『…約束の…地?』
リクハのつぶやきに呼応するかのように、吹き抜けた風が木々の葉を揺らし空色の髪を撫でる。はじめて聞くその名に、妙な懐かしを覚える。まるで昔の思い出を振り返っている時のような、そんな感覚。
「アキトはそう言ってた。その場所についての詳しいことは教えてくれなかったけど」
もう幾度となく繰り返されるムスビの苦笑いとそのフレーズに、イタチは何の反応も示さなくなり、リクハはつられて苦笑いを浮かべる。
「ただ、かなり重要な場所ってことは確かだよ」
そう言いながら一歩踏み出したムスビが、薄霧漂う森の入り口に手を伸ばした次の瞬間ーー、
ーバチッ…!
『!』
空間が歪み、近づけた手が弾き返された。
「これはハスナの結界術だ」
扉をノックするようにして再び何もない空間にムスビが触れると、バチバチと音を立て空間が歪む。
術に組み込まれたチャクラの所有者と、彼女から刻印を受けた人間だけがこの先へと進むことができる。それ以外の人間、動物、物までもがこうして弾かれると説明するムスビのうしろでイタチとリクハは歪む空間を見つめたまま思考する。ここに案内されたということは刻印、つまりマーキングを施された人間は自分たちであると。そんな聡い二人の思考を読み取るかのように、ムスビが続ける。
「ハスナはある三人の赤子の出産に立ち会い、誰にも気づかれないよう体の内側に刻印を施した」
『三人…?』
「そう。君とイタチ君と、あと一人」
分かるでしょ?と言わんばかりのムスビの笑みに、顔を見合わせたイタチとリクハが思い浮かべた人物はただ一人。
『シスイだ…』
「当たり」
「娘であるリクハは納得できるが…何故オレたち二人にも刻印を?」
絶対に問われるであろうと予想していたイタチの疑問。
当時、ハスナが言っていた言葉を記憶を呼び起こしながら鮮明に思い出す。彼女の抱いた想いが伝わるように、ムスビは丁寧な口調で話し始めた。
「これから君たちに、護人についての話をするね」
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