「こんにちはリクハちゃん。オレのこと覚えてるかな?」
『…うん!ミナトせんせー!』
「アッハハハ!そう、大正解だよっ」
「ほら、リクハ。挨拶して」
『こんにちわっ』
「いや〜、ハスナ。リクハちゃんホントかわいいね」

言いながら自分を見上げているリクハを軽々と抱きかかえるミナト。
同期の愛娘であるリクハは、ミナトをはじめとする忍び達の中でももっぱら「かわいい」と評判なのだ。
母親似の美しい空色の髪と大きな瞳。
すっとした鼻筋は父親似だとよく言われた。
おてんばで好奇心旺盛なところは完全に両親の遺伝子を受け継いでいる。ハスナもアキトも幼い頃は本当に落ち着きのない少年少女だったと、同期や担当上忍たちが口をそろえて言うほどだ。
しかし我が子でもない他人の子がここまでかわいいとなると一体、自分の子はどれほどまでに愛おしく思えるのだろうとミナトは自分の腕の中でケラケラと笑っているリクハを見つめながら思った。

「でも、本当にいいの?この子を預けて…」
「大丈夫だよ。オレの直属の部下だし、優秀だからさ」
『ミナトせんせ〜、あのボールだしてーっ』
「ハハハッ。あれは螺旋丸って言うんだよ」
『らせん……がん?』
「螺旋丸。アキトの性質を受け継いでいれば、リクハちゃんもできるようになるよ」
『ほんと!?わたしにもできる!?』
「うんうん。その時はオレが教えてあげるからね」

―コンコンッ…

「あ、来たようだね」
「ミナト先生、失礼します」

会話の途中、扉をノックする音が響きハスナとミナトの視線がそこに注がれる。まだ若干声変わりの終わっていない少年の声が聞こえ、扉がゆっくりと開かれれば口元を黒い布で覆い、なんとも表情の掴めない銀髪の少年が部屋の中に入って来た。
色白の肌にどこか遠くを見据えているような瞳がハスナをとらえると、少し驚いたような仕草を見せてから頭を下げて挨拶を交わす。

「お久しぶりです、ハスナ先輩」
「ミナトの部下ってカカシのことだったんだ」
「そう言うこと。ハスナもカカシの噂は聞いてるでしょ?」
「確かに、君になら任せられるかな」
「え?何です?」

まだ任務内容を聞かされていないカカシは、不思議そうに問いかけながら自分をこの場に呼び出した張本人であるミナトに視線を向ける。それと同時に視界に入ってきたのはミナトの腕に抱かれている、見たことのない少女。どことなく目の前に居るハスナに似ている気がするが、核心もなく疑問が浮かび上がった。

「オレとハスナ、それにアキトのスリーマンセルで今日任務に就くことになってね」
「はい」
「たぶんそこまで時間のかかる任務じゃないとは思うんだけど、オレ達が任務に出ている間、この子の面倒を見てあげて欲しいんだ」
「はい。……え??」
「よかった〜、引き受けてくれて!流石はミナトの部下!」
「優しい子だからね、カカシは」
「え、ちょっ…ちょっと待ってくださいミナト先生!!それ、あのっ…どうゆうことですか!?」

盛り上がる二人をよそに、カカシは一人理解ができないと言った視線でミナトに詰め寄る。
一体何がどうなってるのか、しっかりとした説明を求めているカカシにミナトは苦笑いを浮かべながら「ごめんごめん」と謝罪の言葉を口にした。

「まずは紹介からだね。この子は仙波リクハちゃん。ここにいるハスナとアキトのお子さんだよ」
「え…っ。お、お二人って…お子さんいたんですか??」
「ずっと知り合いの家と実家の往復しかしてなかったから、知らなくても無理ないわね」
「リクハちゃん、この子ははたけカカシ。オレの部下で、将来はきっと君の上司になるお兄さんだよ」
「や、やめてくださいよ先生っ…」
『カカシー…?』
「今日は一日、このカカシと一緒にいるんだよ」
『わかった!』
「物分かりが早いわねっ、いい子よ」

笑顔で我が子の頭を撫でるハスナ。
おてんば娘が、随分と母親らしくなったものだ。

「あの…ミナト先生?」
「なんだいカカシ」
「その…まさかとは思いますけど…」
「うんその通り!これはれっきとした君への任務だよ」
「…!!む、無理ですって…!オレ、子供のお守りとかしたことないしっ…」
「大丈夫よカカシ。この子、すごく人懐っこいしすぐに仲良くなれると思うから」
「いやっ、でもっ…て言うかそう言う問題じゃなくてですね…っ」
「それに、お守りと言ってもそこまで堅苦しくとらえる必要はないわよ?一日この子と遊んでくれればいいだけだから」
「(いや…だからそれが無理なんだって…)」

笑顔でサラッと言いのけるハスナはとても清々しくカカシに任せる気満々のようだ。ミナトはもはや、カカシに拒否権はないと言った感じでリクハと「カエルの歌」をハミングし始めている。
直属の上司からの緊急な呼び出しで何事かと思い来てみれば、頼まれた任務?内容は上忍の愛娘のお守り。しかもかなり名の知れた二人の娘を…だ。何かあってからでは大変なことになる。
しかも相手は女の子。男の自分に…兄弟もいない自分にどう面倒を見ろと言うのだろうか。カカシは内心深い深いため息をつき、ミナトの腕の中に居るリクハを見上げた。

「なぜオレなんですか?もっと適任がいると思うんですけど」
「最初はクシナにお願いしようと思ったんだけど、彼女は別の任務で里に居ないし、そこまで親しくもない人に任せるのも嫌だと思って。そこでミナトにお願いしたら君が居たってわけ」
「いや、それこそオレ全然親しくないじゃないですか」
「大丈夫。ミナトの部下だし」
「え、なら旦那さんだって担当上忍やられてるんですからその生徒さんでも…」
「ああ、あの人の受け持ちはダメよ。荒くれ者しかいないから」
「……」
「ま、そう言うことだ。頼んだよ、カカシ」


はたけカカシのランク任務
(ミナト先生…自分の子じゃないのに溺愛ですね…)
(カカシもこうなるよ)
(……想像しただけで気味が悪いですよ)


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