『………』
「その無言は肯定と取るぞ」

演習場からの帰り道。
不貞腐れた表情で隣を歩くリクハに、お前の機嫌はお構いなしといった感じで声をかけるオビト。彼の人を見知らない気さくさは、シスイのそれとはまるで違う。言葉にしてもとても直接的で、少々配慮に欠けている。人の心に平然な顔をして入り込んではいとも簡単に秘めた想いをしまい込んでいる開かずの扉を開いてしまうのだ。人によってはそんなオビトの真っ直ぐな性格を不快に思う者もいる。が、今回はそれがよかった。

「お前、見かけによらず超が付くほど頑固だな」
『………』
「なんだよ、怒ってんのか?」
『………ふんっ』
「ああ?なんだそりゃ、可愛くねぇぞ」

ジト目で睨むが、同じように睨み返された。幼馴染として生まれた時から今日(こんにち)まで常に互いの人生に関わり、成長を共にして来た仲なのだからリクハがイタチを好いていたとしても何らおかしくはない。むしろお似合いだとオビトは思っている。自分とは違い、様々な才能や容姿にすら恵まれた二人。同じような境遇を歩んできた二人だから、互い以上に己を任せられる相手など居ないんじゃないかと。

「お前さ、いつから好きなんだよ、イタチのこと」
『だから好きとかじゃないですってば、しつこいなあ!』
「もうバレてんだよバカめ。さっき一瞬タコみたいに顔赤くして俯いてたじゃねーか」
『なっ……!!』
「ほら、まただ!ププーッ、嘘が下手だなあお前」

頬を染めて否定するリクハを見て、煽るように口元に手を当ててふざけた笑みを浮かべるオビト。一瞬苛立ちと殺意を覚えた。

『すみません一回螺旋丸喰らってもらえます?顔面に』
「ふざけんな!嫌だわ普通に!!」

互いに鬼の形相を浮かべて歩く二人。兄のように穏やかで優しいシスイとならまずこんな会話にはならない。こんな土足で人の心の中に入り込んでくるような真似はしないし、煽ってもこない。あんな変な顔は絶対にしない。とリクハは内心悪態をついた。
だが不思議と、オビトと過ごす時間は気持ちがとても開放されていい意味で楽なのだ。現に今の今まで両親の一件が頭から離れていた。もとより自分に対しても遠慮なく接してくれるところが爽快で気持ちがいいと感じてはいる。

「なんでそんなに認めたがらないんだよ」
『………』
「悪いことじゃないだろ。なんでだよ」
『………』
「おい、無視すんな」
『………』
「あと少しで火影になるオレ様の言葉を無視すんな」
『イタチとシスイが居るからオビトさんは無理です』
「いやオレがなるね。アイツらに他里との外交は無理だ」

何度無視しても気にもせず話しかけてくる精神力の強さには恐れいる。リクハは話が脱線しても脱線してもイタチのことを必ず話題に出してくるオビトのしつこさに根負けして、深いため息を吐きながら立ち止まった。

『私、今はそうゆうことを考えてる余裕がないんです』
「なんでだよ」
『それはっ、いろいろあって…』

気まずそうに視線を逸らしたリクハをじぃと見つめるオビト。追求しても話してはくれないだろうとすぐに理解した。

「ふーーん。ま、お前は恋愛経験ないしな」
『(ブチッ…)』
「どうせアレだろ?今まで修行しかしてこなかったから急に幼馴染を好きな自分が分からな〜い。とか言い始めるんだろ」

体をくねくねと動かしながらリクハの真似をして見せるオビトに、再び苛立ちと殺意が芽生えた。

『もう絶っっっ対!リンさんとの仲取り持たない!』
「!!!!!」
『応援もしませんからね!勝手にストーカーとして破滅してください。大体しつこいんですよさっきから、何なんですか?気持ち悪いです』

右手の親指を下に向けて軽蔑の眼差しを向けてくるリクハの姿が、一瞬カカシに見えて「師弟め!」と苛立ちをあらわにした。

「お前が取り持たなきゃオレは報われないだろうが!」
『知りませんよそんなこと!自分でどうにかして下さいっ』
「いいや!お前の助けが必要だ!間違いなく!」
『だ、だから知りませんってば!』
「いいか?リクハ。オレはな?お前が実はめちゃくちゃ仲間想いでオレのことを放って置けないの知ってるんだぜ?」
『(うざっ……)』

リクハの肩に手を置いて、空いている手の親指をグッと立てるオビト。心なしか目がキラキラと輝いている。

「お前は気立もいいし、リンよりは劣るが顔も良いし、何よりリンがお前を気に入ってんだ。だからさ、そんなこと言わずにオレを応援しろって。後悔させねぇから。つーか正直なとこ、お前の助けがないと危ういよオレ」
『うちはのプライドないんですか?』

情けないことを爽やかに言ってのけるオビトに冷ややかな目を向けると一変、今度は今にも泣き出しそうな表情を浮かべてリクハの両肩をがしっと掴み前後に勢いよく揺らし始めた。視界が歪み、オビトの悲痛な叫びが聞こえてくる。

「お前前に言ったよな!カカシよりオレを選んでくれてるって!あいつよりオレを応援してくれてるって!」
『(ガクガクッ)』
「その言葉は嘘だったのかよーっ!オレはお前の支えがあるから毎日毎日めげずに頑張れるんだぞ!バカカシが相手でも諦めずにいれるんだぞ!!」
『オ、オオビトさん落ち着っ…』
「オレを選べよ!あいつじゃなくてさあ!」
『あわわわわっ…』
「言っとくけどオレ、お前の人間性めちゃくちゃ好きだから、な!」

バシッ!と勢いよく振りかざされた両手が肩に落ちてきて地味に痛い。うるさい叫びがやっと止んでくれたかと安堵したのも束の間、道のど真ん中でギャーギャー騒いでいたから気づかなかった。

「……え、嘘…え…」
「………」
『「??」』

聞き馴染みのある…あり過ぎる声が聞こえてオビトとリクハが顔を向ける。するとそには…。

「ふ、二人って…え…そうゆう関係…だったの?」
「………」

すこぶる機嫌の悪いイタチと、驚愕しているリンがいた。

『「(ひぇええぇえぇえええっ!!!!)」』

リクハとオビトは白目を剥き、心の中で悲鳴を上げた。


Y.3
(イタチが同胞に殺意を覚えた日)


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