『カ〜エ〜ル〜のう〜たぁが〜』
「……」
『きぃ〜こ〜え〜て〜くりよ〜』
「(きこえてくりよ?)」
『クワッ、クワッ、クワックワッ』
「(はぁ〜〜〜〜…)」
『ゲロゲロゲロゲロ、クワッ、クワックワ〜〜!』

―ガバッ!

「うおっ!な、なに…っ」
『カカシのおにちゃんなにしてあそぶ?』
「おにちゃんじゃなくてお兄ちゃんだろ?て言うか、カカシでいい」
『うんっ』
「はぁ…」

昨日降った雨でできた水たまりをジャンプしながら先を歩いていたはずのリクハが急に飛びついてくるものだから、カカシはしっかりと受け止めながらも本当に人見知りしない幼いリクハにため息を吐いた。
どうして自分がこんなことを…。
カカシの服を引っ張り『ねーねー』と言っているリクハから視線を反らしながら、早く一日が終わらないかなと考える。

「あー、わかったから服を引っ張るな」
『うん。カカシはなにしたい?』
「別に何でも」
『いつもなにしてあそんでるの?』
「遊んでない。オレは君のお父さんやお母さんと同じ、上忍なんだ。いつもは任務」
『じゃあカカシはつよいの?』
「ああ。君よりは」
『じゃあ、グルグルボールつくれる?』
「(質問多いな…)」

太陽の光を受け、キラキラと輝くリクハの大きな瞳。幼くして戦争を体験したとはいえ、まだまだ純粋なそれを真っ直ぐ見つめるには自分は多くを知り過ぎた。
カカシはリクハと同じ視線の高さまでしゃがみ込むと、「ふぅ…」と一呼吸置いてから怪訝そうな眼差しを向けたまま口を開く。

「なに、そのグルグルボールって…」
『ミナトせんせーが手のうえでつくるんだよ。すごくかっこいいの!』
「…ああ、螺旋丸のことか」
『うん。らせがん!』
「いや、"らせんがん"ね」
『やって、やって!!』

小さな両腕をパタパタと上下に動かし好奇の目でカカシを見ている。なんとも落ち着きのないおてんばだと思った。

「…やったら静かにしてくれるわけ?」
『うん!』
「絶対だぞ」
『やくそく!』
「はぁ…」

仕方がないと思いながら、リクハと距離を保つカカシ。
調子に乗って触れてきたりでもしたら大変だ。

スッ…

『わーっ…!』
「いくぞ?(螺旋丸なんて見せてケガでもされたら困る…)」
『うん!』
「…口寄せの術!」

ボワンッ!

期待に胸を膨らませていた光景とは全くもって似つかわしくない白い煙がモクモクと立ち込める。リクハは何が起きたのか理解できず、ポカン…としたまま立ち尽くしていると、カカシとは別の聞いたことのない声が聞こえてきた。
好奇心から笑顔を浮かべ、煙の中をジッと見つめているカカシに駆け寄るとそこには何やら小動物の影が見える。

「呼んだか、カカシ」
『………』
「ああ。ちょっと付き合ってほしくてさ」
『わぁっ…!』

へのへのもへじの書かれたちゃんちゃんこに、木の葉の額当てを付け、眠たそうな、目つきの悪い視線をこちらに向けているのは、カカシの口寄せ動物である忍犬の…、

『わんちゃんだ!!!!』
「パックンね」
『さわっていい!?さわっていい!?』
「どーなの?いいのパックン」
「おい、誰だこの娘っ子は」
『しゃべったー!!!』
「リクハ、彼は忍犬のパックン。君のお母さんが持ってる白孔雀のハクセンと同じ口寄せ動物だ」
『ハクセンといっしょ?』
「そう。で、パックンこの子はリクハ。アキト先輩とハスナ先輩の娘さんだよ」
「なっ…。娘!?あいつらのか!?」
「やっぱ驚くでしょ」
「仙波一族の…そうか。で、カカシ。何故お前が一緒に居る。子守か?」
「……任務だよ。一応」

ニヤリと小バカにするような笑みを浮かべたパックンから視線を反らし、ふてくされた様子で反論するカカシ。
まさか上忍になった主が「子守」を任せられるとは、何とも笑える話である。

『わぁっ、わぁっ。らせんがんよりすごい!』
「よかったじゃんパックン。気に入られたみたいで」
「拙者は仙波一族の人間はワリと好きだぞ。皆いい奴ばかりだ」

そう言うと初対面の人間相手に警戒することなく自分から歩み寄っていくパックン。その行動に少々驚かされたが、パックンに少しでも近づこうとしゃがみ込んだリクハがその頭を撫でたことにはさらに驚かされた。
仙波の人間はみな「心の広い太陽のような人間性の持ち主が多い」と、いつだったかミナトに聞いたことがあった。それ故に一族というものに囚われることが少ない。あの「うちは一族」とも昔から交友関係を築いているくらいだ。

『こんにちわっ。リクハだよ』
「パックンだ」
『すっごくかわいいっ』
「か、かわいい!?バカにしておるのかっ」
「いや、顔が嬉しそうなんだけど」
『わたしパックンとあそびたい!』
「だってよ?」
「お前…このために拙者を呼んだな?」
「いいじゃない。子供は動物好きだって言うし」
『わたしパックンすきー』
「ほら」
「はぁ…。仕方ない、この子の父親には恩があるしな。わかった」
「さすが。頼りになる」
「このパックン、今日一日子供の子守に付き合ってやる」

忍犬ックン
(パックンとおともだちになる〜)
(リクハこう見えてもパックンはおじさんだぞ)
(カカシ!年長者に対する態度を学べお前はっ)


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