレと料理の腕を競い合う必要があるのか?」
『ガイさんがよく言ってるの。永遠のライバルはいたほうがいいって』
「………」
『イタチは私にとっての良きライバル』
「…(ライバルか)」

忍としてここまで自分が成長できたのは、両親や先生たち、周りの大人の導きがあったからこそ。しかしリクハにとってはイタチが一番。幼馴染のイタチが努力を積み重ねているから、自ずと自分も前に進めるのだ。そんな風にイタチの背中を追いかけるのは、できるだけ隣を歩きたい意地と、彼の隣は譲らないというプライドがあるから。

『それに、イタチが近くにいてくれると私は凄く嬉しい』
「……」
『うわっ!ちょ、零れてる!!』
「…っ」




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