今日の任務がシスイとのツーマンセルで本当に良かった。

「とりあえず、離れろリクハ」

数秒ほど二人の光景を見て固まったシスイだったが、イタチの助けを懇願する視線に気づきリクハを引き離そうとしてみる…が。

『いや』
「「………」」
『門までイタチを見送るの』

シスイの手を避ける様にして今度はイタチの左腕にしがみつくリクハ。その行動にまたも言葉を失う二人は、顔を見合わせ苦い表情を浮かべた。

「変なものでも食べたのかリクハ…」
『ううん。変なのは二人だよ、どうしたの?』
「いや、なんて言うか…なあ。イタチ」
「ああ…いつものリクハじゃないと言うか…」
『何言ってるの?いつもの私だよ?』
「…薬でも盛られたんじゃないのか…」
『やだなぁ、シスイ。私は医療忍者だよ?そんなことされたすぐに気付くよ』

確かにそうだと納得する。
薬でも毒でも、例え念入りに料理の中へ混入させたとしても嗅ぎ当ててしまうような一族の出なのだ、リクハは。ただおかしいのは一部分だけで、その他はいつも通りのリクハなことには間違いない。考えてはみるものの、やはり思い当たる節が見つからなかった。

「とりあえずだ…。イタチとオレは、これから任務がある」
「リクハ、悪いが行かないと」
『門まで一緒に行く』
「いや、それは…」
『ダメ…?少しでも一緒に居たいの…』
「……っ」

またも子犬のような眼差しで見つめてくるリクハの破壊力に、一瞬たじろぐイタチ。すぐに視線を外し困った様な表情を浮かべると、シスイが「これはキツイな…」と同情の眼差しを向けた。わざとやっているワケではなさそうだから余計にタチが悪いのと、イタチがリクハに想いを寄せているタイミングというのが良くなかった。

普段から可愛いと思っているだろうに、それに拍車をかけるような仕草や態度をされたらいろんな意味でイタチが可哀相だ。シスイは何とかしなければと思うが、これはこれでイタチも嫌な気分ではないだろうと二人を見つめる。

『イタチ今日もかっこいいね!』
「…いや」
『私昨日イタチのこと考えながら寝たの、夢でも会えるかな〜って』
「そ、そうか…」
『イタチは私のこと考えてくれてた?』
「え、ああ。まあ…」
『ホントッ?…すっごく嬉しい、大好きっ』
「………」
「ダメだな…。オレも見るに堪えない」

やはりなんとかしないといけないようだ。



里の出入り口に向かう途中も、リクハはイタチから離れようとせず手を繋いで嬉しそうに歩いている。恋沙汰には超がつくほど鈍感なはずなのに、今の彼女は積極的すぎて逆に恐ろしいくらいだ。リクハがここまで女子になると、こんなにも可愛いのかと。

「じゃあな。行ってくるよリクハ」
『シスイ、気をつけてね』

いつもの穏やかな表情で見送ってくれるリクハに、シスイも笑顔で返す。なんだか普通だ、と思ったのも束の間イタチがやんわり手を離そうとするとリクハは勢いよくその胸に飛び込み先程と同じようにギュッと抱きついてきた。
さっきから困った表情ばかり浮かべているイタチを見て、シスイは「おいリクハ…」と止めに入る。これが恋人同士の関係ならどんなに良かったことか。

『10秒待ってシスイ…ッ』
「うっ…」

切なげな表情を向けられ言葉に詰まるシスイ。特別な感情があるわけではないが、それでもこのザマだ。

『早く帰ってきて?無理はしないでねっ…』
「……シスイ…」
「すまん、やりようがない…」
『イタチ聞いてる?』
「…あ、ああ。聞いてるよ」
『敵のくの一に会っても、目移りしないでね?』

極力顔を見ないようにと思っていたのに、問いかけ対して反射的に視線を向けてしまった。その瞬間、心臓がトクンッと高鳴るのが分かり体がまたフリーズする。だが今のリクハはイタチの心中なんてまるでお構いなし。
次々と自分の気持ちをぶつけて来るものだから、そのあまりの破壊力にイタチは片手でリクハの目を塞いだ。

『わっ…な、なに?』
「ダメだ…。オレには荷が重すぎる」
「オレがお前と同じ立場だったら瞬殺だったよ…」

それから別れを惜しむだけ惜しんで離れてくれたリクハ。任務から帰ってきたら、もとの状態に戻っていることを願わずにはいられなかった。


リケーン
(あー!やっと姉ちゃん見つけたってばよー!)
(早く事情説明しないとっ…)


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