団子屋の店主に見送られ店を後にする。
傘が雨に打たれる音を聞きながら、リクハは一人自宅へと続く道を歩いていた。
『…ふぅ。(銀鏡村、うちはムスビ…か)』
一度に多くを聞き過ぎたせいか、頭の中が上手く整理できない。まず自分は何をするべきで、どの情報を頼りに行動すべきなのかを熟考していく。だがまずは、イタチが護衛に着く前に、もう少しだけ暗部の機密ファイルに目を通しておきたい。全てにおいて優れた才を持つ幼馴染が近くにいては、潜入どころではないからだ。
昨日も、団子屋から出てくるやいなや泣いている自分を見て確実に様子がおかしいと思わせたことだろう。今のところ、優しいイタチは深く追求せずいてくれているが、こんな状態を続けていれば確実に全てを話せと言われそうだ。
『(………)』
思考の糸が複雑に絡み合う中で、不意に立ち止まり、傘を待たない手を右手に重ねる。平凡な上忍だと思っていた父親が暗部の根だったという事実にも驚愕したが、彼がうちはの人間だったことにはそれ以上の衝撃を受けた。なぜ隠していたのかも、気づくことができなかったのかも、全てが謎に包まれている。写輪眼を有しているなんて話し、一度だって聞いたことがない。母もそれを教えてはくれなかったし、父は名のある一族の出身ではないとずっと思っていた。
忍術においてもそうだ。火遁よりも風遁の技に長けていたし、自分もそれを継いでいる。まあそこは風遁使いだった母親の遺伝という可能性もなきにしろあらずだが…。しかし何より、一番気がかりなことは…。
『私にも…開眼の可能性が…?』
ぽつりと呟かれた言葉は雨音に掻き消された。
写輪眼を開眼するきっかけを教えてくれたのは、神手を持つ母親だった。イタチを通して母の教えが真実であると証明された時は、酷く悲しい力だと思ったものだ。リクハは扱える忍術故に、これまで多くの人間の最後を見てきているが、開眼の兆候は一切無かった。下忍の頃、同じ班にいた仲間が死んだ時ですら、イタチが教えてくれた様なチャクラの動きは感じられなかった。自分がさらに特別だと思う者の死であれば…?そんな風に考えた瞬間、脳裏を過るのはイタチとシスイの存在で、そんなことがあってたまるかと軽く頭を振り思考を払拭させると、背後から人の気配が近づいてくるのが分かった。
「…あのっ」
『……?』
かけられた声色はリクハにとって聞き馴染みのないもので、ゆっくりと振り返り視界を遮っていた傘を少しばかり後ろに倒す。するとそこに居たのは同期であり、幼馴染と同じうちは一族出身の…うちはイズミその人だった。
「仙波…リクハちゃん、だよね…」
『…そう、だけど…』
気まずそうに自分を見つめ、恐る恐ると言った感じのイズミが何故今自分に声をかけて来たのか分からなくて、正直いい気はしなかった。だってこの少女は…。
「少し話し、いいかな……??」
『………』
イタチと幼馴染の自分のことを、快くは思っていないだろうから。
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