『…ずっと聞いてた?』
「それは謝る。立ち聞きする気はなかったんだが…」

あの子に誘われたお前が心配で…。
と、隣を歩くシスイはバツが悪そうにそう言った。

「困っていたから声をかけたが、余計な世話だったな」
『ううん。正直言うと、凄く助かった…』
「まあ…こうゆう問題は難しい」
『どんな風に言えばいいのか分からなくて…』
「お前にしては冷静だったと思うが?」
『…うぅん…。私ちょっと、言い過ぎたかな?』

上手いことあの場から連れ出してくれたシスイには感謝している。彼はいつだって、最高のタイミングに現れ救い出してくれるのだ。シスイはリクハの問いに思考を数秒巡らせたあと、「お前らしい言葉が重要なんだ」と言った。

「誤魔化しや繕った言葉じゃ、あの子は納得しないだろ」
『…そう思う』
「オレがもしお前の立場であっても、同じことを思う」

そう言って歩みを止めたシスイの数歩先で、リクハが立ち止まり振り返る。

「お前が言ってた二人って、オレとイタチのことだろ?」
『なんか、暑苦しいこと言った…?』

全て聞かれていたことを思い出し、トホホ…と苦い表情を浮かべるリクハ。イズミもきっと、そんな感想を抱いたことだろう。

「いや?オレは凄く嬉しかった」
『…え?』
「オレはお前たち二人の為なら命を懸ける覚悟がある」
『シスイ…』
「それはイタチも同様にな」

命を懸けて守りたい。今更言葉にしなくとも、いつも背中を預けあってる。三人がそれぞれに互いのことを思っているからこそ、本当に特別な、大切な存在なのだ。

「ありがとう、リクハ」



翌日ー。

「避けられている様な気がする…」
「自分から他人と関わろうとしない奴が言うセリフか?」
「他人じゃない。…リクハにだ」
「…は?」

少し投げやりな動作でイタチの手から放たれたクナイが、数メートル先に設置された的のど真ん中に突き刺さる。いつも通りの冷静さを保ってはいるが、シスイにしか分からない微妙な苛立ちを彼からは感じた。
リクハももっと上手く立ち回ればいいものを、昨日の今日でどう接して良いか分からなかったんだろう。まあ、彼女のことを誰よりも理解しているイタチの前ではどんなに取り繕ったところで無意味な気もするが…。

「…なあイタチ」
「?」
「昨日、たまたま…任務終わりにリクハとイズミが一緒にいるところを見かけた」
「………」

話の内容までは言うまいと、それだけに留めたシスイがイタチに視線を向ける。察しがよく、頭の回転の早い彼はすでに何かを悟り、小さな溜息を吐いていた。

「それでオレを避けてるのか…」
「まあ多分、そんなとこだろうな」
「話を聞いていたのか?」
「………」
「……そうか。まあ、言わなくていい。あまり聞きたくない」
「助かる」

シスイの苦虫を噛み潰した様な表情から、嫌でも話の内容に見当がついた。イズミの心の揺れ動きに関しては気づいていたし、一緒にいるとそれが伝わって来てしまうから落ち着かない。そもそも彼女の気持ちには答えられない。
自分たちは特別な関係でも何でもなくて、ただの良き友だと思っていたのだが…。まさかイズミが直接リクハに何か行動を起こすとは予想外だった。

「リクハに迷惑をかけたな…」
「そんな風には思ってない。変に気を遣っているだけだ」
「オレはイズミの恋人でも何でもない」

そう言ってもう一度放たれたクナイが、的に刺さっているクナイの隣に突き刺さる。淡々とした口調でそう言ったイタチに「そうだな」と溜息混じりに賛同した。イズミがイタチを想っているからと言って、リクハが彼女に気を遣う必要はないのだ。ただでさえ仲の良い幼馴染と距離を置くのは、本望ではないだろうに。

「リクハと話をして来る」
「得策か?それにあいつは今日、カカシさんとの修行だ」
「もう終わっている頃だろう」

最後のクナイをほぼ的を見ずに放ったイタチ。当然のようにど真ん中へと突き刺さった様を見て、シスイは相変わらず見事なクナイ捌きだと内心呟いた。そして、自分に背を向け立ち去っていく親友に声をかける。

「ほどほどにしてやれよ?」

いつもは自分の方がリクハに厳しいが、今はあまり追求したり、余計なことは言うなよと意味を込めて念押しした。すると返事の代わりに片手を上げたイタチに対し、小さな笑みが溢れた。


Y.7→8


*前 次#


○Top