「おい、姉さんはイタチの恋人だぞ…オレにそんなこと協力しろってのか」
「そうよナルト。イタチさんに知れたらどうするのよ」
「わかってねぇな二人ともっ。これは師弟の絆を再確認する大事な計画なんだってばよ!?」
修行終わりにナルトから突然持ちかけられた話に耳を傾けた二人。が、イタチの弟であるサスケはそりゃあもう不快オーラ全開でそれを拒絶する。そもそもそんなことで落ち込んでいるカカシのヘタレっぷりに腹が立つ。
「まあ、カカシ先生の気持ちもミクロ単位で分からなくもないけど…」
「別にどうこうってわけじゃなくだな、普通に一日ブラついて〜メシ食って〜っていう何気ない一日をカカシ先生と姉ちゃんに過ごしてもらうんだよ」
「言っとくが、兄さんにバレたら殺されるぞ…」
「う…っ。…だ、大丈夫だってばよ!」
「なんで言い切れるのよ」
「だって、師匠と一緒に居るくらい当たり前だってばよ?」
「「はあ〜…」」
「な、なんだよ…」
ナルトの鈍感さに、サスケとサクラは盛大な溜息をもらす。そもそも本当にただの師弟関係なら、ナルトの言うように問題はないのだ。相手がネジくらいの堅物なら安心だろう。だが、カカシの話を聞く限りでは「イタチではなく自分を」とか、「愛情注いだのに」とか、怪しげな発言が満載であわよくば…なんて考えているかもしれないのだ。
そこをナルトはイマイチ理解しておらず、自分と自来也のように思っているのだろう。
「なあ!頼むよっ二人とも!」
「頼むよって言われても…」
「100歩譲ってだ。…イタチに話を通してからにしろ」
「え゛〜…まじ?」
「当たり前だっ。殺されてぇのか?」
「……う゛〜〜〜っ。仕方ねぇってばよ……」
とてつもなく渋い顔をしながら納得したナルトに、サスケは内心上手くいくわけがないと思っていた。サクラもそれは同様で、だが少しだけ面白い物が見れそうだと内心思う。
*
善は急げ。今日は警務部隊の手伝いをしているというイタチのもとへやってきた三人。
「オレが行く!」と意気込むナルトを見送りサスケとサクラは少し離れた物陰から見守ることに。順序よく話をしなければならないのに先手きってイタチと向き合ったナルトは慣れない相手との会話にとんでもない説明を放った。
「そ、その…リクハ姉ちゃんと、カカシ先生の関係を再確認させてぇんだ」
「…は?」
「あのバカッ!!!」
「なんで前置きなく余計な部分だけぶち込んでるのよっ」
ナルトが自分を訪ねてくるなんて余程のことがあったのかと思っていたが、その前に話の内容が意味不明過ぎて理解に苦しむ。視線を泳がせながらそれ以上なにも言おうとしないナルトに、少し離れた場所からその様子を伺っていたサスケが飛び出して行きサクラもその後を追う。
「ナルト、お前は一体何が言いた…」
「兄さんっ…」
「…サスケ」
「おいナルト!お前なんて説明の仕方してんだっ」
「事実をそのまま言った!」
「そんなんで伝わるかこのバカッ!」
「おい…。何なんだ一体。ちゃんと説明しろ」
「あ、いや…実はな…」
表情を歪めながら一通りの説明をするサスケ。ナルトの説明からは全く読み取れなかったその内容に、イタチは「なるほどな」と苦笑いを浮かべた。確実に機嫌を損ねさせると思っていたから、その穏やかな反応には正直驚いた。
「で…許可してくれっか?」
「許可?オレの?」
「お、おう…姉ちゃんはイタチの彼女だろ?だから…」
「それはオレの決めることじゃないだろ」
「おい…いいのか兄さん…?」
「いいもなにも、リクハが決めればいいだけのことだろう?」
何を心配しているか分からないが、イタチは「好きにしろ」と言い立ち去ろうとする。サスケはその反応が信じられなくて駆け寄り、本当にいいのかと再び尋ねるとイタチはサスケの肩に手を置いて諭す様な口調でこう言った。
「いいんだ。リクハとカカシさんは」
「は…?何言って…」
「そんなに心配なら、お前が見張ればいいだろう?」
「いや、そう言うことじゃなくてっ…」
「まあ、行きすぎた行動があれば止めてくれ」
「あ、おい!兄さんっ」
サラッとそう言い「じゃあな」と仕事に戻って行くイタチの背中を見つめ、何か腑に落ちない気持ちが残るサスケ。ナルトは「よっしゃ!」と喜んでいるが、サスケの表情はそれとは対照的だった。
うちはの警務部隊の演習場に珍しい訪問者が来たものだと、戻ってきたイタチに声をかけたのはシスイ。苦笑いを浮かべ、ため息混じりに自分の隣へ腰を下したイタチに「どうした?」と問いかけた。
「カカシさんが…」
「プッ、またか」
「オレが一番介入できない問題だ」
「本当は嫌なのか?」
笑いが含まれたような口調でそう聞いてくるシスイ。昔からの付き合いなだけあって、彼もカカシとのいろいろは知っている。それをイタチが仕方のないことと言って今まで何も言ってこなかった事も。
大した問題ではないと言えばないのだが、リクハを想う気持ちは誰よりも強いイタチの事だから、納得できない気持を押し殺しているのだろうとは思っていた。
イタチはシスイの問いかけにハッキリ、「嫌に決まってるだろう」と不機嫌な表情を浮かべ、シスイの笑いを誘った。
「素直じゃないな、お前もっ」
「悪かったな」
「あはははっ…。ま、それでも。リクハがカカシさんになびかないって自信はあるんだろ?」
笑いで溢れた涙を拭いながらそういったシスイ。
それは質問をしたシスイも、もちろんイタチ自身も分かり切っていることで答える必要はなかったのかもしれないが、「当たり前だ」と何の迷いもなくそう言うと、シスイの人懐っこい笑顔が返ってきた。
そんなこと分かり切ってる
(お前らのその絆が、オレは好きだな)
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