「お前今完全に"かわいい"と思っただろう」
「なっ…。そんなわけないだろっ、子供のお守りなんてっ…」
『ねえー、カカシ今のもーいっかい…』
「ダメだ。ケガでもしたらどうすんだよ」
『だいじょうぶだよー、ね。あといっかいだけー!』
「ダメったらダメだ。もうブランコはおしまい」
『ええーーーー!!』
「だだをこねるな」
『やだーーー!!』
「あ、コラッ!髪を引っ張るな!!!」


まだ、ミナトが生きていた頃。
突然リクハの子守りを任務だと押しつけられ、子供の相手のしかたなんて分からないままなんとかやってのけた時のことを思い出す。どこで何をすればいいのかも、何をして遊んであげたら喜ぶのかも、全く分からなかったあの頃。小さな公園でブランコに乗せ遊んでみたら、思いの外気に入ってくれたリクハがかわいくて。
自分自身も幼いながらに「ああ、この子は自分が守るべき対象だ」と感じることができたあの時の感情が懐かしい。

『カカシさん』
「んー?」
『はい』
「なにコレ」

公園のベンチに座り、ボーと空を眺めていたら名前を呼ばれ頭に何か乗せられたのが分かる。
微かに花の匂いがしたから、たぶんそれの何か。

『毎日お仕事お疲れさまです賞の、花のかんむりです』
「うわ、なにそれ…」
「昔は摘む花摘む花へし折っていたのに、器用になったなリクハ」
『パックンの指導が効いたみたい』
「やること全部かわいいのはリクハだからなの?」

目の前にはフワッと微笑むリクハがいて、「どうしてこんなピュアなことが出来ちゃうわけ?」と乗せられた花のかんむりを手に取れば想像以上の仕上がりだった。
そんな光景を目にしていた三人は…。

「あれはズルイッ。かわいいリクハさん!」
「なんかこうして見てると、恋人みたいだってばよ」
「くそっ。カカシの野郎あとで絶ってぇシめてやるっ」

約一名、怒りのパラメーターがどうにも上昇傾向のよう。なぜこんなことを許したのかとイタチに対しての怒りもあるが、あの「リクハとカカシさんはいいんだ」という発言が妙に引っ掛かっていた。

「ねえ、リクハ」
『なんですか?』
「お前はずーっと、そのままでいてくれ」
『…カカシさん相当疲れてるんですね、大丈夫ですか?』
「そんな病んでるね、みたいな目で見るなよ」
「違うのか?」
「パックンひどいな…」

貰ったかんむりをまさか自分が頭に乗せたまま歩くわけにもいかず、リクハの頭に乗せてみる。すると物凄い破壊力になってしまったので、パックンの首に通す。いいもの見れたと内心喜びながら、二人と一匹はまた移動する。

「リクハさ、なんで今日は誘ってくれたの?」
『それはあの、カカシさん最近任務ばっかりで息抜き必要かな…って』
「…心配した?」
『…ま、まあ。ちょっとだけ』
「ハハッ。もう暗部じゃないからダイジョーブだよ」
『……』

「でも、ありがとな」とリクハの頭に乗せられた大きな手に安堵した。まだ、カカシが暗部に所属していた頃はこんなによく笑うような人じゃなかったのをリクハは知っている。穏やかで冷静だったが、いつも何か冷たくて暗いものを抱えていた。
それはイタチも同じで、あの頃の二人を思い出すと今でも少しばかり胸が痛む。きっとカカシもそんなリクハの気持ちを分かっていて、「暗部じゃないから」と言ったのだろう。

「いつだったか、オレとイタチに暗部辞めろって泣きながら言ってきたよね」
『あーもうそれ、最悪の記憶ですっ』
「ハハハ。かわいかったなー」
『汚点です汚点』
「あれさ、後でイタチにどう思ったか聞いたのよオレ」
『やめてくださいよ〜、なんですかそれっ』

分かりやすく肩を落とし『最悪だ〜』と連呼するリクハ。いくら大事な幼馴染と師だと言っても、自分の感情むき出しで暗部と言う精鋭に対してあんなことを言うなんて失礼極まりなかったと恥ずかしさと後悔の念にかられる。
とは言ってもそれで何かが変わったわけでも、二人が暗部を辞めたワケでもないからただの面白い思い出として残っているだけなのだが。

「イタチの奴、実は内心すごい嬉しかったって言ってたよ」
『嬉しい?あんなに騒いでたのに?』
「自分のこと心配してくれる人がいるってのは、嬉しいもんだよ」
『……』
「それが好きな奴なら、余計にね」

笑顔でそう言ったカカシに、リクハは少し恥ずかしそうに視線を反らす。そんな反応も可愛くて、カカシはリクハの頭を撫でる。

「会話が聞こえないっ。なんでああなったの!?」
「あれはセクハラにはなんねーのか?」
「なるに決まってんだろっ…ふざけんなアイツッ」
「でも仲良いよな、あの二人」
「昔いろいろあったって言うのが、ますます怪しいわ…」
「付き合ってた…とかか!?」
「いやそれは絶対にない。イタチだけだ」
「分かんねぇってばよ〜、姉ちゃんモテるし」

ナルトの言葉にも一理あるが、そんなことは絶対に認めたくはないサスケ。二人が甘味処に入って行くのを確認すると、三人はその店の屋根に飛び乗り小さな穴をあけ様子を伺う。

「お前相変わらず好きだね、それ」
『ええ。確かカカシさんが居た時に…初めて食べたのかな?』
「そうだよ。オレ覚えてるし」

『メロン…?』
「いや、これ抹茶。お茶だよ」
『え〜、マズそうだよ〜』
「お茶って言ってもこれは苦くないから。甘いから」
『…じゃあ、ちょっとだけちょーだい?』
「別にいいけど」


お腹が空いたと連れて行った甘味処で、リクハにはイチゴのかき氷を頼んだみた。自分が頼んだ抹茶のアイスをメロンだと勘違いしていたが、食べさせてみるとこれが大当たりで。これがきっかけでリクハの好物が「抹茶」になり、今もまさにその味のアイスクリームを食べている。

目の前で『おいしいです』と笑顔を向けられては、もうずっと眺めていたくなるじゃないかと内心呟いた。イタチはいつもこんなに良い思いをしてるのかと思うと、本気で羨ましい限りだ。

「あ〜んってやってよ」
『嫌ですよ。私に何の利点があるんですか』
「えー、昔は食べさせてくれって自分から言ってきたのに」
『何歳で記憶止めてるんですかカカシさん。私もう成人しましたよ』
「これが成長か…寂しいなぁ」

しょんぼりと肩を落とすカカシを前に、足元で蹲るパックンに視線を移せば「一回だけやってやれ」と目で言われる。グズグズと落ち込んでいるカカシに再び視線を移せば、なんだか可哀相になってきて仕方ないなとカカシのスプーンを持ち『これが最後ですよ』と声をかける。

「リクハのスプーンでいいのに」
『まじで止めてください。八つ裂きにしますよ?』
「あー、イタチが羨ましいよオレ」

そう言って愛弟子の好物が口に運ばれると、もの凄く甘い味と幸せが広がったような気がした。


ねえ、今だけのお願い
(甘い物苦手だけど、お前がくれるこの味は本当にだいすき)



*前 次#


○Top