起こってしまった問題には、必ず原因と言うものがある。まずそれを知ることこそが解決への第一歩になり、冷静に思考を働かせるきっかけにもなる。今までずっとそうやって、物事を冷静に分析し解決に導いてきたが今回はどうだ。
目の前の状況に、まるで思考がついてこない。考えるという機能は、どうやら一時停止を起こしてしまい代わりに心臓がうるさいくらいに脈打っている。なにがどうしてこうなったのか、誰でもいいから教えてほしいと強く願った。
事の発端は今しがた…30秒前に起こったばかり。

『イタチ、おはよう』
「リクハ…!」

今日は朝から任務があり、いつもと変わらず家を出た。玄関の扉を開け驚いたのは、幼馴染のリクハの姿がそこにあったこと。今日の任務は一緒ではないし、特に何の約束もしていない。不思議に思ったイタチだったが何か用があるんだろうと思いなおし、「どうした?」と歩み寄る。ここまでは、何の変哲もない…ただの日常だったのだ。
だが次の瞬間には…それが非日常へと切り替わることになった。

―ギュッ

「……っ」
『イタチ…』

そんな可愛らしい効果音が、どこからともなく聞こえてきそうな行動に出たリクハ。歩み寄って来たイタチに手を伸ばしそのまま腰に腕を回す。何が起きたのかすぐには理解できず、フリーズ。ハッと我に返った時には確かな温もりがそこにあって、同時に冷汗が頬を伝った。

「リクハ…?」

恐る恐る、声をかける。

『ん?』
「何か…あったのか?」

至って冷静に、慎重に。

『なにもないよ?』
「そうか…。オレには、何かあった様に感じるんだが…」
『う〜ん…まあ、強いて言うなら…』
「…」
『…早くイタチに会いたかったの』
「………」

ああ、これは何かあった。
何かあったどころの問題じゃない。一大事だ。
なんとなく、今リクハがどういう表情をしているかは想像できたが視線を下して後悔した。子犬のように潤んだ瞳とばっちり目が合い結構なダメージを受けてしまったからだ。

「リクハ、すまない。説明してくれ…」
『説明?なんの?』
「なんのって…。お前がこうなっている訳を…」
『こうなってる?…それって私がイタチを好きだからってことで通じる?』
「……リクハ」
『ん?』
「今…なんて言ったんだ…」

聞き間違いでも、幻聴でもなかったはずだ。

『だから、私がイタチのことを好きだから、今こうしてるのって…』
「………」
『は、恥ずかしいこと言わせないでよっ…』
「あ、いや…それはすまない…」

よほど恥ずかしかったのか、自分の胸元に顔を埋めてくるリクハ。何が起こっているのか全く理解できず、気持ちばかりが焦り始めたその時だった。

「ようイタチ。少し遅くなって悪かったな…って…え…」
「……シスイ…」
『…?』
「何してるんだ、お前ら…」

救世主が現れるとは、まさにこのことかもしれない。


君が連れてきた非日常
(とんでもない3日間のはじまり)


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