カカシの言葉がリクハを驚愕させ、思考を停止させた。
『や、やめて下さいよ…そんな冗談。からかわないで下さい』
「冗談?オレが今、お前をからかってるように見える?」
『………』
「ふざけてこんなこと言うわけないだろ」
『…やめて下さい…。離してっ…』
彼の言葉通り、伝えられた気持ちに嘘偽りなどは皆無だった。ただただ純粋に真っ直ぐな想いがそこにはあって、分かっているからこそリクハの心が拒絶した。カカシの視線に耐えきれなくなり力を込めて頬に添えられていた手を振り払う。すかさず立ち上がり距離を置くと、受け取った小さなチョコレートの包みが地に落ちた。
覇気の無い瞳が若干細められ、カカシの表情に悲しみの色が浮かんだ。
『今日のカカシさん、変ですよ。どうしたんですか…』
「…変、ねぇ…。またそうやって誤魔化すワケか」
『誤魔化す?…何も誤魔化してません』
やれやれと呆れながらに立ち上がったカカシが、視線を伏せ後ろ髪を掻く。ここまでした彼の気持ちが理解できないほど、リクハは鈍感では無い。分かっているのに関係性が崩れることを恐れ気づかないフリをしているのだ。カカシの言葉は的を得ているが、彼女がそうなるのも無理はない。
何故ならば、自分の想いはイタチにあり、オビトの背中を押し続けてはいるが、尊敬するリンの想いがカカシにあると最近になって気づいたから。だから、今のは嘘だと笑って欲しい、からかっただけだと言って欲しいのだ。
「ならもっと直接的に言えばその態度、改めてくれる?」
『…そうじゃなくて…』
すれ違う二人の想い。
再び向けられたカカシの瞳と視線が重なると、リクハが待ったをかける前に彼の口から明確な気持ちが告げられた。
「オレはお前が好きだ、リクハ」
『…!』
心臓が、とくんとくんっと速度を増す。
「凄く大切に思ってる」
カカシの足が一歩を踏み出し、リクハに近づく。
聞きたくなかった。
足速にこの場から立ち去ればよかったと、後悔する。
「ずっと自分の気持ちを誤魔化して来たが、悪い」
『…………』
「やっぱりお前しか、見れなかった」
『……っ…』
愛おしげに目の前にいるリクハを見つめるカカシ。
そんな目をしないでくれ、やめてくれと心で訴えるも意味を成さない。伝えられた気持ちに言葉が出なくて身を引こうとしたその刹那ーっ。
『…!?!?』
「リクハ…」
腕を掴まれ抱き寄せられた。
あまりにも突然のことで反応が遅れる。
驚愕しながら胸板を押し返そうとすると、「すぐに離すから聞け」と宥められ力を緩めた。そして囁かれた言葉は、リクハにしか聞こえないほど小さい。
「お前がイタチを好きだとしても、オレは諦めるつもりないよ」
『…っ!?』
「そんな半端な気持ちで、お前を好きになったんじゃない」
『………』
「嫌なのは分かるけど。真剣だから、ちゃんと受け止めて」
『………』
やはり彼はいつも、一枚も二枚も上手なのだ。
リクハの気持ちを全て見透かした上で、それでもなお彼女を好きだと気持ちを伝えた。臆病なリクハが気づかないふりをして逃げてしまう前に、一度気持ちを受け止めさせ、考えさせ、しっかりと向き合わせる。師である役目も果たしながら。
ゆっくりと体を離し、穏やかに微笑む。
困惑している弟子を前に可愛いななんて呑気な感想を心の中で呟くと、カカシはいつもの調子で口を開いた。
「惚れさせちゃったリクハが悪いよ」
『…っ!?』
「あーやだやだ。真剣に告白なんて柄じゃないのに」
『なっ…』
さっきまでの貴方は何だったんだ!とリクハの表情が大きく歪む。カカシはズボンのポケットに左手を入れて体を横に向けると、立ち去る前にリクハの頭を撫で笑顔で口を開いた。
「柄じゃないことやっちゃうくらい、お前が大好きで仕方ないよ」
DAY.8/2
(イタチは目を伏せて、
湧き上がる複雑な思いを静かに飲み込んだ)
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