「はあ〜あ〜…」
「カカシ先生どうした?そんなふか〜いため息ついてさ」
「ああ…ナルトか。見てよアレ」
「あ?」

ここは里から少し外れた場所にあるだだっ広い草原。
いつも以上に覇気のないカカシが指差す方には特別講師としてナルト達世代に修行を付けているリクハの姿がある。今はリーの体術をスルリと受けたり交わしたりしながら何かの説明をしている最中。あの光景のどこに落ち込む要素があるのか分からず、ナルトは首をかしげながら再びカカシに視線を戻した。

「いつの間にかあんなに立派になっちゃって…」
「リクハ姉ちゃんが?」
「そう」
「嬉しくねぇの?愛弟子だったんだろ?」
「愛弟子も愛弟子。ホントもうすっごい手をかけて可愛がったんだから」
「ちょっとキモいけど…それでなんで落ち込んでんの?」

いい年したおじさんが年頃の愛弟子を前に瞳をウルウルさせて言葉を詰まらせている。さすがのナルトも若干引き気味だが、こんな姿のカカシはなかなか見慣れないものだから気になってしまうのか、一応話を聞こうと問いかけた。
するとカカシは再び「はあ〜」と深いため息をついてから、ナルトに視線を向けポツリポツリと話し始めた。

「昔はさ、リクハもカカシさん〜って頼ってくれてたのよ…」
「……おう」
「カカシさんかっこいい〜とか、早くカカシさんみたいになりたい!とかさ」
「……おう」
「それが今じゃ…特別上忍で、木ノ葉の医療チームの中心人物…」
「…めでたくね?」
「なんか、オレの出る幕ないじゃん…」
「要するに…姉ちゃんが離れていっちまうのが寂しいのか?」
「うん。めちゃくちゃ寂しい」

リクハを見つめながらしみじみそう言ったカカシに、ナルトは苦い表情を浮かべるしかなかった。
弟子が離れて行くという気持ちは自分には分からないがこの落ち込みようからすると相当なのだろう。
ナルトは「元気出してくれって」と励ましながらも、この場から立ち去りたい気持ちにかられていた。

「ホント…昔はさあ…」
「(まだ続くのかってばよ…)」

『カカシさん!』
「ん?リクハ。どうしたの」
『いつもお世話になってるので、コレ作ってみました!』

そう言いながらリクハが嬉しそうに差し出したのは、少しだけ不格好のお守り。作ったという言葉からして、自分のために手作りをしてくれたということ。暗部所属のこの頃は連日暗い任務が続いてばかり。そんな毎日の中でのリクハとの繋がりは、本当に希望の光そのものだった。

「これ、オレに?」
『はいっ。カカシさんが、いつも無事で帰ってきますよーにって』
「……」
『あ…迷惑でした?』
「え、いやいやっ…。凄く嬉しいよ、ありがとな…リクハ」
『えへへへっ。私の大事な先生ですからっ』


昔の事を語りながら、べストの胸ポケットから大分ボロボロになってしまったあの時のお守りを取り出すカカシ。任務に行く時はもちろん、何もない時だって肌身離さず持ち歩いていると言う。そんなカカシのリクハを思う気持ちに、ナルトは自分と自来也を重ねた。

「一緒に修行して、飯食って、任務に出て、毎日楽しかったのにさぁっ」
「オレも、エロ仙人と一緒にいる時は楽しいってばよ」
「そうでしょ?あいつの笑顔見てると、辛い任務も頑張れたんだよオレ…」
「分かるってばよっ」
「なのに今はもう、あいつ一人で…オレの癒しがっ…」

お守りを両手で握りしめ、ついに顔を膝にうずめたカカシ。それを見てナルトは、「カカシ先生!」と何に感化されたのか同情の眼差しで慰める。

「一時期はイタチじゃなくてオレのこと選んでくれそうだったのにっ…」
「え!?まじかっ」
「どこで失敗しちゃったんだろうなぁっ…惜しみなく愛情注いだのに!」
「なんかかわいそうだってばよ…カカシ先生」
「オレのリクハ〜…ぐすん…」
「…カカシ先生ぇっ…元気出せってばよぉ!」

情けなく、どこまでもへタレ全開のカカシにナルトはある決意を固めていた。それは、自分が一肌脱ぎどうにかカカシに元気を出してもらおうというもの。とても単純で、本当にどこで感化されたのかは分からないが本人はもうその気である。

「よっしゃ!このオレが日ごろお世話になっているカカシ先生に、恩返しをしてやるってばよ!」
「ナルトッ…!」
「オレに任せろってばよ!」

そうして後日、七班であるサスケとサクラを巻き込みナルトが計画したとある一日が始まるのである。


カカシ先生のお守
(それはずっと大切な宝物)


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