「煉獄さん」
「なんだ、甘露寺!」
「ずっと気になってたんですが…聞いてもいいですか?」
「勿論だ。言ってみろ!」

時は流れて、幼かった煉獄杏寿郎が鬼殺隊に入り着実に柱への道のりを歩んでいた頃。彼には有望な弟子ができた。世の男を虜にしてしまうような可愛らしい見た目とは裏腹に、剣士向きな特異的な強い体に恵まれた彼女の名は甘露寺蜜璃。のちに鬼殺隊の柱を担う人物である。そんな甘露寺が煉獄との修行の休憩中、とある疑問を口にした。

「煉獄さん、そのお守をとっても大事にされてますよね」
「ああ、これか!」
「誰方からの贈り物ですか?」

視線を日輪刀の柄の部分にくくり付けられているお守りに向けながら、甘露寺が好奇に満ちた表情で問いかける。綺麗な橙色の生地で作られているそれを、彼は自分と知り合う前から大事にしている様なのだ。

「これは、俺の大切な人から貰った物だ」

そう言った煉獄の瞳が愛おしげに細められ、手に取ったお守りを見つめる。これは鬼殺隊に入隊するため、最終選別へと向かうその日に灯華が無事を祈り贈ってくれた物。あれから随分と月日が流れ年季の入った代物になってしまったけれど、あの日からずっと…肌身離さず持ち歩いているのだ。
そう。あれは確か、今日のように澄んだ青空が広がっていた日だった。



『ふぅ…っ。何だか私の方が緊張してきました』
「ハハハハッ!大丈夫だ!必ず朗報を届けるさ」
『はいっ…。あの、杏寿郎さん』
「ん?」
『これを…』


そう言って灯華が控えめに差し出した手作りのお守りを、嬉々とした表情で受け取る煉獄。

「おお!これは君が作ったのか?」
『は、はいっ。本当は同じように刀を持ち、杏寿郎さんのお背中をお守りできれば良かったのですが…。何の役にも立てないので、せめてそれをと思いまして…』

何の役にも立てないなんてとんでもない、彼女が居てくれるからこそ、母の教えに沿い炎柱という目標に向かい歩み続けることができるのだ。煉獄は手の平にあるお守りをきゅっと握りしめると、笑顔を浮かべて灯華の頭を数回撫でた。

「このお守りがあれば最終選別は通過したも同然だな!」
『そ、それは少し大袈裟な気もしますが…』
「ありがとう灯華!本当に嬉しい!」
『頑張って下さい杏寿郎さんっ。応援していますっ』

両拳を胸の前で握りしめ、キッと表情を強めた灯華に背中を押される。幼い頃した彼女との約束を果たすべく、必ずこの最終選別を通過すると心に強く誓い煉獄は「うむ!」と大きく頷いた。

「では行ってくる!あまり心配せず待っていてくれ」
『はいっ。お気をつけて』

灯華から手を離し背を向けた煉獄が、何かを思い出したかのように振り返る。その姿に疑問を抱き首を傾げて『どうかしましたか?』と声をかけると、次の瞬間心臓を射抜かれるような言葉をかけられた。

「忘れるところだった!もしも無事に選別を通過することができたら、俺の恋人になって欲しい!灯華」
『…………えっ…?』
「まあ俺は確実に通過するだろうから、次に会う時は恋人同士だな!」

ハ、ハ、ハー!と自信に満ちた笑顔を浮かべ、唖然としている灯華に背を向け最終選別へと挑んだ煉獄が、沢山の花束を抱えて朗報を伝えに来たのはそれから数日後のことであった。



「(えぇえぇっ。何それ、何その話!羨ましいわ!)」
「このお守りがいつも俺を守ってくれる。大切な物だ」
「今の話、とっても素敵です煉獄さん!!」
「ハハハハ!そうか!ありがとう!」
「煉獄さんにそんな素敵な恋人が居ただなんてっ」

何で今まで話してくれなかったんだと問いただすと、聞かれなかったからだ!と実に煉獄らしい回答が返ってきた。

「ふふっ。煉獄さんも意外と強引なんですねっ」
「ん?普通だろう。他の輩に取られては困るしな!」
「(!!!か、かっこいいわ!師範っっ!!!)」

その一言にドーン!っと面食らった甘露寺が、顔を真っ赤にして唖然とする。なんて男らしい殿方なんだ!と。そんな煉獄に愛されているまだ見ぬ灯華という女性を本当に羨ましいと感じた。一体どんな見た目で、どんな性格の持ち主なのかが気になり出し、甘露寺は意気揚々と煉獄に詰め寄った。

「煉獄さん!私も灯華さんにお会いしたいです!」
「ん?灯華に?何故だ」
「師範の大切な方でしたら、弟子である私もご挨拶しないと!」
「君はとても律儀な人だな!そうゆうことなら機会を設けよう!」
「本当ですかっ!?やったぁぁっ!楽しみですっ!」

両手を高々と上げて喜ぶ甘露寺に、煉獄も穏やかな笑顔を浮かべた。外に出られない分同性の、しかも年の近い友と呼べる存在が居ない灯華にとって、甘露寺は良き話し相手になるのではないかと。

「ありがとう甘露寺!灯華もきっと喜ぶだろう!」




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