『ナルト?』
「……」
『おーい、ナルトー?』
「………」
『ナルト君ってばー』
「…………」
『うずまきナルトくーん??』
「……………」
「あれま。完全にそっぽ向いちゃってるね」
『カカシさんなんとかして下さい』

大好きなリクハの呼びかけに一向に応じようとしないナルトは今、完全にふて腐れている。口をとがらせ、そっぽを向き、頬杖をついて目の前にある団子にさえ手を伸ばそうとはしない。
今日は晴天。久しぶりの休日。たまには二人で出かけようということになり、ナルトとリクハは茶屋に来ていた。目の前には困り顔のリクハと、その隣には彼女の師でありナルトの担当上忍であるかの有名な『はたけカカシ』の姿が。彼もまた久々の休日らしく、たまたま行き会ったので茶屋で甘味を一緒に食べようという経由がありここにいるのだ。
しかし何気ない会話の中で、話題はリクハの婚約話に切り変わる。「めでたいねー」とか、「ついにリクハが結婚かー」などと昔を懐かしそうに思い出しながら話すカカシとは裏腹に、ナルトの表情はどんどん曇っていったのだ。

「ナルトの奴、完全にヤキモチだねこりゃー」
『ナルト、そうなの?』
「…べっつにーーー」
「(分かりやすい奴だな…)」
『何が不満か言ってよ』
「べつに無いってばよ」
「はい、それウソね。そんな顔で言われても説得力ないぞ」
「カカシ先生には関係ねーだろ?」
「そんな言い方ないでしょナルト」

いつものようにやる気の感じられない口調のカカシだが、ここ最近のナルトを心配しているのは確かだった。大事な任務中でもどこか上の空だったり、大好きな一楽のラーメンをおごると言っても気乗りしなかったり。
一応理由は分かっていたが、他に何かあったんじゃないかと親代わりでもあるリクハに聞いてはみたものの、『私にも理由を話してくれないんです』と分からずじまい。カカシは口をへの字に結んだナルト見つめながら、苦笑いを浮かべた。

「だんまりなんてお前らしくもない」
『そうだよ?言いたいことはハッキリ言わないと』
「……」
「(仕方ないな…)言ったら一楽のラーメン奢ってやるよ」
「…!…い、いいってばよ…」
「しかもチャーシュー大盛りで」
「うぐっ……」
「今なら替え玉一回付き!」
「ぬぐぐぐっ…」
『私はそこに餃子も付ける!』
「うぐぐぐっ……い、いらねーって…」
「あーじゃあ、イタチにでも奢ろうかなー?」
「…分かった!言う!言うってばよ!!」
『「(単純…)」』
「カカシ先生、リクハ姉ちゃん今の約束だかんな?一楽のラーメン」
「はいはい。分かってるって。で?どうしたのよ」

あっさりと口を開くことになったナルトをかわいいなーと思いつつ、リクハは注文した抹茶のアイスクリームにスプーンを滑らせる。ナルトはそんなリクハに視線をむけると、相変わらずのふて腐れ顔で呟くようにして口を開いた。

「オレってば、別に姉ちゃんとイタチが婚約したことに文句はねーんだよ…。むしろ、姉ちゃんには幸せになって欲しいって思うし…」
『ナルト…』
「だけど、なんつーか…その…最近の姉ちゃんはイタチのことばっかで、オレのことなんかどーでもいいって思ってんだろーなって…考えてた」
『!!』

しゅん…とあからさまに拗ねたような表情で俯くナルト。

「あらー。お前が随分とマイナス思考じゃないの」
「だってよカカシ先生!姉ちゃん酷いんだってばよ!?」
『人聞きの悪いこと言わないでよ』
「この間はイタチの好物とオレの好物間違えたし」
『些細な間違いくらいありますよね、カカシさん』
「…そうだな。オレなら可愛いなぁって思う」

しみじみ言うカカシに一瞬苦い表情を浮かべたナルトとリクハ。

「それだけじゃねーもん!イタチには愛妻弁当作るくせにオレには手抜きおにぎり!しかも毎日梅かおかか…たまにはシャケとかたまごが食べたいってばよ!」
『あんたがそうしてくれって言ったんでしょ!?』
「え、そこ?具の問題?」
「あとあれな!ノロケ話はこりごりだってばよ!」
『惚気話しなんてしてない!』
「いっつもしてんじゃん!」
『小さいこと気にしてると女の子にモテないわよ!?』
「そっちこそ!もうちょっと気ぃ遣わねぇとイタチに愛想尽かされるぞっ」
「(それは絶対ないと思うけどねー。…と言うか…)」

キョロキョロと店内を見回すカカシ。言い合っている二人は気づいていないだろうが、他のお客の視線が注がれ過ぎていてチクチクと痛い。こんな公共の場で親子喧嘩とは空気の読めない人間がすることであって、その点においてはナルトもリクハも似た者同士と言えるだろう。
勢いに乗って募り募った不満を口にするナルトに、リクハも下手に噛みつくから騒がしい言い合いになってしまうのだ。「ちゃんと受け止めて聞いてあげるんじゃなかったのリクハ?」と、内心思いつつ、カカシは二人の仲裁をするべく口を開いた。

「はい。わかった。まず一回黙ろうか、二人とも」
「てか、ぶっちゃけイタチのどこがいいんだよ!顔かっこよくてち〜っと忍術すごくて写輪眼なだけじゃん!」
「おーい、先生の話聞いてるー?」
『あのね。イタチは全てが素敵なの。ナルトみたいにくだらないお色気の術とかやらないし』
「お色気の術なめんなってばよ!エロ仙人公認だぞ!?」
『いばるな!師弟揃ってエロ・変態・女の敵!!』
「あー!!それ言っちゃう!?姉ちゃんの本音それか!」
「おい、黙れお前ら」
『「…(ビクッ)!!」』

カカシの言葉など聞く耳持たない二人にシビレを切らし、ついに両目からビームが出そうなほどの眼力と殺気をかもし出しながらドスのきいた声で一括したカカシ。これには流石の二人も言い合うのを止めざる得ないわけで、まるで傀儡のように首をギギギ…とカカシの方に向けるナルトとリクハの視界に映りこんで来たのはやっぱり目からビームが出そうなカカシだった。

「カ、カカシせんせっ…?」
『目からなんか出そうですよ?ハハ…』
「お前らが人の忠告聞かないからでしょーが!それにオレだってなぁ!ナルト!」
「…な、なんだってばよ…?」
「オレだって、小さいころから面倒見てきたカワイイ、カワイイもうホントにカワイイ愛弟子のリクハが結婚しちゃうの寂しいんだからっ!!」
『……』
「………」
「しかも相手があのイタチでしょ?オレは暗部で一緒だったから知ってるけど、アイツは真面目だしいい男なのよ…。どっかの馬の骨だったら雷切り!だったけどさ、イタチじゃあ文句の付けようがないじゃない…」

さっきまで冷静に二人を見ていた時とは一変。今度はリクハの師であるカカシが酷い顔…(目しか見えないが)で嘆くように本音を言い始めた。
そんないい年したおっさんを、遠い目で見つめる弟子二人。

「オレの…っオレの唯一の癒しだったのに…っ」
「なんか…キモいってばよ」
『けっこうキツイなー…』
「リクハちゃん。考え直さない?結婚…」
『ちゃん付けやめてくださいカカシさん。キモいです』
「ぐあっ…!」
「うお!カカシ先生が吐血したってばよ!キモいって姉ちゃんに言われるとダメージでかいんだなー…。オレも気をつけよ…」


これはとんだ茶番な日常
(毎日こんな平和だといいんだけどね)


*前 次#


○Top